2016-04-25

今、「EUから離脱しろ!」と叫ぶイギリス人が増えている


イギリスはEU(欧州連合)を離脱すべきかどうかを2016年6月23日に国民投票で決めることになっている。

この動きはブリグジット(Brexit)と呼ばれている。「英国(Britain)がEUから離脱(Exit)する」という言葉を組み合わせて作られた造語でもある。

ブリグジットが行われるのかどうかは、現在のところ結論がはっきり見えていない。国民の間で賛成派と反対派が拮抗しており、行方が分からない。

もしEU離脱ということになると経済的にも大きな問題がイギリスに降りかかると懸念する人もいる。

一方で、今のイギリスの移民・難民問題や経済問題等の諸問題は、イギリスがEUと関わっていることから生まれていると考えて強硬にEU離脱を訴える人もいる。

当初は、EU離脱は現実的ではないという意見が多かったのだが、2015年になってから逆に「イギリスは離脱すべきだ」という声が大きなものになっている。

なぜなのか。それは中東シリア・イラクから押し寄せて止まらない「移民・難民問題」がイギリスでも大きな摩擦を生み出しているからだ。


EU諸国から押し寄せるイスラム系の移民・難民


アサド大統領と反アサド派による血みどろの内戦、あるいはISIS(イスラム国)による凄まじい暴力に席巻されて、もはや人間の住む場所ではなくなったのがシリアである。

建物はあらかた破壊され、インフラは停止し、暴力が渦巻き、大虐殺と飢餓が蔓延する危険な祖国を捨てて、シリア人はかつてない規模で周辺諸国に流れていった。

ヨルダン、トルコ、サウジアラビア等に散らばった難民たちはそこで難民キャンプに押し込まれ、苦難の貧困生活に堕ちていくのだが、すでにこうした難民キャンプは2015年初頭でキャパシティを超えていた。

そのため、収容不可能になった周辺国を迂回してヨーロッパに流れ込むようになったのが2015年の動きだった。

難民たちはトルコから荒れる地中海に出てギリシャやイタリアを目指したのだが、多くの女性や子供たちが荒波に飲まれて犠牲になった。

こうした中でドイツのメルケル首相が陶酔したかのように「2015年12月までに80万人の難民を受け入れる」と公言したために難民たちはドイツに殺到するようになった。

ところがあまりに押し寄せる難民でドイツ国内で激しい「反難民」運動が台頭するようになり、難民受け入れを表明したメルケル首相は批判の嵐に巻き込まれるようになった。(難民を大量に受け入れて大混乱していくドイツに未来はない

結局、ドイツは2015年に109万人近い難民を受け入れたのだが、身動きできなくなって難民受け入れをあっさり撤回する羽目に陥った。

足止めを食った難民たちや、いったんドイツで難民として受け入れられた難民たちの一部はイギリスに流入するようになっていき、イギリスでもドイツと同様の混乱が起きるようになった。

さらにイギリス国民を憂慮させたのは2016年3月22日に起きたベルギー・ブリュッセルで起きたイスラム過激派による同時多発テロである。(ベルギーで起きている同時多発テロと、その深刻な背景とは

イスラム系移民・難民がEU諸国から大量に流入するイギリスもベルギーのようになっても不思議ではない。

「EUから離脱しろ!」という声が爆発的に広がる


EUは「欧州連合」と訳されるが、EU諸国内で通貨を統合して関税を撤廃することによって欧州全体を大きなひとつの巨大な経済圏にするというのが当初の目的であった。

経済がうまく回っているときは問題はなかった。

ところが、2008年のリーマン・ショック以降、グローバル経済が激震して成長が止まると、各国の軋轢が表面化して危険な対立を見せるようになった。

次第にドイツ・イギリス・フランスのような欧州の大国が、ギリシャ、ルーマニア、ラトビア、リトアニア、ハンガリー等の貧国を養う構図になっていったのだ。

富裕国の国民から見ると、EUに加盟していることによって、自分たちの税金が「働いているのか働いていないのか分からないような貧困国」の国民の救済に回っているという不満が噴出する。

貧困国から見ると「もっと働け、もっと緊縮しろ」と常に上から目線で「命令」されて、自分たちがEUの二級国民のように扱われて不満が噴出する。

そこに移民や難民が大量に入り込んで来るようになり、国境を越えて自由に行き来して好きなところに住み着いて治安が悪化するようになった。

あげくの果てに、イスラム系の移民・難民の中にはテロリストも混じるようになり、EUのあちこちで巨大なテロを引き起こすようになっていった。

EUという枠組みの中でより豊かになれるはずだったのに、実際には税金が自分たち以外のところに使われて福祉が衰弱していき、さらに治安も悪化、市場も縮小していった現実を前にして、EUに懐疑的になる人々がどんどん増えていった。

その結果、イギリスでは「EUから離脱しろ!」という声が爆発的に広がり、2016年6月23日の国民投票の結果が見えない状況になっているのである。

結束に向かっているというより破綻に向かっている


2016年4月22日、アメリカのオバマ大統領はイギリスで「EUにいることで影響力や経済力などを高められる。イギリスがEUに残留することを望む」と発言した。

アメリカはイギリスがEUに残留することによって台頭するドイツを牽制する目的がある。

アメリカは2015年にドイツの自動車産業をエンジンの性能に不正があるとして告発して窮地に追いやっているのだが、リーマン・ショックで傷ついている間に台頭してきたBRICs諸国やEU諸国を叩きのめす戦略を2014年から開始している。

アメリカは明確に、ロシア・中国・ドイツを潜在的に危険な国家であると認識し、その影響力を削ぐために動き出しているのである。

EUをドイツの自由にさせないためにはイギリスがEU離脱しない方が良いというのがアメリカの判断だ。そのため、「EUに残留することを望む」という発言につながったと解釈されている。

しかし、キャメロン首相は「パナマ文書」で税金逃れをしていることが発覚して窮地に陥っており、イギリス世論はむしろ反キャメロン、反EUに偏りつつあるといわれている。

そのためオバマ大統領の発言も、あからさまな内政干渉であるとして、逆に大きな批判がイギリス国内で湧き上がった。

最終的にイギリス国民がどのような結論を出すのかは分からないのだが、このような騒動が起きること自体がEUという理念の衰退を物語っている。

イギリスでのブリグジットは、やがてフランスやイタリアやオランダのような国々に波及していったとしても何ら不思議ではない。

EUは結束に向かっているというよりも、破綻に向かっているといった方が正しい。グローバル経済の悪化は今も続いており、EU諸国だけが何らかの成長をすることは望み薄だ。EUを取り巻く状況はより悪くなる。



追い詰められつつあるキャメロン首相。イギリスは欧州連合(EU)を離脱すべきかどうかを2016年6月23日に国民投票で決めることになっている。どちらに転ぶのか、誰も分からない。

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