2015-11-25

中東で泥沼に陥るロシア。トルコ軍に撃墜されたスホイ24


ロシアはシリアの「タルトゥース」に軍事港を持っており、ここがロシア海軍の重要な軍事基地となっている。

タルトゥースは中東からヨーロッパ、北アフリカを俯瞰するロシアの重要戦略地点である。ロシアは絶対にこの軍事港から撤退しない。

この重要拠点の使用許可を出しているのがシリアのアサド政権であり、だからこそロシアのプーチン大統領はアサド政権を守っている。アサド政権を守るというのは、軍事拠点である「タルトゥース」を守ることと同義である。

シリア・アサド政権は2011年からチュニジアで起きた中東・北アフリカの民主化運動に巻き込まれ、今や国家崩壊寸前になっている。実際のところ、すでにアサド政権は何の力もない。

それでも倒れないのは、言うまでもなくアサド政権のバックにロシアがいるからだ。

ISIS(イスラム国)が、超暴力でシリア一帯を殺戮の大地に変えているが、もはや反撃の力さえも失ったアサド政権を強力に支援するため、プーチン大統領は2015年8月からより深くシリアに介入を始めた。


シリアにおけるアメリカにとって都合の良い展開


2015年9月以降、ロシア軍はシリア国内のISIS拠点をほぼ毎日のように空爆しており、その猛攻の前にISISはたった1ヶ月で崩壊寸前になってしまったと言われている。

欧米が最初からこのように徹底した空爆でISISの拠点を叩いていれば、この超暴力集団は2014年のうちに消えていたはずだとも言われている。

そうしなかったのは、実は裏でアメリカがISISを支援しているからだという陰謀論さえも流れている。

こうした国際謀略の裏側は決して明るみに出ることはないので、アメリカがISISを本気で叩き潰さない意図はどこにあるのか部外者には何も言えない。

しかし、ロシアの事情を見れば、アメリカ側の「都合の良いシナリオ」も見えてくる。アメリカにとって都合の良い展開というのは以下のものである。

(1)ロシアはアメリカの潜在的敵国である。
(2)ロシアはシリア・タルトゥースの軍事拠点を持つ。
(3)使用許可を与えているのはアサド政権である。
(4)アサド政権が潰れればタルトゥースを奪える。
(5)アサド政権を潰したあとにISISを始末すればいい。
(6)それでロシアを追い込める。

ISISは気の狂ったようなテロリスト集団であり、いずれは始末することになるのだが、その前にアメリカは親ロシアのアサド政権を始末したい。

だから、汚れ仕事をISISにやらせて、アサド政権が倒れれば、あとでISISを潰せばいい。

あくまでもアメリカの目的はアサド政権を叩き潰すことであり、それによってタルトゥースをロシアから奪い、ロシアを中東から追い出すことが可能になる。

アメリカが2014年にウクライナに暴力デモを仕掛けて介入してきたロシアをすぐに経済制裁して追い込んでいるのは、ロシアがずっとアサド政権を支援していて、思った以上にシリア問題が膠着しているからであるとも言われている。



軍事港タルトゥースの場所。アサド政権を守るというのは、まさに最重要軍事拠点であるタルトゥースを守ることと同義である。

ドル通貨基軸からの脱却は絶対許さないアメリカ


ウクライナの暴力も、シリアの暴力も、その本当の目的はロシアの国家崩壊を画策したアメリカの戦略であると見れば分かりやすい。

ドル通貨基軸に挑戦しようとするエネルギー大国ロシアの存在は、常にアメリカにとって邪魔なのだ。

原油をはじめとするエネルギー資源の価格暴落は、2014年から始まっているが、このエネルギー資源の暴落で窮地に追いやられているのもロシアである。

ロシアはG20を牛耳って、中国やブラジルと共にドル通貨基軸から脱却し、アメリカの世界的影響力を削ぐ努力をしていた。

一時はフランスもそのロシアの戦略に乗っていた。

たとえば、IMFの専務理事だったフランスのドミニク・ストロスカーンや、フランスの巨大石油企業トタルのクリストフ・ド・マルジェリ会長兼CEOも、ドル通貨基軸から脱却するというシナリオに賛同を示していたのだ。

