2016-09-08

不安定な身分で働かせ、壊れたら使い捨てする経営スタイル


企業は景気が悪いとリストラに走る。これは誰でも知っている事実だ。しかし、日本企業に限って言えば、景気だけがリストラする理由ではない。

もう日本企業は終身雇用では生き残れない。だから、リストラする。日本人はコストが高い。だから、リストラする。法人税が高い。だから、リストラする。電気料金も高い。だから、リストラする。

グローバル経済に巻き込まれ、競争力の減退にさらされている日本企業は、もう昔のように井の中の蛙ではない。弱肉強食のグローバル経済で必死で生き残らなければならないのだ。

グローバル経済の中では株主も多国籍になっていくのだが、彼らの多くは「利益」を重視する。利益こそが会社を成長させ、高配当を維持する元になるからだ。

だから、どこの企業もとにかく利益を出すことを最優先に経営をするようになる。これをROE経営という。

ROE経営では利益を出すためにコスト削減が重要視される。とにかく、最初にコストを削る。コストの中で最も重いのは「人件費」である。だから、どこの企業も人件費を削ろうと躍起になっているのである。


派遣社員という流行は、企業の仕掛けたワナだった


それだけではない。日本企業はバブル崩壊以後、長く続く不景気に大きなダメージを受けてきた。

日本で不動産バブルが崩壊したのは1990年だ。その後も日本企業は終身雇用を維持してきたが、10年も不況が続くと、さすがに企業の体力が持たなくなってきた。

企業体力が持たなくなって何が起きたのか。人材の「切り捨て」だ。2000年あたりから、目に分かる形で人材の「切り捨て」が始まるようになった。

最初は、若者たちの苦境から始まった。若者が正社員で雇用されなくなっていた。だから、2003年頃から徐々に格差問題が深刻になっていき、2005年には誰もが知っている社会問題と化した。

若者は技術もないし、即戦力にもならない。企業が生き残ろうとしたとき、切り捨てるにはちょうどいい対象であるのは間違いない。

彼らは政治力も皆無なので、切り捨てたところで何が起きるわけでもない。使い捨てするには若者が一番いいというのに企業は気づいて、さっさとそれを実行していたのが2000年の初頭だったのである。

その頃から、もう企業は高コストの正社員を雇わなくなった。いつでも「切り捨て」できる非正規労働者しか雇わなくなった。

派遣社員の生き方がちやほやされる時代があった。自分の時間が取れて、いろんな会社で勉強することができるという触れ込みだった。

もちろん、それは若者をいつでも切れる立場に追いやるための企業の仕掛けた「ワナ」であったのだが、社会経験のない若者たちはすっかり流行に騙されて派遣社員になっていく。

しかし、派遣社員は「非正規」なのだから、企業の都合で勝手に切られる立場でしかない。それに気がついて正社員を望んだとき、もう正社員の扉は固く閉じられていた。

若者たちは身分の不安定な派遣社員を続けるしかなくなってしまったのである。

高給取りを削減して非正規労働者に置き換えていく


グローバル経済が行き着くところまで進んでいる。最終的に、賃金は世界的に見て最も低い部分で調整されるようになる。

だから、日本人の高賃金は削減され続けている。すべては企業の生き残りのためである。

しかし、若者を派遣に追いやっただけでも競争に勝てなくなった日本企業は、次に正社員を削るか、正社員の給料を削るかのどちらかを選択せざるを得ないところにまで来た。

現在、ほとんどの企業がその2つを実行している。余分な社員をリストラし、残った社員の給料を削減している。

それを分かっているので正社員も必死で会社にしがみつこうとする。

しかし、企業の一部は社員を自発的に辞めさせるための「追い出し部屋」を作って、仕事をさせずにじわじわと辞める方向に持っていった。

とにかく企業は、何がなんでも「高給を取る労働者」を削減したいと考えている。毎年毎年、そうやって高給取りを削減して非正規労働者に置き換えていけば、日本人の賃金コストを下げることが可能になる。

正社員のほとんどは切り捨てられる対象になる。そして終身雇用も年功序列も終わった。中高年でリストラされると、次の仕事は非正規雇用しかなく、年収は大幅に下がる。

最近、アルバイトの時給が上がって、「賃金が上がっている」と喜んでいる人もいる。

しかし、正社員を削減してみんな非正規労働者にしたら、非正規労働者の賃金を少し上げても総合的に見ると企業としてはコスト削減になるというところに気付かなければならない。

正社員が削減され続けて雇用者の身分が不安定になっているのだから、アルバイトの時給が上がって「昔より良くなった」という単純な話にはならないのである。

「使い捨て」というのは、比喩ではなく事実


日本がデフレから這い上がれずに苦心惨憺としているのは、不景気、政治の混乱、高齢化少子化、グローバル経済の過剰な取り込みなどが、ずべて同時期に重なったからだ。

これらの問題は、これからも継続していく。

そうだとすると、これからサラリーマンにとってはますます苛烈な時代になっていくと言える。多くのサラリーマンは単に「労働者」へと落ちていく。

上昇できるのは将来は経営幹部になるごく一部のエリートに限られる。サラリーマンという立場でも格差が歴然とするようになり、出世できない人間は捨てられていく。

エリート以外のサラリーマンは、今後はあからさまな「使い捨て」にされていくので、今後は「企業内格差」が相当な問題になっていく。

格差からこぼれ落ちたら給料で格差を付けられ、挙げ句の果てに「使い捨て」されるのである。「使い捨て」というのは、比喩ではなく事実だ。

社員を極限まで働かせ、極限まで奉仕させ、体力の限界まで使い込み、消耗して壊れてしまえば、辞めさせるか放り出す。

若者は安定した仕事がそもそも手に入らず、手に入ったと思えば使い捨ての扱いで極限まで能力と体力を搾り取られる。絞りカスになったら、いろんな理由をつけて辞めさせられる。

今では、経営者の仕事とは「よけいな人間をバサバサと切り捨てていく」ものになってしまっていることに気がついている人は多い。

破綻した企業にやってきた再建型のマネージャーの最初の仕事は、人間のクビを切ることだ。

今は、破綻していない企業が、それと同じことをしている。本格的に、徹底的にそれは行われている。それが、さらに今後も加速していく。

不安定な身分で働かせ、壊れたら使い捨てするスタイルが企業経営の標準になったのだ。そして、這い上がれない若者たちは日本の底辺にうごめき、どうにもならなくなっていく。



物は使い捨てになった。そして、人間も使い捨てになっていく。不安定な身分で働かせ、壊れたら使い捨てするスタイルが企業経営の標準になる。そして、這い上がれない若者たちは日本の底辺にうごめき、どうにもならなくなっていく。

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