2016-06-01

2050年には年間で3秒に1人が伝染病で死ぬ世界になるのか


2016年5月26日、アメリカの米疾病管理予防センターは、ある「特別な細菌」に感染した患者がアメリカで初めて出たことを発表している。それはどんな細菌だったのか。「知られている抗生物質すべてに耐性を示すスーパー耐性菌」だった。

「もはや既存の抗生物質が効かなくなる」

抗生物質が効かない「スーパー耐性菌」が生まれるというのは、以前から報告されていた。いよいよ拡大感染が現実的になりつつあるのかもしれない。

世界初の抗生物質は「ペニシリン」だが、このペニシリンが世界に行き届くようになったのが1942年以降だ。

それまでは、破傷風も、肺炎も、赤痢も、チフスも、淋病も、梅毒も、治らない病気だったが、これがペニシリンで治るようになった。まさにペニシリンは奇跡の薬だった。

さらにストレプトマイシンが発見されてからは、結核も治るようになった。抗生物質は、人類を苦しめていた多くの病気を根治させた。

私たちが健康に生きられるのは、抗生物質があるからであり、もし人類が未だ抗生物質を発見していなければ、私たちの寿命はそれこそ40年もなかったかもしれない。

ところが、スーパー耐性菌の出現で、「もはや抗生物質が効かなくなる」というのである。


抗生物質が効かない性病はすでに出現している


もちろん、確実にそうなるわけではない。奇跡的に何らかの新薬が開発されて人類は再び病原菌に対して勝利するかもしれない。しかし、人類が負ける時が来る可能性もゼロではないところに不気味さがある。

抗生物質が効かない理由は、はっきりしている。

全世界で、多くの医者が中途半端な抗生物質の使い方をしたり、患者が根治しないまま治療を途中で止めて、菌が生き残って抗生物質に対して抵抗力を持つようになったのだ。

それも、1つの抗生物質だけでなく、様々な抗生物質に耐性を持つようになった。こういった菌を「多剤耐性菌」と呼ぶようになった。

多剤耐性菌は毎年毎年、世界中のあちこちで発見されている。

2009年には、インドで治療を受けた多くの外国人が多剤耐性菌に感染したまま自国に戻って問題になった。

日本でも抗生物質が効かない淋菌が2010年に京都で見つかったりしている。いわゆる「スーパー淋菌」である。風俗嬢の喉に潜んでいた。

「抗生物質が効かない性病」は、いつか出現するのではなく、もうすでに出現しているのだ。

現在の淋病や梅毒は、もうすでにペニシリンでは効かなくなってしまっているが、これは長い時間をかけて生き残った菌が耐性を持ったからである。

だから、現在使われている抗生物質のすべてに耐性を持った「スーパー耐性菌」が世界のどこかで生まれて拡散した瞬間、人類は菌に負けることになる。

世界の総人口は2016年現在の段階で73億人を超えたと言われている。人口増加はこれで頭打ちになったわけではなく、これからもどんどん増えていく。

しかし、人口増加は基本的に現代の環境がそのまま維持できればの話だ。何らかの環境の変化が起きて、人間がそれに対応できなかった場合、人類は一気に死滅する。



人類を様々な病気から救い出した「奇跡の薬」、ペニシリン。すでにこの抗生物質は淋病にも梅毒にも効かなくなっている。

最終兵器が効かなくなったら、もう次がない


環境の変化と言うと、私たちは地球温暖化で食料が取れなくなったとか、大地震・大災害が襲いかかって未曾有の被害を出したというような想像をする。

しかし、それだけではない。もしかしたら抗生物質が効かない多剤耐性菌がパンデミックを引き起こし、人類を絶滅に追いやって行くかもしれない。

院内感染で拡散している多剤耐性菌もある。カルバペネム耐性腸内細菌(CRE)と呼ばれるバクテリアがそうだ。

主に抵抗力の弱い老人が罹るのだが、原因がこのCREバクテリアであると分かっても、抗生物質が効かないので治療ができない。そのようなバクテリアが静かに脅威を振るっている。

無理に治療しようと、いくつかの抗生物質を複合的に与えて治療しても、それで菌が生き残ったら、それが凶悪な多剤耐性菌になるのだ。

こうやって抗生物質が効かない病気が全世界に拡散していき、今後は非常に危険な世界になる。

問題は、パンデミックを引き起こす多剤耐性菌が生まれると、他の菌まで多剤耐性菌になってしまうということだ。

いくつかの異なる菌が、多剤耐性の遺伝子(プラスミド)を共有するというしくみを作っているからである。いずれは多剤耐性菌が爆発的に流行して、抗生物質が完全に役に立たない時が来る。

かつての私たちが知っている多くの抗生物質は、もうことごとく敗れている。

コリスチンやリネゾリドという「人類の最終兵器」とも言える抗生物質もあるが、これが効かなくなったら、今のところ「もう次がない」とも言われている。

2050年には年間で3秒に1人が伝染病で死ぬ世界に


もし、人類があるとき抗生物質という武器を失った時、悲惨なことになってしまう。

破傷風も、肺炎も、赤痢も、チフスも、淋病も、梅毒も、結核も、すべてが多剤耐性菌として、再び治らない病気になってしまう。

スーパー淋菌が出てきたように、スーパー破傷風も、スーパー肺炎も、スーパー赤痢も、ありとあらゆる病気が凶悪化していくかもしれない。

本当にそうなったとき、世界は「治らない感染症」が蔓延して悲惨なことになるのは想像できる。

実はこうした問題をイギリス政府が独自に調査していた。国際的エコノミストのジム・オニール氏が2年にも及ぶ調査・研究を報告した。

これをAFP通信やBBCが取り上げたのが2016年5月のことなのだが、その結果はイギリス人のみならず世界を震撼させるのに充分だった。

「2050年には年間で3秒に1人のペース(年に1000万人)で死ぬレベルの伝染病が流行する」

「通常の外科手術・帝王切開・臓器移植や免疫療法などは、耐性菌の感染により、命の危険を及ぼすレベルの伝染病が広がる恐れが高いため、行なわれなくなる」

「出産は非常に危険な行為とみなされ、子供の数が激減する」

医学の進歩が人類に恩恵を与え続けるのではなく、逆に医学の進歩が「スーパー耐性菌」を生み出し、それが人類に逆襲して悲惨な未来を生み出す可能性が出てきているのだ。

2050年にいきなりそうなるという話ではない。

すでに「スーパー耐性菌」は世界中のあちこちで誕生しているのだから、こうした現象が数十年かけてゆっくりと人類を追い詰めていくのだ。



多剤耐性菌は日本でも発生しており、2008年から2009年には帝京大学病院で46人が感染して9人が死亡するという事故も起きた。


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