2015-11-06

ロシア民間機墜落の裏側で激しく対立するロシアとアメリカ


原油安はブラジルやベネズエラのような資源国家を追い詰めている。2016年、これらの国は国家破綻を含め、危機的な状況に陥る可能性がある。

金持ち国家であるはずのサウジアラビアも、原油安で財政悪化に苦しむようになり、すべてのインフラ・プロジェクトを中止する状況に追い込まれた。このままでは5年後にサウジアラビアは破綻するという声まで出てくるようになった。

そして現在、欧米各国と激しく対立するようになっているロシアもまた追い込まれてボロボロになりつつある。ロシアは5年後どころではない。

この原油安があとどれくらい続くのか分からないのだが、2016年になると、いよいよロシアは政府系ファンド「予備基金」の資金が底をつく。

にも関わらず、ロシアはウクライナからシリアに関与して、ただでさえ枯渇しつつある国費を軍事費に回している。

プーチン大統領の支持率は80%近くあるのだが、反プーチンのジャーナリストや政治家が片っ端から逮捕・暗殺される中での支持率だから、それは実態を表していない。


テロと断定する米英と、それを否定するロシア


そんな中で、ロシアの航空会社「コガリムアビア」の旅客機9268便が2015年10月31日に、エジプトのシナイ半島に墜落して、乗客乗員224人全員が死亡するという事件が起きている。

これは当初、機体に何らかの故障が起きて墜落したのではないかと見られていた。

しかし、すぐにイスラムの超暴力過激派集団であるISIS関連の武装組織が「自分たちが墜落させた」と声明を発表し、一気に事態は緊迫化しつつある。

もしそれが本当ならば、プーチン大統領にとっては痛恨の打撃となる。

プーチン大統領はシリアに介入してアサド政権の支持を表明し、攻撃機50機、ロシア軍兵士を2000名近くシリアに送り込み、3週間に渡ってISISの拠点を攻撃してきた。

このロシアの圧倒的な軍事力を前にしてISISはたちまち劣勢となっていき、プーチン大統領の軍事介入は成功だったと評価されていた矢先だった。

ロシアがISISを壊滅することができると言っていたところに、民間人が200人以上も死亡するテロ事件が起きたわけであり、ロシアにとっては「都合の悪い」出来事であった。

そのため、ロシアはすぐにテロ説を否定し、テロリストを制御できていないと思われたくないエジプト政府もまたロシアと共にISIS犯行説を否定した。

ところが、イギリスは11月4日に「機内に持ち込まれた爆発物が原因となった可能性がかなり高い」と発表し、すぐにシナイ半島の旅客機の乗り入れを停止した。

さらに翌日11月5日に入ると、オバマ大統領もまたイギリスと同じように「機内の爆弾が原因だった可能性がある。我々は深刻にとらえている」と発言した。

これを受けて、プーチン大統領は改めて「テロと断定できない。正式な調査で得られたデータに基づく必要がある」と米英の首脳の発言を牽制した。




ロシアの航空会社「コガリムアビア」の旅客機9268便の爆発の瞬間。これにより、乗客乗員224人全員が死亡した。テロによる爆発なのか、それとも事故だったのか、今も紛糾している。

ISISの裏にはアメリカがいると信じているロシア人


テロと断定されたらまずいロシアと、テロと断定してロシアを追い込みたい米英。

どちらの判断が事実に基づいているのかは私たちにはまったく分からないが、これがテロと断定されたらプーチン大統領が追い込まれることになるのは間違いない。

「ISISにやられて泥沼に陥る」というのは、ロシア国民を動揺させる。その動揺はプーチン政権に対する動揺につながっていくものだ。

現在、ロシアや中東では「ISISはアメリカが裏支援している組織であり、今回の民間機爆発も、もしそれがテロであればアメリカが仕掛けたものだ」という噂が飛び交っている。

アメリカがISISを支援しているという噂は、元々アメリカはシリアのアサド政権を倒すために反体制派に片っ端から武器を横流ししていて、それがISISに渡ったという事実から生まれてきているものである。

さらに、ISISは油田を掌握して石油を闇で売りさばいているが、その現場にはイスラエルがいるとも言われている。当然だが、イスラエルのバッグにはアメリカがいる。

そもそもISISを軍事訓練しているのがイスラエル諜報機関モサドであるとも言われている。ISISはこれだけ暴力を拡大させているのに、なぜかイスラエルだけは狙わない。

そういったことからロシアや中東では、ISISの裏にはアメリカがいて、アサド大統領を支援するロシアにアメリカがよく思わず、ISISを使って民間機を爆破したのではないかと言われているのである。

こういった謀略の真相は今後も判明することはないが、結果からするとロシアは大きなダメージを受けたことになる。

ロシアがシリアの泥沼の内戦に巻き込まれていくのをロシア国民も懸念しており、ただでさえ枯渇寸前の国庫がシリアで消えていくと、ロシアのダメージはさらに深くなっていく。

窮鼠猫を噛むのか、それともなし崩しに倒れるのか


そもそも、2014年後半から始まった怒濤のような原油安も、ウクライナ問題で決定的な対立が明らかになってから起きているものだ。

原油安は、アメリカの「ロシアつぶし」のための動きであるというのは、当初から根強く言われ続けていた。

アメリカは地政学的にもロシアとは対立関係にあり、それは今も変わっていない。ロシアが伸張すると必ずアメリカの同盟国(支配権)が侵略されることになる。

米ソの冷戦時から、こうした地政学的な対立はずっと続いており、こうしたものが「ドミノ理論」や「ハートランド理論」等で説明されていた。

ロシアによるウクライナ問題や中国との同盟強化はすべてアメリカへの脅威になるのである。

分かりやすく言うと、アメリカにとってロシアはいつも「邪魔な存在」であり、ロシアにとってもアメリカは「邪魔な存在」である。

1991年に叩き潰したはずのソ連は、プーチン大統領の支配で強国ロシアとなって蘇り、中国と手を結びながら再びアメリカに対抗するようになっていた。

折しも中国もアメリカと対立する姿勢を見せるようになっており、G20で資源国であるブラジルやベネズエラと共に反米同盟を構築しつつあった。

2014年から始まったのは、こうした反米同盟の中心にいるロシアを叩き潰す動きなのである。

資源国家を叩き潰すには、その資源の価格を暴落させて、経済破綻させてしまえばいい。それによって反米同盟を構成する国々は、ロシアと共にまとめて壊滅する。

2015年もこうした動きが着々と進行し、中国もブラジルもベネズエラも、今や崖っぷちに立って追い込まれている。ロシアも財政的にはあと1年持たない。窮鼠猫を噛むのか、それともなし崩しに倒れるのかは、これからのドラマとなる。



1991年に叩き潰したはずのソ連は、プーチン大統領の支配で強国ロシアとなって蘇り、中国と手を結びながら再びアメリカに対抗するようになっていた。2014年から始まったのは、こうした反米同盟の中心にいるロシアを叩き潰す動きなのである。

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