2016-05-14

求人詐欺。「聞いていた条件と違う」が蔓延する日本の社会


正社員で釣っておきながら、採用時に突如として「契約社員」扱いにされる。月給30万円というのは、実は残業代込みの計算だっりする。

あるいは、最初は非正規雇用だがいずれ正社員にすると言いながらずっと非正規雇用で働かせる……。

今、日本の社会で「求人詐欺」が蔓延するようになっているという。ハローワークでも多くがこうした「騙し」の求人が増えていると言われている。

求人と中身が違っている。これは言ってみれば企業が雇う人を騙す詐欺行為だ。

ところが、今のところは虚偽の求人を処罰する規定はなく、多くの人は雇われてから「こんなはずではなかった」と思いつつも、屈辱の中で働くしかなくなっている。

「嫌なら辞めればいい」と言われても、必死の思いで入った企業をおいそれとは辞められる人はいない。だから、求人詐欺に遭ってもほとんどが泣き寝入りになる。

そして、泣き寝入りの中で、苛酷な労働条件を押し付けられて、心身が壊れたら「使い捨て」にされる。今後、日本社会で深刻な問題となるはずだと言われているのが、この「求人詐欺」である。


基本的にブラック企業のスタイルは「使い捨て」だ


「求人詐欺」は、仕事の条件を労働者に限りなく不利な条件にするために行われるものである。労働者に不利な条件で契約を結ぶというのは、逆に言えば企業にとって有利な条件になるということだ。

企業は雇った人間を奴隷か何かのように徹底的こ酷使し、自分たちの良いようにこき使い、雇っている人間が壊れたら、歯車のように捨てて、また新しい人間を雇う。それを繰り返して、事業を運営する。

こうした企業が、今では「ブラック企業」と呼び捨てにされるのだが、今の日本社会ではこのブラック企業があちこちに存在するようになっている。

しかし、最低賃金でサービス残業を強いて使い捨てにされると分かったら、最初から人は来ない。そこで、ブラック企業はありとあらゆる方策で応募してきた人を騙す。

基本的にブラック企業のスタイルは「使い捨て」だ。雇った人間は、最初の半年から1年くらい持てばいいと考えている。

そのため、こうした企業の求人広告では、風俗女性のフォトショップ・マジックと同じくらいの「粉飾」が行われる。

「頑張れば月40万円稼げます」と謳うのは、土日祭日も休みなしで平日も12時間以上働いて、やっと40万円稼げる、という意味を含んでいる可能性がある。

あるいは「頑張れば」というのは実はノルマのことで、ノルマが達成できなければ死ぬほど働いても低賃金のまま、という労働条件の可能性もある。

それだけではない。「月40万円稼げます」というのは、実は経験者の話で未経験者は最低賃金だというケースもある。

その仕事に経験があるので入ったら、違う職種に回されて未経験者として扱われて死ぬほど働かされることもある。

それでは「残業なし」とあればいいのか。いや、「残業なし」と書かれていても、契約期間の数ヶ月は残業がないだけで、それ以後は残業しなければパワハラに遭うようなシステムになっている可能性もある。

そうやって騙して「使い捨て」にする。こうした「求人詐欺」が増えている。

「おかしな雰囲気」を感じても考える余裕がない


雇われる側は常に立場は悪い。そして、仕事を探しているときは誰もが必死だ。

そのため、冷静な目で求人を精査する余裕はほとんどないし、求人広告や面接で何か「おかしな雰囲気」を感じても、それが何なのかを考える余裕もない。

その会社がおかしいかどうかよりも、自分が雇われるかどうかの方が大きな比重を占めているので、どうしても求人の内容を見る目が甘くなる。

だから、ブラック企業はそこにつけ込んで、「求職詐欺」を行い、それを成功させるのである。

「おかしな雰囲気」というのは、会社によって様々なだ。

渡辺美樹が創業したワタミ株式会社という会社があるが、この会社は、26歳の女性を入社2ヶ月で過労自殺に追いやって、世間からブラック企業であると糾弾された会社である。

ワタミでは「激しいパワハラ、低賃金、残業代未払い」と、ありとあらゆる社員使い捨てが行われていた。残業代を未払いにするために、社員の約7割を「名ばかり管理者」にしていたという実態も暴かれていた。

このワタミは会社の雰囲気が「非常に異様なもの」だったと言われている。渡辺美樹という男の経営理念は、すべて社員酷使を正当化するものだったからだ。

「365日24時間死ぬまで働け」「営業12時間のうち、メシを食える店長は二流だと思っている」「命がけで全部のお客様をみていたら、命がけで全部のお客様を気にしてたら、ものなんか口に入るわけない、水くらいですよ」

と渡辺美樹は「ワタミ理念研修会」なる場で言い放っていた。そのどれもが社員を極限まで酷使するものであることに気付くべきだ。

内定者に配布される質疑応答集でも、「そもそも、休日は与えられるものでしょうか。休日とは与えられるものではありません。休みがあっても、自分の意志で出勤する社員もいます」と書かれたあったという。

休日など取らずに働け、ということだ。

労働者は、利益にありつける立場ではないのだ


「こんなおかしな会社は、就職する前から分かって当然だ」と思うかもしれない。

しかし、それはきちんと仕事を持って冷静に考えられるからであると言われている。当事者の心理状態はそんな冷静なものではない。

安定した生活のために、一刻も早くちゃんとした仕事を見つけたいと必死になっている。だから、少しくらい「おかしな雰囲気」を感じても、まさか奴隷にされるわけではないだろうと前向きに考えて契約に進む。

しかし、ブラック企業はまさにやってきた人間を奴隷化するために求人を出しているのである。その奴隷化を正当化するために、カルトじみた理念を社員に強制する。それが「おかしな雰囲気」として現れる。

日本でこのような「求人詐欺」をして平然としている企業が増えているのは、社会が変わったからでもある。

一部の企業からは、すでに「人を育てよう」「長く勤めてもらおう」「従業員が愛着を持てる会社にしよう」という当たり前の精神が喪失してしまっている。

経営者は、「稼ぐが勝ち」「儲かればそれでいい」と思うようになり、そう言って憚らない。そのため、経営者自身が儲かるために何でもする。

ROE(株主資本利益率)重視の経営というのは、要するに徹底的に会社の利益を上げ、それを株主と経営者が総取りにする経営を意味する。

労働者は利益にありつける立場ではなく、酷使されて使い捨てにされる立場だ。

利益を上げるためには「従業員を奴隷のようにこき使えばいい」と経営者が割り切るようになっているのだ。そのために、まずは仕事を探している人が食いつく「エサ」を用意しなければならない。

そうしたエサが散りばめられた求人広告が「求人詐欺」なのである。資本主義は企業が乗っ取ったのだから、そこで雇われる人は奴隷化することになる。株主と経営者以外は、酷使される社会となる。



苛酷な労働条件を押し付けられて、心身が壊れたら「使い捨て」にされる。今後、日本社会で深刻な問題となるはずだと言われているのが、この「求人詐欺」である。

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