2016-03-02

アメリカを支配する1%は誰が大統領になれば得するのか?


アメリカの大統領選は3月1日に「スーパーチューズデー」と呼ばれる山場を迎えているが、ここで勝ち上がってきたのは、共和党のドナルド・トランプと、民主党のヒラリー・クリントンである。

アメリカの大統領選はまだまだ長く続いていくので、何度もどんでん返しが続く。ただ、重要なスーパーチューズデーを制したのはこの2名である。

しかし、台風の目になっているのは、間違いなくドナルド・トランプの方だ。トランプ旋風はすさまじい勢いで続いており、この勢いは誰にも止められないように見える。

数々の暴言や批判、メディアの執拗なネガティブ・キャンペーンにも関わらず、ドナルド・トランプの勢いは止まることがない。むしろ、既存の体制からの批判が続けば続くほど支持が膨れ上がっている。

現在の社会に不満を持つ貧困層が、こぞってドナルド・トランプの支持に回っているのである。

それでも敢えて現在の状況で常識的な判断で確率を判断すると、私自身は今の段階ではヒラリー・クリントンの方に分があると判断している。


ドナルド・トランプは1%の富裕層に支持されない


ヒラリー・クリントンが大統領になる確率が高いと思うのは、アメリカの経済界も、軍産複合体も、グローバル・メディアも、すべてがヒラリー・クリントンと協調関係にあり、彼らは体制破壊をしようとしているトランプよりもヒラリーの方を好む傾向にあるからだ。

アメリカはすでに1%の富裕層と99%の中間層・貧困層に分離してしまった超格差社会であり、この1%の富裕層の資産は、残る99%の総資産総額よりも多い。つまり、この1%の富裕層の方が影響力で勝っている。

その1%の層は当然ながら自分たちの資産を守り、それを増大させるのにどちらの候補が得になるのかを考える。つまり、自分たちの資産を膨れ上がらせてくれた現在の資本主義体制を維持してくれる候補を選ぶ。

どちらが、現在の資本主義を継続してくれる確率が高いのか。もちろん、それはヒラリー・クリントンの方である。

間違えても、「超富裕層には多額の税金をかけろ」「ヘッジファンドに税金を払わせろ」「年収2万5000ドル(約310万円)未満の人は所得税を免除しろ」と過激に叫ぶドナルド・トランプではない。

多国籍企業もまたドナルド・トランプを大統領にするのは好んでいない。なぜなら、ドナルド・トランプの叫んでいる政策は多国籍企業にとって不利なものだからである。

たとえば、ドナルド・トランプは「アメリカ内に住む不法移民1100万人を強制退去させる」「アメリカとメキシコの間に巨大な大きな壁を建てる」と公言しているのだが、アメリカの多国籍企業はそれを望んでいない。

なぜなら、不法移民を安くこき使うことによって、多国籍企業は人件費を大幅に削減し、莫大な利益を生み出して来たからだ。不法移民を使えたから、多国籍企業は労働者の賃金を最低賃金かそれ以下にまで引き下げることができていた。

ドナルド・トランプの孤立主義はグローバル化によって莫大な利益を上げる多国籍企業にとって迷惑な主張である。だから、多国籍企業もドナルド・トランプを支持しない。黙ってヒラリー・クリントンを支持する。

ヒラリー・クリントンは1%の層に支持されている


ただし、これがヒラリー・クリントンの弱点にもなる。

現在の弱肉強食の資本主義はあまりにも行き過ぎており、アメリカの貧困層はもう爆発寸前になっている。

アメリカは2008年のリーマン・ショックで金融崩壊する寸前にまで追い込まれていたが、それは金融業界がレバレッジをかけて金融賭博をしたツケが回ったものだった。大銀行ががめつく儲けようとして不動産バブルで踊っていた。

ところがそのバブルが破裂すると政府は莫大な税金を投入して大銀行を救済した。一般庶民が破綻しても救済はないが、大銀行が破綻しそうになると政府は税金で救済するのである。

これに、アメリカの一般庶民は激しく怒りを表明し、2010年の「ウォール街を占拠せよ」の運動に結びついていくのだが、その運動もやがて国家権力によって押さえ込まれ、人々の怒りは消されてしまった。

その間、FRB(連邦準備制度)は二度に渡る金融緩和を行って大量の資金を市場に流していたが、この大量の資金がすべて金融市場に流れ込んで株価を上昇させていき、再びここでも富裕層が「焼け太り」する状況になった。

気が付けば、株式資産を大量に保有する資産家は、リーマン・ショック前よりも金持ちになり、株式をまったく持たない貧困層は何の恩恵も得られないという最悪の状況になっていた。

ヒラリー・クリントンはこうした1%の富裕層の利益を優先する体制側の人間である。それが故に一般大衆からは嫌悪されており、民主党支持者の中にも「ヒラリー・クリントンは支持しない」という層が多い。

ヒラリーがバーニー・サンダース候補に苦戦しているのは、サンダースが「格差是正」「徹底的な所得再配分」「最低賃金引き上げ」「金融業界の規制」「公立大学の授業料の無料化」を次々に謳って、99%の側に立っているからである。

本来、民主党はこうした草の根の声を汲み上げるリベラルな政党なのだが、ヒラリー・クリントンは体制側のイメージが染みついており、だから民主党の中でも嫌われている。

状況を俯瞰するとヒラリー・クリントンが「無難」


このように見ていくと、アメリカの現在の大統領選の本質は、1%の富裕層と残り99%の層との戦いになっていることが分かるはずだ。

ドナルド・トランプ旋風も、今のアメリカの体制をひっくり返して、1%の富裕層に支配されたアメリカを再び一般庶民の手に取り戻そうとするひとつの大きな流れなのである。

それほどまで、今のアメリカは1%の富裕層の影響力と支配力が高まっており、それが看過できないほどの不満と閉塞感を生み出しているのだった。

では、1%の富裕層と、残り99%の層は、結局どちらが勝つのだろうか……。

影響力や支配力で勝っているのは、言うまでもなく1%の富裕層である。それならば、「合法的な選挙」で選ぶのであれば、体制側の方が有利であるのは間違いない。

暴力革命やクーデターによって体制が転覆されない限り、既存のエスタブリッシュメント(支配層)が体制を維持し続けるというのは常識的な判断だ。

したがって、ドナルド・トランプやバーニー・サンダースが裏で体制側と取引でもしていない限り、大統領になる確率はヒラリー・クリントンが高いと言っても過言ではない。

グローバル化を中心として組み上げられた現在の資本主義は、限りなく多国籍企業に有利な体制となっている。その多国籍企業の株式を大量に保有するのが1%の富裕層だ。

この1%の支配層が現在の資本主義体制を、たかが大統領選挙のひとつやふたつでひっくり返すような現状を許すとはまったく思えない。

別に1%の支配層はヒラリー・クリントンにこだわっているわけではないはずだ。誰が大統領になっても、今の資本主義体制を維持してくれるのであれば誰でも良いと現実的に考えているはずだ。

ただ彼らにとっては、今のところ状況を俯瞰するとヒラリー・クリントンが一番「無難」である。とすれば、ヒラリー・クリントンが大統領になる確率が高いと考えるのは、別におかしなことではない。



影響力を持つ1%の支配層にとって、今のところ状況を俯瞰するとヒラリー・クリントンが一番「無難」だ。だとすれば、ヒラリー・クリントンが大統領になる確率は意外に高い。

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