2016-09-22

今のグローバル化は人々を幸せにしない弱肉強食のシステム


いつリストラされるか分からないというのは、収入が途絶えて食べていけなくなる恐怖に怯えて暮らすことだ。

終身雇用が消え去り、大手企業にいても身分が保障されなくなると、人々は常にこの「食べていけなくなる」という恐怖と戦わなければならなくなる。

この恐怖はとても強いものだ。自分の生活がいつ破綻するのか分からないのだから、恐怖に怯えない人はいない。

このような立場にいる人が増えればどうなるのか。もちろん社会は停滞する。

将来に対してどんよりとした不安しかなければ誰も消費しようとも思わない。むしろ、なるべく行動を抑えて出費を減らすことを考える。

新車を買おうとか、住宅ローンを組もうとか、結婚して子供を作ろうとか、大金を使うような出費など「それどころではない」と考える。

それより、ほんの少しでもいいから必死で貯めないと、将来はのたれ死にしてしまうと感覚的に思う。

今は大丈夫でも、そんなことは関係ない。もしかしたら生活ができなくなるかもしれない、という漠とした不安は経済的な冬眠状態を生み出すのである。


何をどうやっても雇用の削減に行き着く現代社会


つまり、明るい将来が見えない社会は、経済が活性することが期待できない。

いくら金利を下げようが、金融緩和しようが、それで普通の人たちが消費したいという気持ちになるわけではない。金利を下げ、金融緩和が行われて喜ぶのは「株主」だけである。

ファイナンスのコストが下がり、金融緩和によって大量の金が株価を押し上げるのだから、それは株主「だけ」がひとり勝ちする世界である。

株価が上がれば企業も潤うが、潤った分は内部留保されて従業員には回さない。そのため、トリクルダウンも起きない。

緩やかなインフレも、内需拡大も成し遂げられない政府は、ここで焦って各企業に「最低賃金を上げるように」と指導することになるのだが、そうするとまた別の問題が起きる。

アメリカでも最低賃金を上げよとワーキングプアに苦しむ従業員たちが抗議デモを起こしたのだが、そこで企業側が取ったのは、賃金を上げる代わりに従業員をより削減して、機械化・IT化・ロボット化で対応することだった。

賃金を強制的に上げさせるというのは、雇用を削減する流れをさらに加速させたのだ。(最低賃金を引き上げると、貧困層がより貧困化する理由とは

「賃金を無理やり上げる、最低賃金を上げる」という処方は、むしろ雇用者をより減らして社会情勢を悪化させてしまう皮肉な現象を生み出す。

現在の社会では、企業が常に利益を出すことが株主から求められている。株主が経営者にコストを削減して利益に回すことを強く要求するのは、配当も企業の成長も利益が生み出すからである。

アクティビスト(物言う株主)が増えて企業に干渉するようになった結果、好況不況に関係なくリストラが起きる。ここにデフレやグローバル経済の停滞が続くと、さらにリストラは大規模化する。

そんな中で企業に賃金を上げよと無理やり強制すると、さらにリストラは恒常化する。何をどうやっても、雇用の削減に行き着く。

将来に希望がなければ金があっても消費しない


リストラや失業が当たり前になると、労働市場は「雇いたい」という側よりも「働かせて欲しい」という側の方が増えるということを意味している。

これは雇う側が主導権を握るということだ。そして、都合の良い条件を突きつけられるということだ。

つまり、雇う側は「もし、どうしても雇って欲しければ非正規雇用で我慢しろ、低賃金で我慢しろ、悪い労働条件でも我慢しろ」と言えるようになったのだ。そして、実際にそのような社会が生まれている。

日本社会にグローバル化の波が浸透し、企業が利益優先の経営(ROE経営)を行うようになり、終身雇用も崩壊してリストラが当たり前になると、非正規雇用とブラック企業が蔓延する社会と化した。

すでに非正規雇用者は1253万人を超えており、40歳未満の非正規雇用者は57%が自活できない状況にあると厚生労働省は2014年に発表している。

こんな状況の中で内需拡大ができるわけがない。

最近、「若者の車離れ」「欲しがらなくなった若者」「性欲も消えた若者」の存在がクローズアップされている。「結婚しない若者」もすでに珍しくなくなった。

消費欲も性欲もなくなったのかと騒がれているのだが、将来に何の希望も見出せない社会で消費したいという気持ちになるのであれば、そちらの方が珍しい。

将来に希望があれば、金がなくても消費する。将来に希望がなければ金があっても消費しない。

「消費しない若者の存在」は、人間心理として当たり前のことが現代社会で起きているだけであり、それを今さら驚く方がどうかしている。

今のグローバル化は人々を幸せにしないという事実


日本人は日本だけを見ているので、こうした現象は日本だけに起きていると考える。その結果「今の政治が悪い」という方向に話が向かいがちになるのだが、実はそうではない。

企業が利益を重視するようになって従業員をリストラするようになったとか、若者の非正規雇用が増えたとか、若者の消費が減退したとか、結婚もしなくなったとか、このような現象は、今や全世界で起きているのだ。

それぞれの国の中で、こうした社会現象は「我が国の政治家が悪い」と言う話になって、政権を担っている政党や指導者が攻撃されている。

しかし、これは全世界で共通して起きている社会現象であるということに気付くと、個別の国の政治が問題ではないということに気付くはずだ。

資本主義が変わったのだ。

資本主義という社会は変わっていないのだが、グローバル経済が全世界を覆い尽くし、巨大企業が多国籍企業になっていく中で、資本主義そのものが変質してしまったのである。

すでに企業は「地元の人間」を雇うという発想はなくなっており、世界を見回して「賃金が一番安い人間を雇う」という発想になっている。

従業員は使い捨てとなり、国に税金を払うのも惜しんで本社を税金の安い国に移して利益を貯め込み、その利益はさらにタックスヘイヴンに隠して、経営者と大株主のみが山分けするシステムになっている。

そして、多国籍企業が地場産業を叩き壊し、乗っ取り、自分たちの利益をどこまでも膨らませて還元しないという「弱肉強食の資本主義」と化した。

その結果、多国籍企業はどこまでも膨らんでいくが、個人はどこまでも不安定になって、将来に怯えて暮らすという社会になってしまった。

今のグローバル化は人々を幸せにしない。そんな「幸せになれない社会」になったということを、あなたは気付いているだろうか?



すでに企業は「地元の人間」を雇うという発想はなくなっており、世界を見回して「賃金が一番安い人間を雇う」という発想になっている。今のグローバル化は人々を幸せにしない。

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