2016-11-26

経済格差の底に沈んだ人々を救済するためのトランプ流手法


バラック・オバマは、元々「チェンジ」を全面に掲げて大統領になった人間だった。

しかし、この大統領は「世界で何が起きても傍観する」というチェンジを成し遂げただけで、国内の経済格差を是正するためにエスタブリッシュメント(経済支配層、富裕層)と対決するという部分ではまったく仕事をしなかった。

そのため次第にオバマ熱は冷めて、誰もこの大統領に期待しなくなった。オバマに期待したところで何もチェンジできないという失望感がずっとアメリカを覆っていたのだ。

このオバマ時代の8年間では「ウォール街を占拠せよ」運動や、「ティーパーティー運動」が起きており、「1%の富裕層と残り99%の層」の絶望的がくすぶっていた。

これらは、経済格差のどん底に突き落とされた人々の不満がもたらしていたものである。

すでに資本主義が絶望的な収奪構造となっており、今やこの1%のエスタブリッシュメント(富裕層)が全世界の富の半分を保有するというところにまで到達している。

アメリカ人はこれを何とか是正してくれとオバマ大統領に託したのだが、オバマは何もしないで8年間を過ごした。


「今の凄まじい経済格差を何とかしてくれ」という声


当初はキワモノ扱いされていたドナルド・トランプがのし上がっていったのは、トランプ自身は金持ちだったにも関わらず政界のアウトサイダーであり、政策は「反エスタブリッシュメント」「反グローバリズム」「アメリカ第一」を明確に掲げていたからだ。

一方でヒラリー・クリントンが既存の政治家や大企業や富裕層の圧倒的な支持を得ていたにも関わらず苦戦し、嫌われ続けたのも根幹は同じである。

ヒラリーは、彼女自身がエスタブリッシュメントの一員であり、グローバリズムの推進者であり、何もチェンジできなかったオバマ政権の一員でもあった。

「オバマ政権の元で働いていて何もできなかった人が、そのまま大統領になっても現状を変えられない」

これが99%の層がヒラリー・クリントンに持っていたイメージである。ドナルド・トランプも選挙中はそれを繰り返し訴え続けて喝采を受けていた。

「今の凄まじい経済格差を何とかしてくれ」という声がドナルド・トランプを押し上げ、ヒラリー・クリントンを叩きのめしたのだ。

折しもグローバル経済は停滞しており、パイは大きくならずに今あるパイの奪い合いになっている。

パイを奪っていたのは誰か。それは低賃金で働く移民・難民であり、途上国の労働者であった。

だから、ドナルド・トランプは「移民を叩き出す」「中国などの関税を引き上げる」「TPPもNAFTAも反対」と言って経済格差の下であえぐ人たちを感動させ続けたのである。

ヒラリー・クリントンなら経済格差の是正はできないのは見えていた。

ヒラリー・クリントンは多国籍企業の経営者やオーナーや投資家を味方に付け、ハリウッドの金持ちセレブに支援や声援を受けていた。金持ちセレブたちと壇上に立てば立つほど、皮肉なことに99%の層がヒラリーから離れていった。

女性問題も環境問題も知ったことではない人々


ヒラリー・クリントンは女性候補だった。ヒラリーは自分が大統領になることで、すべての女性が感じている「ガラスの天井」を打ち破ることができると訴えた。

しかし、「経済格差」という巨大な問題の前には「女性問題」は消し飛んでいた。女性の地位向上よりも、経済格差の方にアメリカ人は切実な問題意識を持っており、それを何とかしてくれる人物を求めていたのである。

ヒラリーはドナルド・トランプの前に、バーニー・サンダースにも苦戦していたのだが、その時に今のアメリカの問題は女性問題でも中絶問題でも環境問題でもないことに気付くべきだったのだ。

焦点は「経済格差」にあったのである。

アメリカはすでに全人口の41%が貧困に苦しんでいる。先進国の中で最も相対的貧困率が高いのは、最も資本主義が浸透しているアメリカだ。

41%が働いても働いても生活を向上させることができないワーキングプアである。アメリカ人の半数は年収300万円以下なのだ。そして、アメリカの5人の1人の子供が貧困となっている。

オバマ政治の真っ只中である2012年のデータでは、フードスタンプを受給したアメリカ人は6500万人になっている。これがアメリカの姿なのである。

ハリウッド映画に出てくる煌びやかな登場人物の姿は上位1%のまやかしであり、99%はセレブ生活とは無縁で社会の底辺をさまよい歩いている。

そんな人々に「女性がガラスの天井に苦しんでいる」と訴えても「だから何なのだ?」と思われるのがオチだ。「地球温暖化を止めるためにパリ協定を支持します」と言っても、99%の層は「そんなことはどうでもいい」ことだった。

今日もメシに困っており、明日の仕事に不安を持っている層には、女性問題も環境問題も知ったことではない。そんなことよりも、「俺たちの生活の方を何とかしろ」と政治家に求めて当然である。

ヒラリー・クリントンはそれに応えなかったが、ドナルド・トランプはそれに応えた。だから、キワモノだろうが、人格に問題があろうが、政治経験がなかろうが、トランプは支持されたのだ。

トランプは今後どうやって99%を救済するのか?


では、ドナルド・トランプは今後どうやって経済格差のどん底に堕ちた99%を救うつもりなのか。それは、「アメリカのパイをでかくすること」で達成するつもりだ。

ドナルド・トランプはビジネスマンであり、ワンマンであることを考えると、今度トランプは選挙公約として掲げたものについては、どんどん実現していこうとして動くだろう。

具体的にどう動くのか?

トランプは個人の負担を軽くするために「減税する」と約束した。さらに「大規模なインフラ投資を推進する」と言っていたので、景気刺激のために財政出動を増額するはずだ。

アメリカ政府の財政は悪化するが、その見返りとしてアメリカ国内は景気改善に沸く。

ドナルド・トランプはグローバル経済なんかどうでもいいと考えているので、まずはアメリカの景気を浮揚させることに尽力する。つまり、どういうことか。

今後アメリカの各銀行が恩恵を受け、さらにアメリカの不動産業が恩恵を受け、建設関連会社も恩恵を受ける。

さらにドナルド・トランプはアメリカ第一を実践するために、中東よりも国内の石油企業に尽力する。アメリカ国内のシェールオイル・シェールガス業界は恩恵を受ける。

巡り巡ってアメリカの自動車も「アメリカ第一」の気運に乗って売れていく。

こうした動きはドル高を誘発するのだが、そうなれば中国やメキシコが恩恵を受けるのかと言えばそうではない。トランプは「貿易協定など反故にして、関税をかけることで対処する」というのだから、アメリカ企業がまず恩恵を受けるのだ。

ドル高になり、景気過熱で金利高にもなるのだから、投資資金はアメリカに回帰する。

アメリカの調子が良くなるのに、リスクが高くて通貨の価値が下がる新興国に投資する馬鹿はいない。アメリカにすべての資金が集まるのだ。

新興国の投資は縮小して世界は大荒れになるが、逆にアメリカの企業はグローバル経済の痛みが襲いかかってくるまでは好景気を享受することになる。

そうやって、地獄に堕ちた99%をドナルド・トランプは救済するつもりなのである。目論見通りにいくかどうかは分からないが、すでに賽は投げられた。

今後、アメリカはアメリカしか見ない。基本的には日本がどうなっても「自分の面倒は自分で見ろ」という話になる。アメリカはその方向に突進することになる。



ドナルド・トランプは今後どうやって経済格差のどん底に堕ちた99%を救うつもりなのか。それは、「アメリカのパイをでかくすること」で達成するつもりだ。


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