2016-06-13

たった1人で50人を殺害し、50人を負傷させることができる


2016年6月12日午前2時、アメリカ南部フロリダ州オーランドのナイトクラブ「パルス」でアメリカ史上最悪の銃乱射事件が発生している。

このクラブはゲイ(同性愛者)たちが集まるクラブで、事件当時は「プライド月間」の同性愛イベントがあって、320人近い人々が店内にいた。

ここに銃火器を満載にしてやってきたオマル・マティーンという男が銃を乱射しながら突入し、建物内部で人質を取って立てこもった。

建物内部ではオマル・マティーンはライフルや拳銃を人に向けて撃ちまくっていたので、内部は血の海になっていた。

3時間の立てこもりの中、警察の特殊部隊との銃撃戦となってオマルは死亡するのだが、最終的に50人を死亡、53人を負傷させる大惨事となった。

これは、2007年に起きたバージニア工科大で23歳の韓国人チョ・スンヒが起こした乱射事件の33人殺害を上回る規模となっている。


ISISは自国でテロを引き起こすことを奨励している


オマル・マティーンは29歳のアフガニスタン系アメリカ人で、現在はポート・セント・ルシーに居住していた。

両親はどちらもアフガニスタンからの移民で、オマル・マティーン自身はニューヨーク生まれのアメリカ人だった。

2013年にテロリストの捜査を受けていたこともあると言われているのだが、その当時はテロリストとの関連性はなく捜査は継続されなかった。宗教心はそれほど強くなく、目立たない存在だったという。

オマル・マティーンは立てこもりの間、警察の無線でISIS(イスラム国)へ忠誠を誓った声明を発表したとされている。

これを受けてISISを支持するサイトでオマル・マティーンへの賞賛で溢れ、「オマル・マティーンはISISの戦闘員である」とメッセージが書き込まれたという。

ISISは世界中に散らばるイスラム教徒の一匹狼たちに自国でテロを引き起こすことを奨励している組織である。ISISの幹部アブ・ムハンマド・アル・アドナニは、次のようにテロを煽り続けていた。

「憤怒の中で自決しろ! テロを引き起こすためには手段を選ぶな。爆弾でも、ナイフでも、銃弾でも、車でも、岩でも、あるいは自分の靴でも、拳でも、何でも使ってテロを起こせ。そして、十字軍の人間たちを殺した上で自決しろ!」

この"Die in Your Rage!"(憤怒の中で自決しろ!)はフランスやベルギーで巨大なテロ事件となって噴出しているが、アメリカでもすでに「憤怒の中で自決しろ!」に影響を受けた人間がテロを起こしている。

アメリカでは2015年12月2日、カリフォルニア州サンバーナディーノの福祉施設で銃が乱射され、14人が死亡するという事件があったが、この事件もISISの影響だった。

この事件は、パキスタン系のイスラム教徒サイード・ファルークという男が引き起こした事件だった。(サンバーナディーノ銃乱射。暴力は伝染病と同じで蔓延する

「見ろ。俺の息子の前であんなことをしている」


オマル・マティーンは2013年に、アメリカ国内でイスラム過激派を支持する発言を行ったとして聴取を受けているが、オマル・マティーンは精神的な共鳴だけでイスラム過激派との接点はなかった。

しかし、イスラム過激派への心理的な傾斜はその後もずっと続いていたようで、アメリカ国内でイスラム的な価値感をずっと育んでいたようだ。

このオマル・マティーンをテロに向かわせたのは何だったのか。それは、この事件を起こす数ヶ月前に3歳の息子ら家族と一緒にフロリダ州マイアミにいた際に起きた出来事だったという。

そこでは海岸でふたりの男性が自分の息子の目の前でキスをしていた。それを見たオマル・マティーンは「見ろ。俺の息子の前であんなことをしている」と激高したという。

アフガニスタンやISISが支配するシリア・イラク一帯は、同性愛者に対しては死を持って償わせるほど、同性愛を嫌悪している地域なのだが、オマル・マティーンは「自由の国」アメリカで暮らしながらも、価値感は乖離していたようだ。

もっとも、アメリカでも同性愛者に対する許容度は濃淡があって、アメリカ南部になればなるほど同性愛には懐疑的であり、批判的であるという特徴もある。

こうした中でオマル・マティーンは、激しい憎悪を同性愛者に持つようになり、その憎悪が募ってナイトクラブ「パルス」の襲撃につながった可能性が高いと彼の両親は話す。

だとすれば、この事件はイスラム過激派のテロ事件というよりも、むしろ同性愛者に対する憎悪犯罪という性格を帯びる。

オマル・マティーンはこの事件を起こす前まで、世界最大規模の警備会社「G4S」で勤務していた。2007年9月10日から働いており、業務の一環として銃の携帯が許可されていた。

職業柄、銃火器の扱いには非常に強く、それが銃乱射事件としては最悪の犠牲者を出すことにつながった。

自衛のための銃は、所持者の殺意で凶器になる


この事件は「ISIS絡みなのか」「同性愛嫌悪なのか」のどちらの視点で見るかで人によって意見は違ってくる。しかし、いずれにしても浮かび上がって来るのは、アメリカの銃の蔓延の異常さである。

この事件の前2016年6月10日には、クリスティーナ・グリミーという22歳の女性歌手がコンサート会場で撃ち殺された事件が起きていたばかりだった。

頭部を撃たれて、ほぼ即死の状態だったと言われている。犯人はその場でその拳銃で自殺している。

それから2日後にオマル・マティーンによる史上最悪の銃乱射事件が起きているのである。

オバマ大統領は常々、銃規制を訴えてきたが、現実のアメリカでは銃の販売が野放しであり、オバマ大統領の銃規制に反対する国民も多い。

「自分の身は自分で守る」という伝統が息づいて女性までもが銃を持って自衛する。そんな国で銃を規制するというのは、大統領でさえも難しいことなのである。

この乱射事件でアメリカにおける銃の販売は減るのだろうか。いや、逆に増える可能性が指摘されている。

今までのケースではアメリカで凄まじい銃乱射事件が起きるたびに、銃の売上は記録破りに伸びるという現象が起きているからである。

乱射事件が起きるたびに「もっと真剣に自衛しなければ」という意識になって、誰もが強力な銃火器を買うので、それがまた銃の蔓延につながっていくのである。

オマル・マティーンは自家用車に銃火器を満載にしてナイトクラブ「パルス」に乗り込んでいるのだが、この男が持っていた銃火器は違法に所持していたものではない。正式なルートで手に入れた合法的なものだった。

自衛のために所持している銃であっても、所持者が何らかの理由で誰かに殺意を持ったら、それは容易に殺人のための凶器と化す。

アメリカはこれからも銃乱射事件を止めることはできない。たった1人で、50人を殺害し、50人を負傷させることができる。それがアメリカ社会の特徴だ。



オマル・マティーン。乱射事件が起きるたびに「もっと真剣に自衛しなければ」という意識になって、誰もが強力な銃火器を買うので、それがまた銃の蔓延につながっていく。


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