2017-06-20

「格差は是正されない。あきらめろ」と言われる時代が来る


ドナルド・トランプは経済格差に苦しむアメリカの貧困層が支持して大統領の座に押しやった人物であり、「貧困層の希望の星」だった。

貧困層は今まで政治の世界から無視され続けてきたので、既存の政治家を信頼しておらず期待も持っていなかった。だから貧困層はこぞってドナルド・トランプに賭けた。

しかし、ドナルド・トランプ大統領は5ヶ月経っても何ら成果を出せないばかりか最初から政権運営で混乱している。あげくの果てに、今や弾劾される可能性まで出てきている。

ドナルド・トランプが失墜すると、もうアメリカの貧困層ができることは何もない。極端な経済格差は放置され、より深い断絶が生まれていく。

アメリカでは企業経営者が10億円から100億円規模の年収を得ているが、一般の労働者は240万円を稼ぐこともままならない。それどころか120万円にも満たないこともある。

この格差の中で、普通の労働者がコツコツ貯金すれば豊かになるという幻想はアメリカからは完全に消え去った。アメリカン・ドリームは死んだのだ。

富める者はますます富み、持たざる者は持っているものすらも奪われるような苛烈な社会となってしまった。それがさらに進んでいく。


トランプ大統領の政治生命が止まる方が早い


アメリカの多国籍企業は安い賃金の労働者がいる国に工場を移し、高い賃金の自国労働者を切り捨てている。トランプ大統領は、その動きをやめさせようとしている。

「アメリカで層の厚かった中産階級が没落したのは工場が出ていったからだ。だからアメリカの大企業は工場をアメリカに戻せ」とトランプ大統領は言った。

しかし、グローバル化した多国籍企業は熾烈な競争を勝ち抜くために「人間を雇うコスト」を激しく嫌うようになっており、素直にトランプ大統領の言うことを聞くとは限らない。

仮にトランプ大統領の言うことを聞いたとしても、IT化による技術革新、インターネットによる業務改善を推し進めて雇用を徹底して削減しているので、労働者の雇用が増えていくとも限らない。

つまり、どちらにしろ労働者の雇用環境は改善しない。そうすると、どうなるのか。仕事がなくなると、人は安い賃金でもそれに甘んじるしかなくなってしまう。

「そんな安い賃金では働けない」と突っぱねても、他にそんな安い賃金で働く人間たちが山ほどいるので、結局は自分が無職のまま困窮してしまう。

仕事がなくなってしまえば、どんなに安い賃金でもそれで我慢するしかないのだ。

それが繰り返されるうちに、賃金は生活していけるかいけないかのギリギリにまで抑えられるようになり、「働いても生活できない」というワーキングプアに陥る。

いったん、ワーキングプアに落ちると、低賃金のために貯金することすらもままならない。貯金どころか、病気や怪我や失業といった予期せぬ出来事が起こるたびに借金が増える。

ワーキングプアに落ちると、そこから這い上がるのは容易なことではない。

トランプ大統領は無理やりそれを是正しようとしているが、大勢は「トランプは失敗する」という見方をしている。グローバル化が止まるより、トランプ大統領の政治生命が止まる方が早いということだ。

この「株主資本主義」こそ、グローバル化の正体


トランプ大統領は、2017年5月9日にコミーFBI長官を解任した。

これはフリン前補佐官とロシアとの関係をFBIが捜査するのを阻止するためだったとして、ロシア疑惑隠しが激しい批判を浴びる結果となっている。

こうした混乱を収拾する能力はトランプ大統領にはない。その結果、トランプ大統領は次第にホワイトハウス内でも孤立するようになっており、政権は大きく揺らいでいる。

トランプ大統領が任期の4年を全うできるのかどうかはまったくの未知数なのだが、トランプが大統領の座から降りた後に何が来るのかは知っておかなければならない。

トランプ大統領はグローバル化を押しとどめて孤立主義に向かおうとしていた。それが選挙公約であり、そのためにトランプは政権に送り込まれた。

今後、トランプ大統領はその路線が現実的ではないと自ら気付いて修正するかもしれない。しかし、少なくとも当初はそれを進める予定で動いていたし、今のところはまだその路線を捨てるつもりではないようだ。

しかし、もうグローバル化はすっかり全世界に行き渡っており、今さらそれをトランプ大統領ひとりの考えで止まるようなものではなくなっている。

だからトランプ大統領の孤立主義路線はどこかで頓挫する。

いや、そもそも5ヶ月経ってもまだトランプは何もできていない。抵抗が多すぎて実務に入れないのである。

トランプの孤立主義の姿勢が問題を引き起こしていたのだから、トランプの次の大統領はトランプの路線を破棄する可能性の方が高い。

つまり、グローバル化の路線が戻ってくる。

「一生続く貧困の中でいかに生きるか考えておけ」


「貧困層の希望の星」は踏みにじられ、その次には貧困層がグローバル化に蹂躙されていく。

トランプ大統領以後のグローバル化は、ITの技術革新も相まってより激烈に進むことになるので、経済格差は是正されるどころか、さらにひどくなる。

「雇用を排除するイノベーション」が進むので、仕事は絶望的に見つからなくなり、見つかっても足元を見られて低賃金になっていく。(今、世界で起きているのは雇用を排除するイノベーションだ

政府も何もできない。増え続ける失業者に対処するために政府は財政赤字を膨らませることになるが、それも限度がある。ある時期で貧困層は政府にも見捨てられる。

そうなると、何も持たない貧困層がグローバル化を生きるのは、弱肉強食の社会で生きるのと同様になる。まさに社会はジャングルのように危険になっていくのである。

その弱肉強食の資本主義を押しとどめるものが何もないのだということがアメリカで証明されたのであれば、それは世界中に広がっていくのも容易に想像できる。

格差是正はもはや現実的ではなくなるので、政治家すらも格差是正を言わなくなる時代が来る。

富裕層と貧困層の存在する社会が長く続くと、次第に「格差はあって当たり前、格差は悪いものではない」と言い出す人が増えて、その考え方を強制され、それが今後の常識的な考え方になっていく。

「資本主義は何をどうしても格差が生まれるので、自分に与えられた格差の中でどのように生きるかが重要」と誰かがしたり顔で言い出すのを私たちは聞くことになるはずだ。

つまり、「格差は是正されない。あきらめろ」と言われる時代が来るということだ。

「もう格差の是正だとか貧困の解消だとか言うな。貧困層は這い上がれないのだから、一生続く貧困の中でいかに生きるか考えろ」と言われ、貧困層もそれを受け入れる。

トランプ大統領以後のグローバル化は、そういう地獄のような社会を生み出す可能性が高いことを私たちは覚悟しておかなければならない。

今のところ、これを止めるものは何もない。



ドナルド・トランプが失墜すると、もうアメリカの貧困層ができることは何もない。極端な経済格差は放置され、より深い断絶が生まれていく。


お願い

ダークネスの本文を他サイト(キュレーションメディア、まとめサイト、個人サイトすべて)へ転載する行為は、いかなる理由があっても固くお断りします。