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2016-02-26

グローバル化と同一賃金の組み合わせは、低賃金の固定化だ


日本でもいよいよ世界の労働条件と同じく、「同一労働同一賃金」を政府が経済界に要請する動きとなっている。

「同一労働同一賃金」とは、簡単に言うと「同じ仕事をしている人は、年齢や雇用形態に関わらず同じ賃金であるべきだ」というものである。

現在、正社員や高年齢の人の賃金が高く、非正規雇用者の賃金が極端に安くて、同じ仕事をしていても賃金の格差が歴然として存在する。それを是正するのが「同一労働同一賃金」だ。

これは安倍首相が提唱する「一億総活躍社会」の一環として検討されているものである。

2016年2月23日にも国民会議が開かれて、安倍首相が自ら「我が国の雇用慣行には十分留意しつつ、躊躇なく法改正の準備を進めていく」と決意を表明している。

経済界も概ねこれを歓迎している。現在の日本の賃金体系をどのように変えていくのかという問題はある。しかし、「同一労働同一賃金」が今後日本に取り入れられる可能性はどんどん高まっていると言える。

これは「格差を少しでもなくしたい」という善意から来る動きである。悪意から来ているのではなく、善意から来ているものである。


正社員の賃金が、非正規雇用者の低い賃金に固定化


同じ仕事であれば同じ賃金であるべきというのはフェアなものである。日本が今までそうではなかったのは、年功序列というシステムがあったからだ。

年功序列というのは、若いうちは少ない賃金で年齢が高くなればなるほど賃金が上がっていくというものである。これは終身雇用とセットで取り入れられたものだ。

会社は「終身雇用で面倒を見るから、若いうちは賃金はあえて低く抑える。会社に貢献し続けてくれることによって賃金は必ず上げていく」というシステムで雇用者を囲い込んでいたのである。

しかし、終身雇用が崩壊した。そのため、年功序列による賃金格差が説明できないものになっていった。だから、終身雇用が崩壊して年功序列も意味がなくなったのであれば、「同一労働同一賃金」になるのは必然であると言える。

これによって、同一労働間の格差が消えて働く人はみんな同一賃金でフェアな社会になるというわけだ。

しかし、考えなければならないことがある。

「同一労働同一賃金」で、企業は賃金を高い方で統一するだろうか。それとも低い方で統一するだろうか。場合によっては正社員の賃金が非正規雇用者の低い賃金に固定化される可能性はないのだろうか……。

経済界は賃金の引き下げができる方向であれば、どんな施策であっても歓迎する。

今回の「同一労働同一賃金」で企業が賛同を表明しているという意味は、それによって賃金を引き下げることができるという計算があると見ることができる。

言うまでもなく、単純労働に類する仕事は必ず低い賃金の方で同一賃金に統一される。なぜなら、全世界が実際にそうなっているからである。

最低賃金にまで確実に給料が下げられていく社会へ


さらに考えなければならないのは、グローバル化である。社会がグローバル化して、企業も多国籍化しているのだから、「同一労働同一賃金」であれば、グローバルに賃金が統一化されていく流れになっていく。

それは、「誰でもできる簡単な仕事」「単純作業」「ルーチンワーク」が、途上国の賃金に合わせられるということを意味しているのである。

安い賃金でもそれをやるという人が現れたら、当然のことだが企業は安い賃金を基準にして「同一労働同一賃金」を設定して全員の賃金をそれにするのは間違いない。

途上国の人間が安い賃金でやっていて、仕事がそこにアウトソーシングできるのであれば、当然のことながら日本でもその仕事はその賃金になっていく。

日本の物価がどうであろうと関係ない。

極端な話だが、タイ人が日本人と同じ仕事ができて、彼らの月給が月3万円であれば、企業は彼らの賃金で「同一労働同一賃金」を実現しても不思議ではない。

日本人がどうしても、その仕事で働きたいのであれば、日本人の賃金も月給3万円に引き下げられる。中国人が月給1万円で同じ仕事をするのであれば、日本人の月給もまた1万円に引き下げられる。

もちろん、日本にも最低賃金というものが厚生労働省によって決められている。そのため月給が3万円というのはないと考えられる。

だとすれば逆に、最低賃金にまで確実に給料が下げられて賃金が一生上がらないという現象が起きてもおかしくないということでもある。

低賃金で働く途上国の人の賃金にフラット化する


果たして、企業はそんなことを考えるだろうか。そう思う人はユニクロ社長の柳井正氏の発言を思い出すといい。

すでにユニクロの柳井正氏は2013年からすでに「世界同一賃金」を提唱し、仕事のできない人間は「年収100万円も仕方ない」と言っていた。

柳井正氏は2013年4月23日の朝日新聞の紙面上でインタビューに答える形で次のように言っている。

「それはグローバル化の問題だ。10年前から社員にもいってきた。将来は、年収1億円か100万円に分かれて、中間層が減っていく。仕事を通じて付加価値がつけられないと、低賃金で働く途上国の人の賃金にフラット化するので、年収100万円のほうになっていくのは仕方がない」

高度化する職種や仕事に対応できず、付加価値が付けられない仕事、つまり「誰でもできる仕事」をしている人間は、途上国の賃金に合わせられて年収100万円になっていくと経営者が自分の口で堂々と語っているのである。

実際、ユニクロはそうやって賃金を下げるだけ下げて、付加価値(=サービス残業)を強制し、それについてこれない社員はどんどん辞めさせて社員の使い捨てを実現している。

同一賃金と、グローバル化が結びつくと、何が起きるのかというのは、ユニクロを見ていればすぐに分かるはずだ。

それは、賃金の低い方向で固定化されていき、能力が向上できなければ一生うだつが上がらないというものになる。

もちろん、現代社会に求められている高度な能力が要求される仕事においては賃金が大幅にアップする人も出てくるので、誰もが賃金低下で固定化されるわけではない。恩恵を得る人は必ずいる。

しかし、「同一労働同一賃金」によってむしろ追い詰められる人も増えるという暗部も知っておくべきだ。

「仕事を通じて付加価値がつけられないと、低賃金で働く途上国の人の賃金にフラット化するので、年収100万円のほうになっていくのは仕方がない」という言葉が「同一労働同一賃金」の未来になるかもしれない。



「仕事を通じて付加価値がつけられないと、低賃金で働く途上国の人の賃金にフラット化するので、年収100万円のほうになっていくのは仕方がない」という言葉が「同一労働同一賃金」の未来になるかもしれない。

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