2016-04-26

「一生懸命に働いて、コツコツ貯金する」はもう報われない


日本人の貧困がクローズアップされ、その流れが顕著になっていったのは、まぎれもなく日本企業がグローバル化の流れに飲み込まれたことから始まっている。

「日本企業がグローバル化に飲み込まれた」
「それで日本人の貧困が目立つようになった」

この2つは密接にリンクしているのだが、その理由はそれほど難しいものではない。

グローバル化が突き進むにつれて、企業の取り巻く競争環境は苛烈になっていった。低価格を武器に中国や韓国が台頭するようになり、日本企業はコスト削減をシビアにしなければならなくなった。

さらにインターネット時代に入って企業環境は次々と変化していき、既存のビジネスが成り立たなくなっていった。新しい変化に対応するためには、新しい人材を即戦力として雇い、古い人材を捨てるのが効率的になった。

ゆえに企業は人材を捨てやすいアウトソーシングや非正規雇用に走るようになり、終身雇用時代では固定費として計上されていた人件費は、いつしか変動費へと移行するようになった。

企業は競争の激甚化によって、環境が変わればいつでも人を切れる態勢を作り上げてきたということになる。それは逆にいえば、企業に雇われる人はいつでも企業の都合でクビが切られる環境になったということでもある。


「年収100万円の方になっていくのは仕方がない」


さらに日本企業がグローバル化したことによって、日本企業もまたROE(株主資本利益率)が重視される経営へと変化するようになっていった。

現在の株主は創業者や銀行が株式を持つだけでなく、世界中の企業に投資するアクティブなヘッジファンドが自らの利益を求めて株式保有をするようになっている。

当然、自分たちが投下した資金が効率よく利潤を生み出すのが望ましいので、投資対象の企業が利益を出せていなければ遠慮容赦なく「何とかしろ」と口を出すようになる。

こうした「口を出す株主」をアクティビストと呼ぶ。現在の資本主義は株式《至上》主義なので、経営者はこうした株主の要求を無視することができなくなっている。

つまりグローバル化したことによって、アクティビストを含む株主たちが自らの利益のために投資した企業に対して株主資本利益率を上げるように要求するようになる。

そのために企業経営者は、利益を捻出するために極限までコスト削減に邁進することになる。

コスト削減の中でも最も大きなものは人件費である。これを固定費から変動費にして、ビジネス環境が変わったら一気にこの部分を捨て去ることでコスト削減を実現するようになった。

そして、生み出された利益は内部留保されて株式価値を向上させて株価を上げて株主を潤わせるか、もしくは配当を出して株主に還元するようになる。

企業が生み出した「利益」にアクセスするのは、従業員ではなく株主である。

かつて「企業は従業員のものか、株主のものか」という議論があったが、現在の資本主義のシステムからいうと、すでに企業は「株主のもの」になっている。

従業員は使い捨てであり、株主を富ませるために存在する部品のひとつに過ぎない。株主の利益のために、従業員の賃金は最低賃金ギリギリまで抑えられる。

それがよく分かるのが「ユニクロ」ブランドを持つファーストリテイリングの会長にして大株主である柳井正の言動だ。

「低賃金で働く途上国の人の賃金にフラット化するので、年収100万円の方になっていくのは仕方がない」と1兆6197億円の資産を持つ柳井正はことなげに言い放った。

株主の利益のために従業員の賃金が削減される社会


「日本企業がグローバル化に飲み込まれた」というのは、要するに株主が極限まで富むシステムになったということだ。

株主の利益のために従業員の賃金がどんどん削減されて低い水準で抑えられ、職の継続も不安定になった。

終身雇用と年功序列で守られていた日本人も2000年代から次々とリストラされるようになっていった。

次に雇われるときは非正規雇用になるか、激減した給料で働くか、いっそのこと起業するか、それとも路頭に迷うかの選択しかなくなっていったのだ。

もう今までのように、安定した賃金や継続した職に就くのが難しくなった。

社会システムが変わったので、高学歴であろうが、資格があろうが、能力があろうが、従業員でいる限り、そんなものは何の役にも立たなくなった。

会社が「ビジネス環境が代わったのでもう必要ない」と考えたら、その瞬間に切られるのだ。あるいは「能力がないから年収100万円」といわれるようになる。

日本人の賃金がどんどん低下していき、もはや若年層やシングルマザーという特定の層ではなく、中高年も高齢層もみんなまとめて貧困化しているのは、このような社会情勢が背景にあるからでもある。

日本人は労働人口の8割がサラリーマンであると言われている。この8割が苛酷な労働条件の中に放り込まれていく社会にすでにやってきている。

中間層が消えて貧困の方に落ちていく人が増えたとしても何ら不思議ではない。

そして、コスト削減によって利益を拡大していく企業の株主は、その利益を総取りして、ますます金持ちになっていく。株を大量に持っているかどうかで、人生が変わって来るのが現在社会のシンプルなシステムである。

「一生懸命に働いて、コツコツ貯金」の終わり


日本人のほとんどは、どこかの企業の従業員であることを選択する。そして、株を長期保有するという発想は絶対に持たず、郵便局や銀行に現金を貯めておく。

日本人で株式資産を持つ人口は成人層の約1割だけだといわれている。この割合は他の先進国と比べても異様に低い。日本人は昔から今も相変わらず「貯金のみ」である。

株式口座を持つ層は増えてきているのも事実なのだが、その多くは「売った買ったのギャンブル」を株でするための口座であり、こうしたことからも株式投資はギャンブルだと認識されて嫌われている。

しかし、現在の銀行の金利は普通預金金利で0.001%が基本である。1000万円以上の大口預金であれば0.01%になるのだが、それでも「0.01%」なのだから、いかに馬鹿げた金利であることが分かるはずだ。

この金利であれば、たとえば微かなインフレが起きただけでも貯金は確実に目減りしていく。

消費税は今後も上がっていく可能性があるが、消費税が上がれば物価が上がって出費が嵩むのは確実だ。現在のゼロ金利では、物価上昇を金利でカバーするということができない。

グローバル化によって賃金は抑制され、貯金は目減りし、金利はほぼゼロに近いパーセントで、国家財政の逼迫から年金や福祉も削減されるとなれば、日本人が次々と貧困に落ちていっても誰も驚かないはずだ。

すでに世の中は変わっているのだ。

昔ながらの「ひとつの会社で一生懸命に働いて、コツコツと貯金する」というスタンスが成り立たない世の中になっていることに気付く必要がある。

今までと同じようなことをやっていると、現代の弱肉強食と化した資本主義は日本人を踏み潰す。これからは新しい生き方を模索しなければならない。



昔ながらの「ひとつの会社で一生懸命に働いて、コツコツと貯金する」というスタンスが成り立たない世の中になっている。新しい生き方を模索しなければならない。

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