2015-12-04

サンバーナディーノ銃乱射。暴力は伝染病と同じで蔓延する


2015年12月2日、アメリカ・カリフォルニア州サンバーナディーノの福祉施設で銃が乱射され、14人が死亡、17人が負傷するという事件が起きた。

発達障害の子供たちを支援するNGOが支援パーティーを開いていたが、その現場が惨劇となった。

容疑者は現場から車で逃走したが、警察がこれを追って銃撃戦になり、双方合わせて400発以上の弾丸が発射されるような激しい銃撃戦の末、犯人2名が射殺された。

銃乱射事件と言えば、もうアメリカでは珍しくも何ともない事件となっている。

テレビの生放送中に女性記者が射殺されるという事件すらも起きているし、2015年11月は人工中絶に反対の57歳の男が病院に立てこもって銃撃戦を繰り広げる事件もあった。

しかし、今回のサンバーナディーノの乱射事件は今までの乱射事件とは違った目で見られている。射殺された犯人はサイード・ファルークというパキスタン系のイスラム教徒で、もうひとりはその妻だったからである。

まだ詳細は分かっていないが、このサイード・ファルークは地元の郡の職員として働いており、乱射事件を起こす前はこのパーティーに参加していたという情報もある。


6000発の銃弾と12発のパイプ爆弾が見つかった


サイード・ファルークはパーティーの途中で、ユダヤ人の同僚と口論があって怒って退席し、それから妻を連れてパーティ会場に戻って乱射事件を引き起こした。

そのため当初は「職場でのトラブル」という見方もあった。ところが、FBIがこのサイード・ファルークの自宅を家宅捜査したところ、どうもそのような単純で衝動的な事件ではない可能性が浮上した。

サイード・ファルークの自宅や所有していた逃走車輌からは合計して6000発の銃弾と12発のパイプ爆弾が見つかっているからだ。

さらに、この男は最近になってサウジアラビアを訪問しており、インターネットを通じてイスラム過激派と接触していた形跡も見つかっている。

サイード・ファルークは2年前から急にヒゲを伸ばし始め、イスラム系の男が着る白く長いシャツを着て、イスラム教的な服装になっていったと言われている。

そのため、サイード・ファルークは最近になってアメリカでテロを起こす計画を立てており、同僚との口論でそれが突発的に実行された可能性が指摘されている。

まだ捜査の途上なので何とも言えない部分も多いが、もしそうだとすると、この事件はアメリカで起きている一連の銃乱射事件とは違い、2015年11月13日にフランスで起きたイスラム過激派の事件の方に連なることになる。

現在、シリアからイラクを席巻するイスラムの超暴力組織ISISは全世界を敵に回して世界中に暴力を拡散させている。(アルカイダまでもが暴力的だと敬遠する、狂気の超暴力国家

そして、このイスラム過激組織は「自国でテロを起こせ」と一匹狼のイスラム教徒に呼びかけている。

2015年1月7日に起きたフランスのシャルリ・エブド事件でも犯人のアルジェリア系フランス人兄弟も、そうした声に感化されてテロを起こした一匹狼だった。

サイード・ファルークがそれに呼応したのだとすると、いよいよアメリカ本土にもイスラム過激派によるテロが始まったのだと言うことができる。

反政府組織に武器を横流し、中東に地獄が生まれた


アメリカは2001年9月11日に、イスラム系テロ組織「アルカイダ」によって攻撃され、2棟のワールド・トレード・センターが国民の目の前で倒壊するという凄まじいテロに見舞われている。

この事件でアメリカはすぐさま首謀者オサマ・ビン・ラディンを匿っているアフガニスタンを攻撃してタリバン政権を崩壊させ、さらに2003年にはイラク攻撃を進めてサダム・フセイン政権をも崩壊させた。

