2016-11-02

トランス脂肪酸の問題は、実は貧困問題でもある理由とは?


アメリカでは現在マーガリンに含まれる「トランス脂肪酸」の規制に入っており、2018年6月以降は禁止されることになっている。

これは決定事項である。各食品会社はアメリカで「トランス脂肪酸」を使った食品を売ってはならないことになる。一部の例外はあるが、ほぼ全面的な規制であると捉えてよい。

現在、まだ禁止になっていないのは、猶予期間を与えられているからであり、安全だからではない。「トランス脂肪酸は安全とは認められない」というのがFDA(米食品医薬品局)の揺るぎない見解である。

トランス脂肪酸とは何か。これは植物性の油脂を加工する過程で発生するもので、現在は多くの食品に使われている。

たとえば、サラダ油、マーガリン、ショートニングに含まれ、さらにこうしたものを使ったクッキー、アイスクリーム、チョコレートのようなお菓子にも含まれている。

トランス脂肪酸を取りすぎると、心筋梗塞や狭心症やアレルギーを引き起こし、流産や死産を生じさせる可能性がある。アメリカで問題になっているのは肥満と心臓病だが、そのどちらもトランス脂肪酸が関わっているとされている。


長い蓄積が身体にダメージを与えていくというもの


トランス脂肪酸は「食べるプラスチック」と呼ばれている。この分子構造がプラスチックと非常に似ているからである。

プラスチックは食品ではないが、トランス脂肪酸を食べるというのは、プラスチックを食べるというのと同じなのである。だから、トランス脂肪酸を食べると、冠動脈疾患やアレルギーが発生するのだ。

その中で特に問題になっているのは、マーガリンである。

日本では朝食に食パンを食べる人がとても多くなっているのだが、その食パンにバターではなくてマーガリンを塗る人は80%を超えている。

バターは固くて溶けにくいので食パンに塗りにくい。そのため、マーガリンが好まれるようになっている。

しかし、マーガリンを常食するこの80%の人は、ほぼ毎朝プラスチックを食べているようなものなので、問題が発生しないわけがない。

日本の食品の食品添加物は非常に多いのだが、これに加えてマーガリンのようなトランス脂肪酸の恒常的な摂取でアトピーが増えているのではないかと見る専門家もいる。

「アトピーの人はマーガリンを取るな」と言う医師もいる。もちろん、マーガリンだけが問題ではないのだが、マーガリンを取らないというのは原因を取り除くという意味ではひとつの方法でもある。

アメリカだけでなく、ヨーロッパでもマーガリンは危険視されており、オランダでもデンマークでもスイスでも販売は禁止されている。もう毒物扱いされているのである。

ただ、毒物扱いと言っても、それを食べたらすぐに死ぬというわけではない。長い蓄積が身体にダメージを与えていくというものであり、「ただちに影響がある」わけではない。

だから、良し悪しは別にして、日本のようにまったく規制されない野放しの国も多い。

「わざわざ規制するほどでもない」という意味


欧米でトランス脂肪酸が規制されているのに日本で規制されないのは、「欧米と日本ではトランス脂肪酸の摂取量がまったく違うから」という話もある。

欧米人のジャンクフード好きは、日本人の想像を超えたところがある。

ハンバーガーからフライドポテトからタコスからピザからフライドチキンからドーナツからケーキに至るまで、ほぼジャンクフード満載の食事がそこにある。

そして、そのすべては油脂がたっぷり含まれており、その油脂の中にトランス脂肪酸がありったけ含まれている。しかも食べる量が半端ではない。おまけに砂糖たっぷりの炭酸飲料もここに加わる。

アメリカ人の限度を超えた肥満は、そうした食生活に問題があるのは間違いない。トランス脂肪酸の規制は、こうしたところに原因がある。

しかし、日本人で朝から晩までジャンクフードを365日食べる人は、皆無とは言わないが、さすがに少ない。

そう考えると、たかが食パンにマーガリンを塗ってたまにジャンクフードを食べるくらいでは規制するほどでもないという意見も一理ある。

厚生労働省もこうした立場である。しかし、厚生労働省は2010年度版の「日本人の食事摂取基準」の中で、わざわざこのような一文を入れている。

「日本人の中にも、欧米人のトランス脂肪酸摂取量に近い人もいる」

そういう人もいるのは厚生労働省も認識しているのだが、日本ではトランス脂肪酸が規制されないので、「すべては自己責任」ということになった。

「わざわざ規制するほどでもない」というのは、そういう意味である。「自分の健康は自分で守れ」というのが基本的な見解なのである。しかし、ここにある社会問題が絡んでくる。

同じ国民とは思えないほどの寿命の差となって現れる


バターとマーガリンはどちらが安いか。マーガリンである。マーガリンにはトランス脂肪酸が大量に含まれていると言われても、バターが高すぎてマーガリンしか選択の余地がないという人はたくさんいる。

使い回しの油で揚げられた揚げ物と、毎日のように交換される油で揚げられた揚げ物は、どちらがトランス脂肪酸が大量に含まれているのか。もちろん、使い回しの油の方だ。

しかし、使い回しの油を使っている店ほど食品は激安であり、いくらトランス脂肪酸が大量に含まれていると言われても、それしか選択肢がない人もたくさんいる。

それと同じく、ジャンクフードにはトランス脂肪酸が大量に含まれているとしても、低価格で大量のカロリーを取れるジャンクフードしか選択肢がない人も生まれてきている。

トランス脂肪酸が大量に含まれている食品は、不健康であると言っても「安い」のである。だから、身体に悪いと言われてもそれを選ぶしかないという「哀しい現実」が浮上する。

アメリカではすでに貧困層は痩せ細るのではなく、逆にぶくぶくと太っていくという「貧困層=肥満」現象が定着している。トランス脂肪酸たっぷりのジャンクフードが安いから、どんどんカロリーがオーバーしていく。好き嫌いではなく、貧困でそうなる。

世界中で同様の傾向があるので、当然のことながら日本もまた「貧困層=肥満」の構図になっていく。貧困であるがゆえに、安い食品を選択せざるを得ず、それは結果的にトランス脂肪酸たっぷりのジャンクフードとなり、健康を損ねるのである。

こうした社会現象を考えると、今後は何が起きてくるのかは誰もが分かるはずだ。

「貧困層ほどトランス脂肪酸を大量に摂取することになって健康を害し、健康を害するために仕事に影響が出て貧困がより深くなっていく」という現象が起きるのだ。

さらに長い目で見ると、健康な食品を選べる富裕層とそうでない貧困層の間では、まちがいなく同じ国民とは思えないほどの寿命の差となって現れてくる。

「何を食べるのかは自己責任」と言われても安い食品を食べるしかなく、あげくの果てに病気になりやすく、さらに寿命も短くなる。

トランス脂肪酸の問題は、実は貧困問題だったのである。



マーガリン、低脂肪マーガリン、バーターの3つを見ると、マーガリンが食品扱いされていないのが分かる。貧困層はその食品を食べて病気になり、寿命が縮まるのである。


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