2016-03-10

企業が生き残るために人々が犠牲になる社会が継続していく


東芝は2016年3月期決算で7100億円の連結最終赤字を見込んでいるのだが、この空前の赤字を前にして1万人のリストラを強行する。

歴代社長の失策で会社が存続の危機に陥っているとき、会社が生き延びるためにはリストラして身軽になるしかないと経営者は考える。

分かりやすく言うと、コストを削減するために「雇っている人を放り出す」しかない。そこで、企業はリストラに邁進する。

かつて日本企業は終身雇用だったのだが、もう名門である東芝でさえもリストラに走る時代になっているのである。シャープもまったく経営改善の見込みがなく、リストラを繰り返しながら、台湾の企業に買収されようとしている。

2015年に入ってからグローバル経済が失速し、特に中国の経済失速がひどい状況になっているのだが、これによって中国に深く関わってきた日本企業も同時に失速してリストラが拡大するようになっている。

「売上が減っていく以上、人を雇い続けることはできない。解決するためにはリストラするしかない」

そこで多くの企業が生き残りをかけて派遣労働者を切り捨て、それでもダメなら社員を切り捨てる。経営不振になれば、経営者はどんどんそうする。


個別に見ると正しいが、全体を見ると間違っている


これは一見正しい行為に見える。

しかし、すべての企業がそれをやり始めると、社会は失業者の嵐になっていく。そうすると、ますます物を買える人がいなくなって内需が縮小し、企業はさらに厳しい立場に追い込まれていく。

景気が悪くなったから従業員をどんどんリストラしていくというのは、企業として正しい行為に見えるのだが、全体を考えると状況をより悪化させていく。

現に、日本ではリストラされていく人々が増え、消費を控えるようになったために、イトーヨーカ堂を抱えるセブン&アイ・ホールディングスも、傘下のそごう・西武・イトーヨーカドー等の店舗を次々と閉鎖してリストラに走っている。

リストラが増えて内需が減少し、モノが売れなくなったので、玉突き状態のようにリストラが広がっているのである。

そうすると、政府も税収が減るのでさらに消費税を上げるしか方法がなくなり、それがさらに人々の消費を減退させ、よけいに景気が悪化して、リストラがもっと深刻化する。

東芝は自分が生き残るためにリストラしているのであって、全体を考えているわけではない。シャープもセブン&アイ・ホールディングスもそうだ。

一企業の戦略としてはリストラして身軽になるというのは、正しい戦略なのだが、全体を見るとそれが日本社会を追い詰めることになるので、結果的には自分に不利益が戻ってくる。

政府もわざわざ景気を悪化させるために消費税を取り入れたいわけではない。財政を健全化するためにそうしたいと考えている。しかし、それによって内需が縮小するのだから、結果的に政府の首を絞めることになる。

個別に見ると正しいことをしているのだが、全体を見ると間違った方向に突き進んでいるというのは、まさに典型的な「合成の誤謬」である。

外国人から見ると普通の会社ですらも「ブラック」


今の日本社会のみならず、全世界がグローバル化した中で陥っているのが、この「個別に見ると正しいが、全体を見ると間違っている」という状態だ。

資本主義は、いつの間にか人間を富ませるためのシステムではなく、企業を富ませるためのシステムに転換してしまった。人間よりも企業が生き延びることが優先されるようになったのだ。

そのため、そこで働く従業員は企業の都合によって「使い捨て」となり、企業が生き延びても、従業員は生き残れないという状況が発生する。

企業は自社の利益を重視するようになったので、儲かれば従業員に還元するという本来の姿は忘れられた。儲かれば会社の所有者である「株主」に還元して残りは内部留保するようになり、従業員には最低賃金しか払わないようになった。

それだけでなく、会社の利益を徹底的に高めるために、サービス残業をも強いるようになっていったのである。

こうした企業はブラック企業と言われるようになっていったのだが、日本企業の場合はもともとサービス残業を強いる土壌があって、外国人から見ると普通の会社ですらも「ブラック」である。

サービス残業をさせる土壌はそのままで、企業側は年功序列も終身雇用を捨てて会社の都合が悪くなれば容赦なくリストラしているのだから、日本企業で働く従業員は自分のことを自嘲して「社畜」と言っている。

かつては「社畜」になることでどんなに景気が悪くてもリストラされないという安心があった。しかし、今はどんなに自分を社畜化してもリストラは免れない。社畜になっても報われないのである。

このような不安定な状況の中では、誰もが将来に不安を感じて経済防衛に走ってもおかしくないわけで、こんな状況の中で内需拡大を目指してもうまくいくわけがない。

日本社会はこうした構造的な問題もある。これに少子高齢化という致命的な現象も重なっていくので、日本経済の将来はどんどん悲観的な状況になっている。

そして、人々の不満は募っていく。

企業中心の資本主義が覆ると決定したわけではない


企業中心の資本主義は、人間にとっては弱肉強食の資本主義でもある。資本主義が悪いという意味ではなく、資本主義がゆがんできている。

企業はどんどん富んでいき、その企業の頂点に立つステークホルダーである「株主」と「経営者」が企業と一緒に豊かになっていくことができる。

しかし、従業員にはその富が回ることはない。

そのため、社会はどんどん「1%の富裕層と99%の貧困層」に分離していくようになっていき、99%に落とされた層が大きな不満を持つようになる。

すでに超格差社会となったアメリカでは、こうした動きが選挙活動にも表れていて、ドナルド・トランプやバーニー・サンダースのような異色の候補が勝ち上がる番狂わせが起きている。

この番狂わせは、アメリカ国内に渦巻いている不満の表れであり、現在の資本主義に対する怒りでもある。企業中心の資本主義をこのまま突き進めると、アメリカではいずれ大規模な暴動が起きるのは目に見えている。

しかし、これはアメリカだけではないことに注意すべきだ。

全世界はグローバル経済に組み入れられ、この企業中心の資本主義がスタンダードとなっていったのだから、全世界で同じような動きが起きる。

もちろん、アメリカの格差社会の後を追っている日本も、いずれはアメリカと同じように、格差の下に落とされていく膨大な人々が社会に不満を表明し、世の中を動かすようになる可能性は高い。

ただし、アメリカでもまだドナルド・トランプやバーニー・サンダースのような異色が勝つと決まったわけではないし、今後、企業中心の資本主義が覆ると決定したわけでもない。

むしろ、逆に人間を次々と格差の下に落としていく資本主義が強化される可能性すらもある。



かつては「社畜」になることでどんなに景気が悪くてもリストラされないという安心があった。しかし、今はどんなに自分を社畜化してもリストラは免れない。

お願い

ダークネスの本文を他サイト(キュレーションメディア、まとめサイト、個人サイトすべて)へ転載する行為は、いかなる理由があっても固くお断りします。