2016-03-12

自分を極大化させるレバレッジは、いずれ人生を破滅させる


ドーピングが問題視され、検査はどんどん厳しくなっていく。にも関わらず、アスリートが「禁断の薬物」に手を出すのは、大きな理由がある。

それを使うことによって身体のパフォーマンスが劇的に向上し、勝利をつかめる確率は大幅にアップするのだ。

アスリートにとっては用意された舞台で勝利をつかむというのは何よりも大切なことであり、そのプレッシャーは並大抵のものではない。

もし身体的パフォーマンスを「劇的」に向上させる薬物があったなら、それに手を出してでも勝利をつかみたいという心境に陥るアスリートがいても不思議ではない。

テニスのマリア・シャラポワも禁止薬物とされる「メルドニウム」で陽性反応が出て、故意だったのか過失だったのかで揺れている。

その結論はともかく、「メルドニウム」を飲めば身体能力が向上するという事実は間違いない。

マリア・シャラポワがこの薬物を恒常的に取っていたということは、逆に言えば身体能力は薬物によって増強されていたということでもある。


自分の能力を「レバレッジ」する存在がある


「パフォーマンスを劇的に向上したい」という気持ちを持つのは別にアスリートだけの話ではない。ほとんどの人は向上心を持っている。何とか自分の能力を少しでもアップしたいと考えている。

どんな世界にしろ、能力をアップするには対象に打ち込む真摯な姿勢が必要になる。

知能指数が高い低いよりも、どれだけ対象に時間をかけたかで成功できるかどうかが測れると主張するジャーナリストもいる。(知能指数がいくら高くても、社会的に成功するわけではない

しかし、こうした「長い時間をかける」という下積みと鍛錬は非常にキツく、厳しく、苦しいものである。

人間は誰でもつらいことや面倒なことは避けたいと思うから、いくら好きなことであっても長い時間をかけて延々と下積みをしたいと考える人は少ない。むしろ、何とかしてそれを避けたいという気分になる人も多い。

あるいは、長い鍛錬をしてもスランプに陥り、どうしても能力を向上できないで焦りを感じる人もいる。自分自身に苛立ち、能力を発揮できないことに怒りすら感じるのである。

そこに、自分の能力を「レバレッジ」する存在があると知ると、能力を向上させたいと願う人々はそれを渇望するようになる。

アスリートは身体能力をアップさせる様々な薬剤に手を出す。それは自分の能力を劇的に向上させてくれる凄まじい威力を持ったものである。

ボディービル系のアスリートはアナボリック・ステロイドと縁が切れないが、その理由は日々の鍛錬だけでは手に入らないような想像を絶する筋肉が確実に手に入るからである。

アナボリック・ステロイドには大きな副作用があるのだが、それでも多くのボディービルダーはそれを手に入れて能力に過大なレバレッジをかける。

眠気覚ましのコーヒーや甘い物やカフェイン飲料


レバレッジというのは、「テコの原理」を指す言葉である。人力では動かせない重い岩も、テコの原理を使えば簡単に動かせることから来ている。

人間の身体能力を向上させるには、さしずめある種の薬物は大きなレバレッジとなるのだ。

疲労を消失させる違法な薬物もある。それが覚醒剤やコカインである。

覚醒剤が社会に蔓延するのは、それが快楽をもたらすというだけではなく、どんなに疲れていても瞬時に意識と肉体を「覚醒」させて元気を取り戻す作用があるからだ。

清原和博氏は覚醒剤に堕ちていったが、絶対に勝たなければならないアスリートだけでなく、疲れたと言ってられない状況にある労働者にも覚醒剤が蔓延する理由がここにある。

覚醒剤もまた身体能力を一時的に向上させてくれるものだったのである。

さすがに覚醒剤は違法なので躊躇する人は多くても、眠気覚ましにコーヒーや甘い物やカフェイン飲料を拒否する人はいないはずだ。これらもソフトなドーピングであり、レバレッジである。

栄養ドリンクを一気飲みしないとやってられないという人も多いので、こうしたドリンク剤を供給する製薬会社は大儲けしている。

現代社会は時間で区切られた社会であり、人は誰でも決められた時間にパフォーマンスを見せなければならない。そのため、多くの人は何らかの薬剤でレバレッジをかけないとやってられないような社会になっている。

ただ、レバレッジで手に入れた能力は身体を次第に疲弊させていき、将来は深刻な副作用が待っている。ハードなレバレッジをかければ、副作用もハードになる。

ドーピングが禁止されるのは、そうやってレバレッジをかけて手に入れた能力はフェアではないということもあるのだが、将来の副作用が深刻で人生を転落させるからでもある。

借金というレバレッジは、長期投資には馴染まない


「レバレッジをかける」というのは身体能力だけの話ではなく、経済的な行為にも発生する。経済的にレバレッジをかけるというのはどういう意味か。

それは「他人資本を使うことで自己資本に対する利益率を高めること」と説明されている。要するに、借金をして何かに投資することで見返りを極大化させるという行為を「レバレッジをかける」というのだ。

FX(為替証拠金)でも、借金のことをまさにレバレッジという。レバレッジをかければ、レバレッジ分の差額を利益として手に入れることができるのだが、見込みが外れると元手は一瞬で消失する。

株式でも信用取引で元手の3倍はレバレッジをかけられるが、見込みが外れてある金額を下回ったら、追証と言って元手(保証金)を追加投入しなければならないのである。

それが払えないと、強制決済された上にマイナスが解消できないと、その分は別途請求になる。

額が膨大だと一生借金を返済するだけの人生になる。これは、ドーピングしたアスリートが副作用で一生を台無しにするのに似ている。

借金というレバレッジによる投資や投機は、当たれば劇的なのだが、外れれば悲惨なことになる。借金が過大であればあるほど悲惨さは際立つ。

そのため、信用では何としてでも勝たなければならないのだが、世の中は往々にして「予期しない出来事」が突如として襲いかかってタイミングが外れる。

長期であれば吸収できる「予期しない出来事」も、借金を抱えていると返済期限があるわけで、返済の方を優先しなければならない。借金というレバレッジは、長期投資には馴染まない。

分相応なレバレッジ、極端なレバレッジ、違法なレバレッジは、一時的に自分を極大化できるように見えても、そのさらに先は人生を破滅させるものになる。



分相応なレバレッジ、極端なレバレッジ、違法なレバレッジは、一時的に自分を極大化できるように見えても、そのさらに先は人生を破滅させるものになる。

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