2017-06-08

小国カタールはなぜ大国サウジアラビアに反撥心を持つのか


2017年6月5日、サウジアラビアとその近隣諸国は「カタールの首長がテロや過激思想を支持している」として、断交を発表している。アラブ首長国連邦はこのように表明している。

「いかなる手段であっても、カタールに同情的あるいはバイアスを示す者は禁固刑および罰金刑を科す」

サウジアラビアの断交も徹底的だ。

サウジアラビアは、カタール航空機を飛行禁止措置にしてカタール船の入港も禁止した。これは法人・個人関わらず、船舶の所有者がカタール人であれば問答無用の禁止だ。カタールの旗を掲げている船も入港禁止となる。

さらにサウジアラビア側から陸路でカタールに向かうトラックも多くが国境で足止めされて、カタールに食料物資などが入らなくなっている。

これを受けて、カタールのスーパーマーケットに人々が押し寄せて多くの人が必死で日用品を買いだめに走っている。この措置が長引けば、カタールは兵糧攻めで国家崩壊する。

サウジアラビア内にあるカタールのテレビ局アルジャジーラも「テロを増長している」として事務所の強制閉鎖に見舞われている。


小国なのになぜサウジアラビアを刺激するのか?




カタールが支援しているテロ組織というのが、エジプトを激震させている「ムスリム同胞団」とイスラエルに敵対している「ハマス」である。

超過激な殺人組織「ISIS(イスラム国)」に対してはさすがに支持は表明していないのだが、その態度は曖昧で敵対姿勢も一切行わないことから近隣諸国の不信感を買っていた。

さらにカタールはサウジアラビアと犬猿の仲であるイランとも通じているという疑心暗鬼を持たれていて、ますますサウジアラビアを苛立たせていた。

要するにカタールはサウジアラビアやその近隣諸国とは独自路線を行くがゆえに、同じスンニ派の中で緊張と対立を生み出していた国家だったのである。

中東のイスラム諸国は「イスラム」という宗教で一括りにされているのだが、実際には「スンニ派」と「シーア派」で激しく対立している。

どちらも「イスラムの正当性は自分たちにある」と信じているので相手に妥協する状況にない。

カタールはサウジアラビア、アラブ首長国連邦、バーレーンと共にスンニ派の国家なのだが、その国家が長らくの敵対者であるシーア派と「つるんでいる」となれば、スンニ派国家が激怒するのも当然のことだ。

2017年6月5日から起きているカタールの断交措置が非常に強硬で徹底的なものになっているのは、背景にこのような感情があるからだ。

カタールは小国だ。

小国なのになぜ隣国のサウジアラビアを刺激し、迎合よりも対立を選ぶのか。どうしてサウジよりもイランの方にシンパシーを感じるようになっているのか。

ここに小国としてのカタールの鬱積した感情が見て取れる。

恨みという感情は理性に勝るので止められない


小国カタールは、今までずっとサウジアラビアに隷属してきた。独立国家ではあるが、実際にはサウジアラビアの影響下から逃れられない隷属国家であった。

カタールもまた石油資源で豊かになった国家だが、どれだけ豊かになっても政治的にはずっとサウジアラビアに隷属したままだったのだ。

だから、存在を主張しなければ国家は大国サウジアラビアに飲み込まれる危険があった。

その主張は必然的に「我々はサウジアラビアとは違う」というものでないとならず、そのために政策的にはサウジアラビアとは真逆のことを主張することも多かった。

たとえば、サウジアラビアが女性の人権を弾圧して、女性は車の運転も認めないという政策を強化すれば、カタールの方はわざと女性に車の運転を認めさせるような政策を取るようなことをしている。

サウジアラビアが外国人もアルコールを禁ずると言えば、カタールは外国人はアルコールの摂取を認めると言い始める具合だった。

カタール傘下のアルジャジーラも、自国の都合の悪いことはまったく報じず、サウジアラビアの政策や指針と対立するような報道を積極的に行った。

こうした行動のひとつひとつは、大国に隷属せざるを得ない小国の反撥心がその裏側にあるとしても不思議ではない。

隷属しないわけにはいかないのだが、隷属するにしても心の奥底では自分たちを押さえ付けているサウジアラビアに対する憎悪や恨みの感情がある。

その小国としての屈折した恨みが、サウジアラビアに対するカタールの行動であると考えれば、カタールという国家の言動はかなり理解ができるはずだ。

こうした恨みに基づいた感情は自国の首を絞めるだけであるのは分かりきっているのだが、それでも恨みという感情は理性に勝るので止めることができない。

小国は、生きるためには大国に隷属するしかない


どのみちカタールはどのように足掻いてもサウジアラビアに勝てるわけではない。兵糧攻めが続けば国家崩壊も避けられないので、何らかの政治的妥協を余儀なくされる。

いくらイランが支援すると言ったところで、陸続きの近隣諸国をすべて敵に回しては生きていけない。あらゆる面で、サウジアラビアや近隣諸国に対して徹底抗戦することなどできるわけがないのだ。

小国は永遠に大国の隷属化に置かれるのが運命であり、カタール自身もそれを自覚している。

そのため、恨みを飲み込んでサウジアラビアをはじめとする近隣諸国とは妥協するしかないので、これが中東大戦争に結びつくというのはあまり考えられない。

カタールが自滅することはあっても、戦争はない。戦争になれば100%負けるのは分かりきっているのだから、戦争したくてもできないのである。

国家間の外交や動向は「絶対」はないので戦争が起きる確率はゼロにはならないが、普通は負け戦が分かっているのであればよほどの馬鹿でない限りはそれを避ける。

ここまで考えると、なぜカタールがテロ組織を裏側で支援しているのかという心理も分かってくるはずだ。

大国に勝てないから、テロ組織を支援することで大国を混乱させ、動揺させることができるという「小国としての論理」が潜在化にあるからだと言っても過言ではない。

巨大な軍事力に勝つには、アフガニスタンがソ連やアメリカに対して行ったように、テロ攻撃を十数年も繰り返して相手を消耗戦に引きずり込む以外にないのである。小国にとってはテロが救いとなるのだ。

小国の気質というのは、このようなものだ。

こうした気質はカタールだけでなく、多くの小国が持ち合わせているものである。

小国は、生きるためには大国に隷属するしかない。隷属すれば経済的な恩恵がもたらされる。しかし、隷属する屈辱は晴らすことができず、それが恨みとなって脳裏に刻まれる。



カタールの首都ドーハ。小国は永遠に大国の隷属化に置かれるのが運命であり、カタール自身もそれを自覚している。


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