2016-01-18

ベネズエラが国家崩壊の危機に直面し、経済緊急事態を宣言


2016年1月15日、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領が「経済緊急事態」を宣言する騒ぎとなっている。ベネズエラはもう国家崩壊寸前であり、どうにもならないところにまで追い込まれてきている。

ベネズエラがこのようになったのは、原油価格の暴落に原因がある。ベネズエラは産油国であり、輸出の95%を石油に頼っている国である。

つまり、この国の浮沈は石油価格にかかっていたわけで、石油が暴落したらこの国も危機に陥る構造だったのだ。原油価格は2014年の半ばから怒濤の如く暴落するようになっており、今もまだその傾向が続いている。

ベネズエラの国内経済は大混乱し、インフレ率は2015年で210%を記録していた。食料も、衣料品も、日用品も不足して、人々は何も買えない状態に陥ってしまった。

そのためにベネズエラ政府は国営スーパーで配給制を始めるようになったが、それでも物資が手に入らず、反政府デモも過激になっている。

政府はそれを徹底弾圧で臨んでおり、警察では抗議デモを押さえられなくなって、今や民兵すらも動員している。


経済停滞と、物不足と、失業と、インフレ


そんな中で2015年12月6日には、国会議員選挙が行われてマドゥロ大統領率いる与党は惨敗、政治的混乱もより加速していく流れとなった。

ベネズエラの輸出が、ほぼ石油しかないのであれば、この国が立ち直るのかどうかは石油価格がどう推移するかで決まる。

石油価格が持ち直さないのであれば、政権が変わったところでベネズエラが正常化する要素はまったくない。

悪いことに石油価格はさらに落ち込んでいる。

2015年はベネズエラにとって最悪の年だったが、2016年も最悪が継続するということであり、これがマドゥロ大統領の「経済緊急事態」の宣言につながっている。

ベネズエラ政府には、もう打つ手はない。インフレ率はさらに上昇し、このままでは2016年のインフレ率は300%を超えて400%に跳ね上がるのではないかとも予測されている。

ベネズエラの失業率は2012年までは7%で推移していて、これも決して低い数字ではないが、現在はもうそれどころではなく、2015年は14%に達していたはずだというのがIMF(国際通貨基金)の予測だ。

経済停滞と、物不足と、失業と、インフレが同時に起きているわけで、これは典型的な「スタグフレーション」である。

様々な局面の経済状況の中で、最悪の局面を示しているのが、この「スタグフレーション」であるのは言うまでもない。

少し考えればそれがどれほどひどい状況なのか想像できるはずだ。何しろ仕事がなくなって、モノもなくなって、かろうじて手に入るモノは今までの3倍も4倍も高い価格が付いているのだ。

手に入らないのは贅沢品のようなどうでもいいものではない。牛乳、米、肉、卵、野菜、果物、コーヒー、洗剤、トイレットペーパーのような、日々暮らす上で大切なものである。

ベネズエラでは新聞社や出版社も続々と廃刊に追い込まれているのだが、これは弾圧の結果そうなったわけではない。その前に印刷するための「紙」が手に入らなくなってしまったからである。

劣悪な状況になってしまっているベネズエラ国内


現在のベネズエラはこの最悪の経済状況に追い込まれて、しかも改善の余地がない。改善どころか石油価格がより下落している2016年はもっとひどいことになる。

すでにベネズエラという国に見切りをつけて周辺国に脱出する国民も多く、すでに150万人以上もの国民がベネズエラから逃げ出したとも言われている。

中には、着の身着のまま、一文無しで逃げ出す国民もいると言われているが、逃げ出しているベネズエラ人の多くは富裕層である。大半のベネズエラ人は逃げ出す金も余裕もなく、国内にとどまるしかない。

仕事もなく、食べるモノもなく、金もないので、犯罪率も急上昇している。

中南米はもともと犯罪率は高い地域として知られているが、ベネズエラも例に漏れず、今では世界最悪と言われているホンジュラスを超えるのではないかと言うNGO団体もある。

ホンジュラスを超える治安悪化なら、世界最悪の部類であると言っても過言ではない。(行ったら殺される。手の付けられない無法地帯、ホンジュラス

公務員や警察も困窮しているので汚職や賄賂が蔓延して、腐敗が広がっており、それがベネズエラの治安をより悪化させているとも言われている。

石油依存から脱却して、国内の産業を多角化するという政策は長期的な施策であり、急場をしのぐ政策にはなり得ない。

そもそもこの産業の多角化もベネズエラは難しいと言われている。なぜなら、ベネズエラは主要な産業を前チャベス大統領が次々と国有化してしまっていたからだ。

国有化して政府が価格統制しようとしていたのだが、これがベネズエラの産業を停滞させる原因となった。

ベネズエラが95%もの石油依存になってしまったのは、非効率な国営企業で企業の競争力は削がれたからである。

アメリカに挑戦する国家を世界から一掃する


ベネズエラのチャベス大統領は2007年に石油事業を完全に国有化するため、アメリカのエクソンモービルを追い出して石油合弁資産を奪い取ってしまった。

そして、ベネズエラは石油価格の決済をドル建てを止めるべきだと2007年11月17日のOPEC(石油輸出国機構)で主張し、ドル通貨基軸からの脱却を訴えた。

それは、南米からアメリカを追い出し、中国やロシアと組むことによってアメリカの覇権を奪い取ろうとするチャベス前大統領の試みのひとつだった。

ベネズエラは反米国家としてロシアや中国やブラジルと共にアメリカ包囲網を作ろうとしていたのだ。

しかし、アメリカはドル通貨基軸に挑戦する国や人間を、絶対に許さない。「ドル通貨基軸」こそがアメリカの覇権の中核(コア)だからである。

その結果、どうなったのか。2011年になるとチャベス大統領は癌になり、「自分が癌になったのはアメリカの陰謀だ」と叫びながら2013年に死亡し、ベネズエラ政府は石油暴落によって国家崩壊寸前にまで追い込まれている。

エネルギーを握ることによってアメリカのドル通貨基軸に挑戦しようとしてきた国のすべては、2014年7月から始まった原油価格の大暴落によって国家存続を脅かされるようなダメージを受けている。

2016年に入ってから、ロシアも、ブラジルも、ベネズエラも、中国も、片っ端から経済危機に直面している。

そして、ここ数年、ドル建ての決済から逃れようとしていたサウジアラビアもまた追い詰められはじめた。(原油安に追い詰められていくサウジアラビアと激震する世界

石油価格の下落は、アメリカに挑戦する国家を世界から一掃する役割を果たしている。

これらの国家が崩壊すれば、もちろんドル通貨基軸は守られ、欧米のスーパーメジャー(エクソンモービル、ロイヤル・ダッチ・シェル、BP、シェブロン、トタル、コノコフィリップス)が全世界を支配することになる。



追い込まれたベネズエラ・マドゥロ大統領。ベネズエラはもう国家崩壊寸前であり、どうにもならないところにまで追い込まれてきている。

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