2018-02-20

過酷な競争社会では「精神的に鈍感な人」が望まれている?


企業が終身雇用を維持できない時代になり、リストラが恒常化し、即戦力が求められて若年層の雇用も減り、非正規雇用を余儀なくされた人々が増えた。

大学は学生に奨学金という名の借金を負わせ、資格会社は資格を取らないと生きていけないと脅して金を巻き上げ、ブラック企業は夢をつかめと新入社員を洗脳して奴隷労働に追いやっている。

これは日本だけで起きている現象ではなく、全世界で同時進行している現象である。だから、先進国でも若年層の失業率は普通の失業率に比べても異常に高い数値であったりする。

グローバル経済は勝者が資本総取りをするシステムとなっている。こうした社会情勢は、このブログ『ダークネス』で鈴木傾城が何度も取り上げて来た事実である。

2010年代に入ると、状況はITによる合理化と効率化で、さらに過酷になっている。インターネットは社会や企業のあり方を変えていき、今やこの巨大なイノベーションに依存しない国はなくなったからだ。

その結果、どうなったのか。

誰もが弱肉強食の資本主義社会に揉まれ、激しい競争の中に生きなければならなくなった。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

過大なストレスによって心が壊れてしまう人々


年功序列も終身雇用も吹き飛び、リストラも当たり前になり、会社でも激しい競争にさらされるようになっている。

競争社会とは、実力主義社会でもある。競争社会が突き進んでいくと、仲の良い同僚や仲間を蹴落としても自分が生き残る能力が求められる。

うかうかしていればリストラされる。企業の中で生き残って自分のイスを確保するためには「他人を蹴落とすしかない」と誰もが考えるようになる。

世の中には競争を好む人もいるのだが、そうでない人も膨大に存在する。そのため、このような社会のあり方に馴染めない人々が次々と犠牲者になる。

犠牲になるというのはどういうことか。弱肉強食の資本主義で犠牲になるというのは、要するに貧困に落ちるということである。人々は自分のためにも働くが、家族のためにも働かなくてはならない。

競争社会に馴染めないのに競争させられ、しかもそこから降りることができない。この傾向は今後はさらに先鋭的になっていき、人々の精神を確実に蝕んで荒廃させていく。

人々は耐えているが、いつまでも耐えきれるわけではない。だから、限界に達した人から心を病むようになっている。

うつ病患者は、とっくに100万人を超えた。風邪や病気で身体が壊れるように、心や感情が壊れて起き上がれなくなるほど重度の病気になる人が日本だけでも100万人もいるのだ。

さらに、このストレス社会の中で押しつぶされるように「壊れかけ」の状態になっている「うつ病予備軍」はその10倍はいるのではないかと精神科の医師は述べる。

100万人の10倍と言えば1000万人である。この1000万人はいつでも予備軍から本格的な病気になる可能性がある。これは、危機的なことでもある。

誰もが自分が生き残るために「何」をするのか?


激甚化していく競争社会の中で発生するのは「いじめ」だ。

イノベーションが突き進んで雇用が不安定化すると、人々は迫り来るリストラから自分を守るために「代わりの誰か」を突き落とそうとするようになる。

自分を守るために犠牲者を誰にするのかを集団が無意識に選び、そして、最も弱い者をみんなで攻撃することになる。これは、動物が持つ本能と言っても過言ではない。

そのため、弱者は徹底的にいじめられる。誰もが自分が生き残るためにそうする。

(1)「集団の中で最も弱い人間」を選ぶ。
(2)弱者は無用であると集団の空気で決定する。
(3)攻撃を弱者に向け、自分に向かないようにする。

抑圧された集団では、こうした残酷な集団心理が必ず発生するのだが、実は攻撃される側だけでなく、攻撃する側もストレスになっていく。

自分が弱者になってしまえば、一転して自分が激しい攻撃にさらされることになるからである。自分の番にならないためには、常に自分よりも弱い人間を探し出して攻撃しておかなければならない。

この社会構造の残酷なところは、「もうそこから降りたい」と思っても降りられないことだ。

ドロップアウトしたくても、社会のシステムの中に弱肉強食の資本主義が組み込まれているので、死ぬまで誰かを攻撃し、戦い続けなければならないのである。

自分が犠牲にならないために死ぬまで「弱肉強食でのサバイバル」を余儀なくされる現代人は、間違いなく誰もが神経をすり減らし、精神的にボロボロになっていく。

そこで社会は、現代人を競争から逸脱させないために、「メンタル・タフネス」と「レジリエンス」という二点を人々に強制していくようになる。


「心の強靱さ」と「精神的回復力」を求める社会に


メンタル・タフネス=心の強靱さ。
レジリエンス=精神的回復力。

生まれつき神経がタフで、残酷な競争社会になって「いじめ」が横行する世界になっても、まったく動じない人もいる。逆に、こうした社会のあり方に心が傷つく人もいる。

弱肉強食化していく社会の中では、当然のことながら荒廃した中でも平然としている人の方が需要が高い。社会はこれからさらに残酷に、そして過激になっていくので、荒廃した社会に相応しい人が求められる。

だから、現代社会は人々に「心の強靱さ」と「精神的回復力」を求めるようになっているのだ。そして、それを強制していくようになる。

時代はもっと攻撃的になるのに、これくらいで精神的に潰れていたら企業は労働者を雇用できないし、国も医療費の面倒を見きれない。

そのため、現代社会はこれから「もっと強靱な心になって働け」「傷ついてもすぐに精神的回復して働け」と私たち全員に押し付けてくるようになる。

企業も国も、荒んだ競争社会で生き残れる「精神的に鈍感な人」を望んでいる。

そのような人間を作るために、「心の強靱さ」と「精神的回復力」という二点はこれから強調されるようになり、必須となり、それが国民の素養とされるようになる。

そして、それを身につけた人は、自分がいかに精神的に鈍感かを競うようになる。

もちろん、精神的な強さや逆境から回復する力は人間にとって大切なものである。しかし、それを強制し、タフでないと生きていけない苛烈な社会が正常かどうかは別の問題だ。

それは正常ではない。

しかし、「心の強靱さ」だとか「精神的回復力」だとか、そんなものを求めていない人に強制するような社会がもう到来しているのである。

精神的に強い人しか生き残れないような殺伐とした社会など、多くの人々はまったく欲していない。鈴木傾城自身も、それは望んでいない。

しかし、時代は明らかにその方向に暴走している。(written by 鈴木傾城)

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抑圧された集団では、こうした残酷な集団心理が必ず発生するのだが、攻撃される側だけでなく、攻撃する側もストレスになっていく。


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