2016-06-24

日本の株式市場が極度に暴落しやすいのは何が問題なのか?


イギリスのEU(欧州連合)脱退はいろんな意味で世界に動揺を与えた。まさかイギリスが離脱するとは誰も思っておらず、多くの関係者が不意打ちになった。

そもそも国民投票を約束したイギリスのキャメロン首相からして、離脱派が勝利するとは思っていなかったフシがある。もし賭けに負けると分かっていれば国民投票などしなかった。

この国民投票の前には残留派の議員ジョー・コックスが惨殺されたこともあり、世論はいっせいに残留に傾いていた。ところが僅差で番狂わせが起きた。イギリス国民はEU脱退を選択したのだ。

その結果、世界中の株価が大暴落を見ているのだが、日本の株式市場の暴落が極端なのは面白い傾向だ。

もちろん、イギリスのEU脱退は世界中に大きな影響を与える。今後はイギリスの景気後退と、EUの崩壊は世界に大きな課題となっていく。

しかし、日本は別にEUの一員ではない。またイギリスと密接な外交的・政治的・経済的な結びつきがあるわけでもない。

つまり、ある程度の影響は被るものの、サーキット・ブレーカーが発動するまで株式を売る必要はまったくないわけで、どう見ても日本の株式市場の動きは極端である。


円も買われ過ぎだが、日本の株式も売られすぎ


日本企業は世界中にモノを売っており、当然のことながらEUという市場にも深く関わっている。だから、日本企業がEUの混乱の影響を受けないというのはあり得ない。

しかし、別にEUの混乱の影響を受けるのは日本企業だけではない。全世界の多国籍企業は同じ状況にある。混乱を直撃するという意味では、日本企業よりもむしろアメリカや中国の企業のほうが大きいはずだ。

それなのに日本の株式市場が極端な下落を見せているというのは、そういった部分とはまったく違うところで「下落の力学」が働いていることを示唆している。

日本円の動きと株式市場の動きは連動していることもあり、円高が来れば株式市場が下がるという連動性がみられる。

だから株式市場がパニックになっているのは、イギリスのEU脱退に動揺したというよりも、「円高に動揺した」と見るのが正しい。

しかし、円も買われ過ぎだが、株式も売られすぎだ。これには日本人の「投資家の性格」に大きな要因がある。

今回の市場の動きを見ても分かる通り、アジア・オセアニアで日本の株式市場が最も巨大な下落を見ているのは、日本人があまりにもアニマル・スピリットが欠けているからだ。

日本人の投資家は、世界中の誰よりも恐がりで動揺しやすいナイーブな少女のような精神力しか持たない。何かあると誰よりも恐がり、誰よりも動揺し、誰よりも先に逃げる。

これは日本人の投資家というよりも、現代の日本人全般の精神性なのかもしれない。雰囲気に飲まれ、悲観しやすく、心が折れやすい。

今回のイギリスのEU脱退でも、日本人の「心の弱さ」が露呈した状況であると言ってもいい。過度に動揺し、最初から腰が引けている。踏みとどまる気力がない。

修羅場に弱い人が集まったのが日本の株式市場だ


ゼロ金利になっても日本人がずっと定期預金し続けるのはなぜなのか。

「堅実だからだ」と日本人自身は思っているのかもしれないが、客観的に見ると、堅実なのではなく「リスクを取るのが怖い」から何もしないというのが実情に近い。

もっと分かりやすい表現をすると、日本人は誰よりも恐がりなので貯金を引き下ろして株を買うような「怖いこと」はできないと考えるのである。

元本が割れるような危険に足を踏み入れたくないと思うし、それを覚悟しても、実際に元本が割れるとすぐに蒼白になって売り飛ばす。あまりにも臆病すぎる。

こうしたガラスのようにもろい精神性の総体として日本の株式市場の動きがあるので、何らかのパニックのような出来事が起きると、真っ先に動揺して爆下げになる。

こうした日本市場の特質はよく知られていて、多くの投資家は日本市場を指して「雰囲気に弱い市場」とその特質を説明している。雰囲気で動いているのだから、合理性とは程遠い世界であるとも言える。

世の中は順風満帆な日々ばかりではなく、むしろ明日何が起きるのか誰にも分からない波乱の連続なのである。時には今回のイギリスのEU脱退のような「大波乱」を向かえることもあり、相場は修羅場になる。

世の中は動いているのだから、修羅場のない時代はない。

それが分かっていれば、修羅場が来ても動揺する必要はなく、合理的にやり過ごせばいいのだと気付く。しかし、なぜか日本人は感情的になり、修羅場を見て動揺してひとりでパニックになって逃げ出す。

これほど「修羅場に弱い人」が集まった株式市場は見たことがない。これは株式市場の問題ではなく、日本人の気質の問題でもある。

弱腰としか表現ができないものが日本を覆っている


日本人はあまりに修羅場に弱い人種になり下がってしまった。

外交でもそうだが、周辺国に恫喝されたり、無理難題を押し付けられると、すぐに謝罪したり、賠償金を出したり、問題を先延ばししたり、相手の言うがまま日本が折れたりする。

対立や衝突に恐怖を感じ、恐怖から逃れようと自分が折れる形で手を打つ。修羅場に自分が巻き込まれるのを極度に恐れ、戦う前からそこから逃げ出すのである。

危機に立ち向かうよりも、自分にできない理由を探してギブアップする。

戦前の日本はそうではなかったので、日本人がこうした気質になったのは、言うまでもなく戦後からである。

事なかれ主義が日本に蔓延し、過度に対立を恐れてそれを平和主義と丸い言葉で言いくるめて自分を納得させている。

憲法九条を守れというのも、「自分たちは怖いから戦わない、逃げる、怖がる」というのをオブラートに包んで言っているだけで、実際のところは「平和主義」なのではなく「事なかれ主義」に堕しているのである。

こうした「事なかれ主義」が日本社会に蔓延していて、相手が強く出たり、恫喝してきたり、不意打ちをしてくると、すぐにパニックになって逃げ出す。それは弱腰としか表現ができないものである。

こうした弱腰が株式市場にも色濃く反映され、日本の株式市場や経済市場を必要以上に悪化させている。どうすればいいのかは、今回の修羅場を生み出したイギリス人に聞けば答えが返ってくるかもしれない。

EU脱退を選択したイギリスには、ジョン・メイナード・ケインズという経済学者がいた。ケインズは経済の動きもまた人々の血気や野心に突き動かされていることを明らかにした経済学者である。

落ちたナイフをつかみに行く強さ、つまり「アニマル・スピリット」がマクロ経済を動かすのだとケインズは喝破した。

アニマル・スピリット。

別に野獣(ビースト)になれというわけではないが、危機に際しても怖がって逃げ回るのではなく、立ち向かうくらいの気概や強気や力強さが求められているということだ。

現在の日本の社会問題は、すべてにおいて「アニマル・スピリットが足りない」ことで起きていると喝破する社会学者が日本にいないのは、不幸なことだ。



現在の日本の社会問題は「アニマル・スピリットが足りない」ことで起きていると喝破する社会学者が日本にいないのは、不幸なことだ。



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