2016-01-16

タイタニックのように沈没していく出版業界に明日はあるか


時代はどんどん変わりつつあるが、その中で取り残されていこうとしているのが出版業界であると言われている。

新聞社もビジネスモデルとしては終わりになりつつあるが、書店も出版社も取次も同じで、みんなまとめて凋落している。

書籍・雑誌の売上高は11年連続のマイナスとなっており、2015年はさらに激しく売上が落ちていたという。文庫本も売れず、雑誌も、月刊誌も、週刊誌も不振だ。

あまりにも雑誌が売れなくなってきているので、いくつかの出版社が名の知られている雑誌の廃刊を決めており、こうした流れはこれからも続くと言われている。

この出版業界の不振は日本だけではない。全世界で同じ傾向が続いている。その理由は明らかだ。インターネットという黒船が来襲してすべてを飲み込んでいるからだ。

街に出ても、新聞や文庫本を読んでいる人はかなり少数派になっていて、今や誰もがスマートフォンを見ている。タブレットを持ち歩いて見ている人もいる。

インターネットが普及するようになって出版業界の凋落は始まったのだが、スマートフォンの普及はそれに輪をかけて出版業界を追い込んでいる。


日本人は、もう「紙」にこだわらなくなっている


日本人はそれでも読書をしている。しかし、もう読むのは「本」ではなくなっているのである。本ではなくインターネットで日々更新されるコンテンツを読んでいるのだ。

何しろインターネットでは、多くのコンテンツがタダで読めるわけで、しかも鮮度も高い。書き込んでいる人たちの人口も圧倒的に多く、汲んでも汲んでも尽きない泉のようでもある。

専門家も、業界のプロも、みんなインターネットにいる。

新聞や雑誌や週刊誌に載っているようなものは、すべてインターネットに「大量」にある。さらに新聞や雑誌や週刊誌に載せられないようなものですらもある。

小説ですらも、今は様々な分野のものが大量にインターネットに存在する。無料のサイトにあるのは、その多くが横書きのフォーマットだが、今の若年層は別に横書きで小説を読むことに対して何ら違和感を感じていない。

どうしても縦書きで読みたければ書籍に向かうのかというと、そうではなく「電子ブック」に向かう。電子ブックなら、スマートフォンから離れなくて済むからだ。

日本では漫画文化も根強く残っているが、その漫画ですらもインターネットで読めるし、電子ブックで過去のマンガを揃える人も増えている。

そのため、マンガ雑誌もかつてないほど苦境に落ちていると言われている。

有名なマンガ雑誌も部数を落としており、ピークを過ぎてから発行部数は半減し、どのような人気作品が出たとしてもかつての部数に戻ることは決してない。

つまり、日本人は「読む」という行為は相変わらず続けているのだが、もう「紙」にこだわらなくなっている。そのため、紙の媒体にこだわってきた出版社が窮地に追いやられているのである。

それなら出版社もさっさと紙からインターネットの世界に移行すればいいという話になる。しかし、それがそう簡単にはいかない理由がある。

「文化の違い」だ。日本と外国がまったく違うのと同様に、出版業界とインターネットはまったく文化が違っている。

ノウハウも、資源も、こだわりも、通用しない


出版というのは、それ自体がひとつの文化であり、紙という媒体を中心にしてシステムが組まれている。そこに出版業界特有のノウハウがあり、人的・物理的資源があり、こだわりがあり、強みがある。

ところがインターネットの世界は、この出版とはまったく違った文化と世界である。

出版業界のノウハウはインターネットの世界では存分に生かされない。培ってきたノウハウも、資源も、こだわりも、ほとんど通用しない。

インターネットではHTMLが基本であり、それは出版業界が培ってきた文化とはまったく違うものだ。組版の職人であっても、インターネットの世界で組版できるとは限らない。

紙の出版物に似ていると思われている電子ブックにしても、裏を見ればHTMLの拡張である。端末によって行数も字数も変わってくる独特のフォーマットであり、出版業界の「紙」とはまったく技術もコンセプトが違う。

また出版業界のコンテンツを発行するスピードもインターネットとはまったく違う。コンテンツの精度や完成度に対するこだわりも、出版業界とインターネットではまったく違う。

またインターネットでどのように儲けるのかという手段も違っている。紙という物理的なものを売って儲けるスタイルと、形にないコンテンツを売って広告で儲けるスタイルは、まったく違うビジネスであると言える。

このように、あまりにもいろいろなものが違い過ぎて、出版にどっぷりと浸ってきた出版業界の人間であればあるほど、どうしてもインターネットに進出できないのである。

これは、呉服屋をやっていた人が洋服屋になれないとか、日本料理屋の主人がファストフード店の店長になれないのと同じで、いくら「似ているところがある」と言っても、まったく違う世界なのだ。

出版業界がタイタニックのように沈没している


出版業界が苦境に落ちているというのは、もう大手・中小・零細を問わない。大手だから安泰なのかと言えば、大手が縮小していく業界の余波を大きく食らって危険なことになっている。

そんな状況なので、「作家」と呼ばれる人々の多くは困窮しており、食べていけるのは「ほんの一握り」でしかないと言われている。

出版業界がタイタニックのように沈没しているのに、作家だけが業界と無関係に裕福になれるわけがないのは誰が考えても分かることだ。ほとんどの作家は書いて暮らせない。

また、出版を取り仕切っているのは取次なのだが、栗田出版販売は2015年に破綻し、日販も本業で赤字を出すようになっていると言われている。

取次が苦境に落ちているのは、書店も激減しているからだ。今や小さな書店で本を買う人は激減してしまって、本屋そのものが街から消えてしまっている。ここ10年近くで書店は半減してしまったのだ。

そのため、出版社はパイの少なくなった書店で勝負しなければならなくなり、目立つために新刊を大量に発行し、短いスパンで返品の嵐に見舞われるようになっている。

本の売り上げが減っているので出版社は進退窮まり、さらに大量に本を出すようになる。すべての出版社がそうするので、新刊が溢れ出るようになってますます本が売れなくなる。

それを挽回するために、本をもっと大量に送り出して返品の嵐となり、さらにまた新刊を送り出す……。

このような凄まじい「負のスパイラル」のなかで、出版社はもうすっかり消耗してしまっている。

結局、市場自体が縮小しているのに出版物自体は粗製濫造されているわけで、粗製濫造がまた本離れを加速させる。

「書籍」というものが世の中から消えてなくなることはない。しかし、出版物が生き残るとしても、出版業界自体は今とまったく違った形であるはずだ。

「負のスパイラル」がいつまでも続くわけでもなく、今のままでは出版業界は遅かれ早かれ自滅していく。



「書籍」というものが世の中から消えてなくなることはない。しかし、出版物が生き残るとしても、出版業界自体は今とまったく違った形であるはずだ。

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