2016-10-03

トランプとヒラリーのいずれが大統領になっても大混乱必至


アメリカの大統領選挙だが、ドナルド・トランプにしろヒラリー・クリントンにしろ、両者ともに多くの問題を抱える候補だ。

トランプは激しい暴言と、敵対者に対する無神経な攻撃、さらには脱税問題から兵役逃れと、次から次へと問題を引き起こして回っている。

一方のヒラリーは、自分の財団に多額の寄付をした人間としか会談をしないとか、それを隠蔽するためにメールアドレスを個別に持ったとか、ウォール街や軍産複合体と結託しているとか、おおよそクリーンとは言い難い候補だ。

今の大統領候補は、どちらも信頼に足る人間ではないことが最初から分かっており、どちらが大統領になったとしても世界は波乱に見舞われるのは必至だ。

ところで、ドナルド・トランプが躍進した理由と、ヒラリー・クリントンの支持率が伸びない理由は、同一のものであることはアメリカでもしばしば指摘されている。

この大統領選挙の波乱を生み出している原因は何か。

それは、アメリカ社会に蔓延した「貧困」と「格差」である。この2つがアメリカの大統領選挙に大きな影響を与える根源的な波乱要因となっているのである。


アメリカの「大衆」は、なぜ怒っているのか?


ドナルド・トランプを支持しているのは、「大衆」であると言われている。

アメリカはすでに1%の超富裕層とその他99%の一般人に分離してしまったと言われる国だが、「大衆」というのは、その99%に属する人たちだ。

2008年に起きた巨大な金融崩壊であったリーマン・ショックで、アメリカ政府はギャンブルに明け暮れた銀行を「大きすぎて潰せない」と言って救済した。

それは、資本主義システムを守るために必要な措置だったのだが、これによって「高給を得ていた金融エリートたちが税金で救済され、大衆は家を失っても救済がなく路頭に放り出された」という怒りが生まれた。

この怒りを増長させたのが、FRB(連邦準備制度)が行った前人未踏の金融緩和だった。

金融緩和によって刷られた大量のドルはじゃぶじゃぶになって株式市場や商品市場に流れ、主要な優良企業の株価をどんどん上昇させていった。

この時期にアメリカの優良企業の株式を所有していた人間はみんなまとめて金持ちになったのだが、株式を大量に所有しているのは富裕層であり、貧困層は株式どころか現金すら手に入らない中で生きていた。

つまり、FRBの行った金融緩和によって、再び富裕層が莫大な富を得ることになり、大衆はそのまま放置されたのだ。いや、放置されただけでなく、大衆はますます貧しくなる一方だった。

なぜなら、利益史上主義と化したアメリカの多国籍企業は、コストである労働者の賃金を極限まで引き下げ、効率経営を推し進めて少ない雇用で利益を生み出す体質に変わっていったからである。

その結果、アメリカではワーキングプアと呼ばれる「働いても働いても豊かになれない労働者」が続出するようになった。このワーキングプア人口が、もうすでに1億5000万人に達しているというのがアメリカの現状だ。

アメリカの資本主義システムに凄まじい不満と怨嗟


アメリカの多国籍企業の効率化への追求は「少ない人数で運営できる体質」を実現した。

これによって割を食った若年層は、高学歴や資格を手に入れて企業にアピールするしか方法がなくなったので、学生ローンで数百万円もの借金を背負って大学卒業の学歴を手に入れようと必死になった。

しかし、大学を卒業しても高給の仕事に就けるかどうかは未知数であり、賭けだ。もし卒業してからまともな仕事にありつけないと、若者は借金だけが残って社会に出て早々と追い詰められる結果と化す。

こんな状況なので、アメリカの若年層もまた今のアメリカの資本主義システムに凄まじい不満と怨嗟を抱いている。

この不満をうまく汲み取って、予想外の善戦をヒラリーと繰り広げていたのが、バーニー・サンダース候補だった。

バーニー・サンダースは「格差是正」「徹底的な所得再配分」「最低賃金引き上げ」「金融業界の規制」「公立大学の授業料の無料化」と、次々にアメリカの学生に訴える政策を出していた。

ヒラリーは体制側の候補だったので、最後の最後までバーニー・サンダースに苦しんだ。

ヒラリーがやっとのことで民主党の指名を得ると、今度はバーニー・サンダースの支持層はヒラリーを嫌ってみんな共和党のドナルド・トランプの支持に回るという有様で、いかに今の既存の政治家が嫌われているかが分かる。

ワーキングプアに転がり落ちた労働者たち、そして学生ローンで苦しむ若年層たちに共通するのは、「アメリカには仕事がない」という現実である。

ドナルド・トランプ自身は富裕層に属するのに「大衆の味方」のように支持されているのは、トランプ自身は既存の政治家から嫌われている人間であるし、さらにトランプは「アメリカ第一」を掲げて「アメリカに仕事を取り戻す」と約束しているからだ。

どちらにしろアメリカの政治的混乱は続く


ワーキングプアに落ちたアメリカ人が再び仕事に就けるようにするためには、勝手にアメリカに潜り込んで低賃金で仕事をしている密入国者はいない方がいい。

だからトランプは「密入国者を叩き出せ」と叫び、「メキシコとアメリカの国境に壁を作る」と言っている。そうすれば、アメリカ人に仕事が回るとトランプは説く。

そしてトランプは「イスラム系移民を制限しろ」「不法移民も要らない」と叫ぶ。移民を制限すれば、やはりアメリカ人に仕事が回るとトランプは説く。

さらにトランプは、「アメリカの企業に中国で製造するのではなく、アメリカで製造させるようにする」とも言っている。そうすれば、やはりアメリカ人に仕事が回るとトランプは説く。

トランプがグローバル・メディアで叩かれ続けているのにいっこうに支持率が落ちないのは、1%の富裕層よりも、99%の大衆の方に目が向いているように見えるからである。

つまり、アメリカの大統領選挙の波乱は、現在の弱肉強食の資本主義に爆発的な不満を持った層が、これまでのシステムをぶち壊してくれる候補を望んでいるからである。

これ以上何も失うものがないところにまで追い込まれた「大衆」は、アメリカの覇権だとか資本主義だとか国際政治だとかグローバル化などは、もう「どうでもいい」ものになっている。

アメリカの大国としての尊厳も関係ない。そんなものよりも、今ここにある自分たちの苦境を何とかしろと政治家に叫んでいるのである。これが、アメリカの大統領選挙の波乱の原因であり、結果である。

しかしながら、ドナルド・トランプは清廉潔白な候補者ではないし、性格にも言動にも問題がある。トランプが大統領になったら、アメリカはより混乱することになる。

かと言って、ヒラリー・クリントンが選ばれたら、99%の「大衆」の欲求不満と怒りはもっと深いものになる。どちらにしろアメリカの政治的混乱はこれからも続き、アメリカ国内は不穏な空気に包まれていくのは予測できる。



ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプ。どちらが大統領になっても、アメリカの政治的混乱はこれからも続き、アメリカ国内は不穏な空気に包まれていくのは予測できる。

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