しかし、アフガニスタンやイラクの抵抗組織は、すぐに地下に潜ってアメリカ軍をテロでじわじわと傷つける戦略を採るようになった。

これによってアメリカは「テロとの戦い」という泥沼に引きずり込まれていき、抜け出せなくなってしまった。

その結果、国内では厭戦気分が蔓延、莫大な戦費を消耗し、2008年にはサブプライムローンによる不動産バブルも崩壊し、アメリカの国力は大幅に減退するという最悪の結果を迎えることになった。

ブッシュ大統領はそんな最中でボロボロになって退任し、民主党からバラック・オバマ大統領が登場した。

オバマ大統領はブッシュ元大統領が始めた中東での戦争から撤退するために国民から選ばれた大統領である。

オバマ大統領は中東で何が起きてもそこから兵を撤退させるという当初の目標を堅持し、2011年に中東で過激な民主化デモが起きて親米政権が次々と崩壊していく事態になっても動かなかった。

さらにシリアで、アサド政権が反政府組織を国民もろとも攻撃する内戦状態になっても動かなかった。

アメリカは自らがシリアに乗り込んでアサド政権を崩壊させるのではなく、アサド政権と戦う反政府組織に武器を横流しにする方策を選んだのだが、これが中東に「地獄」を生み出した。

この大量に注ぎ込まれた兵器を元に、アブバクル・バグダディが勝手に「イスラム国」なる国を立ち上げてシリア・イラク一帯を激しい暴力で統治するようになっていったのだ。(斬首。レイプ。血と暴力でイラクを制圧する異常な暴力国家

「憤怒の中で自決しろ!」と叫ぶ声が届いたのか?


ISISは石油施設を制してそれをトルコに横流しし、トルコのエルドアン大統領一族がそれを買い占めて、アメリカの多国籍企業にヤミ売りするという流れが裏側でできていた。

こうした石油マネーがISISの資金源となっていて、国際社会がどんなにISISを壊滅させようとしても、この暴力組織はしぶとく生き延びている。

そして、自分たちを攻撃して来る国の内部に潜むイスラム教徒たちに向けて"Die in Your Rage!"(憤怒の中で自決しろ!)と煽り立てているのである。

「憤怒の中で自決しろ! テロを引き起こすためには手段を選ぶな。爆弾でも、ナイフでも、銃弾でも、車でも、岩でも、あるいは自分の靴でも、拳でも、何でも使ってテロを起こせ。そして、十字軍の人間たちを殺した上で自決しろ!」

全世界のイスラム教徒に向けてそのように呼びかけていたのがISISの幹部アブ・ムハンマド・アル・アドナニだった。(誰も気付かない間に、暴力のグローバル化がやって来ていた

全世界に散らばったイスラム教徒たちは、十字軍(キリスト教)の国々で不遇の目に遭っている。差別されたり、低賃金の仕事しか与えられなかったりして、「虐げられている」と感じるようになっている。

どこかで「イスラム系過激派がテロを起こした」と報じられるたびに、穏健なイスラム教徒も白い目で見られるようになり、追い詰められていく。

それが、イスラム教徒たちに鬱屈させ、世間に恨みや憎しみを持つようになる。今の社会をぶち壊したいという気持ちも芽生えるだろう。

そんな中で、イスラム過激派の「憤怒の中で自決しろ!」という激しい声が届くのだ。鬱屈したフラストレーションに方向性を与えられるのである。

アメリカで郡職員をしながら静かに生きていたサイード・ファルークにもその声が届いたのかもしれない。そうだとすると、この事件はいよいよアメリカでもイスラム過激派のテロが日常的に起きる前触れと捉えることもできる。

すでに私たちは「暴力の時代」に生きている。そして、暴力は伝染病と同じで蔓延する。




サイード・ファルーク。2015年12月2日、アメリカ・カリフォルニア州サンバーナディーノの発達障害の子供たちを支援する福祉施設で銃を乱射。自身も警察との銃撃戦で死亡している。これは単なる銃撃事件なのか、それともイスラム過激派の「憤怒の中で自決しろ!」がサイード・ファルークの耳に届いたのか……。

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