石油の決済はドルでなければ行えない。それをドミニク・ストロスカーンやクリストフ・ド・マルジェリはユーロ通貨でも良いのではないかと言い出した。つまり、ロシアとの石油決済からドルを追い出そうとしていたのだ。

この動きにアメリカは激しく怒り、ドミニク・ストロスカーンはレイプ事件をでっち上げられ、その後は徹底的に私生活を暴露されて「乱交パーティ王」とメディアで嘲笑されるようになった。

そして、ロシアと昵懇だったクリストフ・ド・マルジェリの方はロシアの空港で「離陸途中に除雪車と衝突」するというあり得ない事故が起きて「事故死」してしまった。2014年10月20日のことである。

こうしたバラバラに起きている事件は、「それで誰が得するのか」と考えると常にアメリカであり、「誰が損したのか」と考えると常にロシアである。

テロで自国民を殺され、トルコから背後で撃たれた


2015年9月からISISに猛攻を仕掛けているロシアは、アメリカにとって都合の悪い動きである。

アサド政権を崩壊させるためにアメリカは意図的にISISに大暴れさせているのに、ロシアがアサド政権の完全擁護に腹をくくりISISの壊滅をするようになっているのだ。

ISISを殲滅させるという大義をアメリカは反対しにくい。しかし、このままロシアを放置していると、本当にISISは殲滅してアサド政権は生き残るという状況になる。

そうなると、もちろん重要拠点である「タルトゥース」も、いやシリア全体がロシアの支配下になってしまう。プーチン大統領は賭けに出ており、その賭けは実を結びそうになっていた。

ところが、2015年10月31日、エジプト・シナイ半島でロシア機がテロ攻撃で墜落し、乗員乗客合わせて224人が全員死亡するという惨劇が起きた。これはISISの殲滅を目指すプーチン大統領に打撃を与えた。

その打撃が冷めない中、今度は2015年11月24日に、シリアとトルコの国境で、トルコ領内に侵入したとされるロシアのスホイ24戦闘機が撃墜されるという衝撃的事件が起きた。

トルコ軍は「スホイ24戦闘機が度重なる警告にもかかわらず領空を侵犯した」と非難した。

逆にロシア側は「領空を侵犯していない。スホイ24への攻撃は裏切り行為だ」とトルコを激しく批判、プーチン大統領も「トルコを許さない」と激怒する事態となっている。

トルコ軍がスホイ24を撃墜させたとき、ロシア軍パイロットはパラシュートで脱出していたのだが、そのパラシュートで降りて来るパイロットを「シリアの反体制派」が銃撃して射殺したという情報もある。

ISISを殲滅させてアサド政権を延命させるつもりのロシアは勝てる戦いに乗り出したはずだが、テロで自国民を殺され、トルコから背後で撃たれ、誤算続きとなっている。

アメリカは「これはロシアとトルコの問題でアメリカは関係がない」と声明を発し、オバマ大統領は「ロシアが、穏健な反政府勢力を攻撃していることが問題だ」と逆にロシアを責める口ぶりとなっている。

中東の暴力にロシアが介入して事態は複雑になってきているが、それでも方向性は変わったわけでも何でもない。

ロシアはアサド政権を守りたいと思っている。アメリカはアサド政権を崩壊させたいと思っている。その綱引きが激しい暴力となって中東で燃え上がっているのである。

シリアで起きている暴力事件は、国際社会を俯瞰して見ると、アメリカとロシアの代理戦争であることが分かる。





射殺されたと見られるパイロット。ISISを殲滅させてアサド政権を延命させるつもりのロシアは勝てる戦いに乗り出したはずだが、テロで自国民を殺され、トルコから背後で撃たれ、誤算続きとなっている。

お願い

ダークネスTIGAの本文の全文転載は、いかなる理由があってもお断りします。
本文の舞台、参考になる写真がありましたら、提供いただければ嬉しく思います。感想やご意見も、お待ちしております。趣旨に合うものについては、積極的に反映していきたいと考えております。(メールはこちら