2015-11-28

じわじわと広がる貧困は、資本主義の変質がもたらしている


厚生労働省の「平成25年国民基礎調査」では1985年には10.9%だった子供の貧困率は、2012年には16.3%にまで上昇していることがデータとして出てきている。日本の子供の6人に1人は貧困なのである。

特にひどいのはシングルマザー等ひとり親の家庭の貧困で、2014年のデータによると54.6%の家庭が貧困に入る。

これは、離婚して子供を引き取った親は、半数が確実に貧困状態に突入するということを意味している。

しかし、もう日本人の貧困は子供の貧困やシングルマザーの貧困で終わらないものになってしまっている。すべての世帯で貧困が忍び寄っているのだ。

貯金がない人は「貯蓄額階級別・借入金額階級別にみた世帯数の構成割合」によれば16%、そしてすべての階層で「貯金が減っている」と答えている。

地獄のような民主党政権が終わり、2013年から株価が上昇し、株式を保有している階層は資産を50%以上も増やすことが可能だった中で、そうでない世帯は何も恩恵を受けていない。

日本では株式を保有する人は本当にごくわずかである。貯金こそがすべてという「一見、堅実な人」が逆に追い詰められる結果となっている。


貧困の子供たちは就学にも苦しんでさらに貧困化


子供の貧困は実態よりもひどいのではないかとも言われている。なぜなら子供の貧困を発見するのに「就学援助を受けている子供」を対象にしているのだが、ひどく生活が切迫しているにも関わらず、就学援助を受けない貧困家庭もいるからだ。

こうした家庭では食事の回数を減らしたり、子供の病気や治療、たとえば虫歯などを放置させたりしているわけで、子供の発育や健康にしわ寄せがいく。

さらにこうした家庭では子供を塾に通わせたりする余裕もないので、学力の低下も余儀なくされる。また、義務教育が終わった後の進学も資金がなかったりするので、低学歴になりやすく、それが貧困の固定化となる。

中学校卒業、高校卒業の子供たちはそもそも就職も難しくなっており、さらに就職ができたとしても賃金で大学卒業と区別が付けられている。

それでも正社員としてどこかの会社に潜り込めれば幸せなことで、その多くは派遣労働者や契約社員として「使い捨て」にされる可能性の方が高い。

それでは大学を卒業して正社員になった人間が勝ち組で将来は安定なのかと言えば、まったくそうでもなく、すでに多くの企業は終身雇用も年功序列も捨て去って、業績が悪くなればリストラで調整するようになっている。

だから、正社員であっても、会社が傾けばどこかのタイミングで捨てられることになるのである。

グローバル化が突き進んだ2000年代から、「正社員も危険な社会になる」とさんざん言われて来たが、当時のサラリーマンはそのほとんどが危機感がなく、まさか自分たちが会社からリストラされるような時代が来るとは想像すらもしなかった。

だから、派遣社員の人間を見て、自分たちは特別で勝ち組であるという意識さえ持つ人間もいた。今は正社員だから勝ち組などと思っているおめでたい人間はひとりもいない。

日本を代表する名のある企業、たとえば東芝やソニーやパナソニックや日立やシャープであっても、いったん凋落したら凄まじいリストラの嵐が吹き荒れて従業員が放り出されるのを私たちは目撃している。

団塊の世代もまた高齢化して貧困に転がり落ちる


こうした状況の中で、団塊の世代は年金をもらって自分たちは逃げ切れたと安堵していた。

しかし、国の借金は1057兆円も膨れ上がり、内需が萎むと警告されているのに政府も消費税を8%にするという暴挙に走って、返す刀で社会福祉や年金の削減を行っている。

インフレと年金の削減は、年金にすがるしかない高齢者の老後を直撃する。そして、多くの「誤算」が年金をもらう世帯に襲いかかって、場合によっては高齢者の9割は貧困化するのではないかとも言われている。

高齢者に貧困が襲いかかるのは、「インフレがやって来て物価が上がり年金の受け取りが減る」という経済学的な要因からだけでなく、現実はもっと泥臭い「誤算」が起きている。

高齢層になれば、病気や事故で身体がだんだん言うことを効かなくなる。自分が病気になったり、妻が病気になったりすると、想定しなかったほどの高額な医療費がかかってくる。

さらに、離婚問題は高齢層も抱えている。いわゆる熟年離婚というものだが、夫婦から個人になれば、ふたりで助け合っていたものがひとりで何もかもしなければならなくなる。

そんな中で病気になったり、認知症になったりすると、目も当てられない。高齢になって離婚されるというのは、想像だにしない男もいる。そんな男が離婚を突きつけられて愕然とする。

そして子供が高齢化した自分を助けてくれるとは限らない。そもそも、子供が日本の貧困社会の直撃を受けているので、引きこもりやニートになって年金生活をする親に頼りかかる。

家に引きこもって社会生活が不可能になったニートや引きこもりはすでに「中年化」しており、ニート問題は若年層の問題ではなくなった。

そんな中年化した引きこもりの子供を、年金生活に入った親が面倒を見る。親にしてみれば想定外としか言いようがないだろう。こういった誤算の数々が高齢者を襲いかかり、老いて貧困に転がり落ちていく。

そんな恐ろしい時代に、私たちは生きている


こうしたごく普通の庶民が貧困に落ちていくという現象は、今の政治が悪いからそうなっているのではない。政治が悪くてそうなっているのであれば、逆に救いがある。政治を変えればいいからである。

政治ではない。私たちが生きている「資本主義」が昔とは性質が違ってしまったのだ。

社会がグローバル化し、企業間の競争が激しくなり、さらに大企業が次々と小さな企業を飲み込み、大株主が配当や株価上昇を経営者に強く求めるようになった。

その結果、ほぼすべての企業経営者はROE(株主資本利益率)の最大化を目指すようになった。

会社の利益のために内部留保を確保し、配当を増やし、株価を上げることが重要になり、利益の確保のためにコストのかかる従業員は切り捨てるようになっていった。

現在の企業が目指しているのは、いかにコストを削減して利益を上げるかという「雇用を排除する経営」なのだ。(今、世界で起きているのは雇用を排除するイノベーションだ

企業が赤字でも黒字でも人員整理をするようになっているのは、人間はコストであり、コストは削減するものであり、それによって利益が最大化できるからである。

こうした最大化された企業の利益は、株主と経営者が総取りするようになる。それでも余った金は労働者に配分されるのではなく、会社に内部留保されるのだ。

労働者には回らない。単に最低賃金だけ支払うだけであり、それも惜しいので常にリストラを行う。

だから、ごく普通に生きている人々が次々と貧困に落ちているわけである。資本主義が強者総取りの弱肉強食型に変化して、労働者は全員「コスト」と見なされて削減される世の中になっているのだ。

そんな中で、コスト扱いされ、安い給料でこき使われ、挙げ句の果てに使い捨てされる労働者が社会に満ち溢れていく。国も膨れ上がっていく貧困層にお手上げになり、福祉も年金も削減していくようになる。

普通の労働者がワーキング・プアとなり、シングルマザーが貧困化し、子供も一緒に貧しくなり、高齢者もまた救いのない困窮に苦しむようになる。

こうした流れはゆっくりと確実に動いている。格差が広がり、貧困が深刻化していく流れは止まらない。そんな恐ろしい時代に私たちは生きている。



コスト扱いされ、安い給料でこき使われ、挙げ句の果てに使い捨てされる労働者が社会に満ち溢れていく。そして、最後に社会全体が貧困に落ちていく。

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