2016-06-20

少子高齢化に雇用劣化、堅実な人のワナになる住宅ローン


日本人の持ち家信仰は今も続いている。多くの人が35年も続くような異常な長期ローンを組むのを止めない。

経済が右肩上がりの時代であれば住宅を持つというのは良い選択肢だったのだが、今後は日本はどんどん人口が減少していくわけで、土地の資産価値は萎んでいく可能性のほうが高い。

今でもすでに地方では限界集落が問題になっており、最近は都会でも限界マンションが問題になりつつある。

限界マンションというのは、存続が限界であるほど老朽化してしまったマンションのことだ。

マンションは管理がすべてと言われているが、住民が高齢化して管理費が払えなくなっていくとメンテナンスが滞り、マンションは急激に古くなって見た目もひどいものになる。

また給排水管も老朽化して水漏れや赤錆だらけになって使い物にならなくなっていく。

長期ローンでマンションを買って「苦しいローンが終わったときは建物が巨大なゴミのようになっていた」というのでは泣くに泣けないが、実際にこれが日本の現実になりつつある。

それでも長期ローンを払い終えたというのは幸運なことだ。最近は、長期ローンが払えずに破綻してしまう人も静かに増えている。


風俗に堕ちなければやっていけないほどの生活苦


2016年6月、私は大塚のデリヘルに勤める40代の風俗嬢にインタビューしている。(ブラックアジア会員制:身長180センチの女(1)彼女はどんな女性だったのか?

彼女は結婚して子供を2人持つ主婦だったのだが、彼女が風俗の世界に入り込まざるを得なかったのは、住宅ローンの重圧からだった。

子供の教育費に想定以上の金がかかり、そこに不景気による夫の給料削減も直撃した。

住宅ローンは何とか滞納せずに払っていたが、電気代のような公共料金を支払うことができなくなり、住宅ローンとは別の借金も増えていった。

それを夫に話しても、夫は真剣に耳を傾けることもなく「払っておいて」と言って問題から顔を背けるばかりだったという。そこで彼女は「夜勤の事務仕事に行く」と言って、家族に内緒で風俗で金を稼ぐようになっていたのだった。

彼女は風俗の仕事を決断したが、もし彼女がそうしなかったらどうなっていたのか。彼女の住宅は銀行に取り上げられ、彼女の家族は借金を背負ったまま路頭に迷っていただろう。

つまり、彼女は「住宅ローン破綻」していたことになる。

彼女は風俗で働くようになって劇的に生活が楽になったというのだが、それでも住宅ローンの重圧から逃れられたわけではなく、生きるのに必死だ。

彼女はあと20年も苦しまなければならないのである。

住宅ローンの破綻者は年間で約1万人ほどいると言われている。2014年の司法統計では、自己破産した人たちの中で住宅ローンが原因だったのは16%ほどである。

破綻した人は本当に万事休すの状態に追い込まれた人であるが、実際には破綻していないものの、彼女のように妻が風俗に堕ちなければやっていけないほど追い込まれている人は多い。

2013年頃から、住宅任意売却の専門家のところには「破綻しそうだ」という相談が倍増しているということなのだが、住宅ローンを取り巻く状況はかなり悪化している。

2つの危険な問題が同時並行で進んでいる日本


日本で住宅ローンが危険なものになったのは、2つの問題が同時並行で進んでいるからだ。

1つは、少子高齢化で日本の土地神話は事実上「終焉を迎えた」ことである。

土地を持っておけば資産価値が上がるという土地神話は高度成長期の時代の話である。そんな時代は1980年代で終わり、バブル崩壊と共に日本の土地神話は死んだ。

2つは、グローバル化による弱肉強食の資本主義が日本社会をも覆い尽くすようになっていき、労働者は企業から見ると明らかに「使い捨て」になっていることである。

年功序列も終身雇用も終わった。企業は世界的な競争に巻き込まれてコスト削減をして競争力と会社の体力をつけることを余儀なくされている。

コストの大半は人件費なのだから、給料の削減を進め、余剰人員はどんどんリストラするのが企業の正しいあり方となった。

30年以上もの住宅ローンを組むというのは、「給料は増え続け、会社は定年まで勤め、退職金はたっぷりともらう」という前提で組まれるものが多いが、その前提がもはや成り立たないのが日本社会なのである。

「労働者使い捨て」の環境を整えたのは、小泉政権で経済財政政策担当大臣と金融担当大臣をしていた竹中平蔵だ。(正社員をクビにしやすい社会になったら、儲かる男がいる

それまで日本人はずっと「終身雇用」が続くと思い込んでいたが、その環境は2000年代に徹底的に破壊された。

この頃に住宅ローンを組んだ人が、給料削減、リストラ、失業、退職金削減の動きに怯えている。

30代ならまだ何とかなるのかもしれないが、40代、50代にもなってリストラされたら、次の職場でこれまでと同じくらいの給料がもらえるというのはあり得ない。給料が半減してもおかしくない。

にも関わらず、住宅ローンはどこまでも続くことになる。

時代が変転する時期は、先を見通すことができない


人は長い人生で必ず苦難に落ちる時期がくる。自分が病気になるかもしれないし、配偶者が病気になるかもしれない。子供がいれば子供が病気になる可能性もある。

リストラされるかもしれない。離婚するかもしれない。会社が倒産するかもしれない。倒産しなくても会社が破綻寸前となって給料も退職金も減額されるかもしれない。

これは中小企業だけの話ではない。今や名だたる大企業でさえも少し環境が変わるとすぐに斜陽と化す時代なのである。

10年前、日本の家電メーカーが総崩れになると想像していた人は誰もいない。シャープが企業として成り立たなくなり、東京電力や東芝や三菱自動車が存続の危機に陥るとは誰も思わなかったはずだ。

これらの企業は、危機に陥るたびに大量の社員をリストラして生きながらえているのだが、ここで放り出された「一流企業の社員」が住宅ローンを組んでいた場合、一挙に生活設計が狂ってしまったはずだ。

時代がどんなに順風満帆な時でも30年後を見通すのは容易なことではない。まして時代が変転する時期に入ると、ますます先を見通すのが難しくなる。

時代が見通せなくなるだけでなく、自分の人生そのものも見通せなくなるのだ。

先が見通せない中で、「30年後も今の生活が続いているだろう」という楽観的予測の元で長期の住宅ローンを組むというのは今や自殺行為にも等しいものになっている。

自殺行為というのが言い過ぎだというのであれば、「あまりにもリスクが高すぎる」と言い換えてもいいかもしれない。

住宅ローンを組む人というのは堅実な人が多い。その堅実な人のワナとなるのが住宅ローンなのである。

しかし幸か不幸か、長期の住宅ローンを組んで破綻する人は今後は劇的に減っていくことが予測されている。

その理由は、人々が尋常ではない長期ローンの危険性に目覚めたからではない。長期ローンを組めないほど、収入が低かったり不安定な人が増えるからだ。



先が見通せない中で、「30年後も今の生活が続いているだろう」という楽観的予測の元で長期の住宅ローンを組むというのは今や自殺行為にも等しいものになっている。


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