2015-11-03

メルケル首相はもう状況をコントロールできなくなっている


2015年11月2日、EPA(米環境保護局)は、ディーゼル車の排ガス不正で、ポルシェやアウディ等の高級車7車種でも不正が行われており、アメリカでも約1万台が流通していると発表した。

アメリカは総力を挙げてこのVWグループの不正の実態調査に入っており、EPAだけでなく米下院エネルギー商業委員会もまたVWグループを激しく糾弾している。

「偽りはいつ終わるのか、なぜ長期間発覚しなかったのか。フォルクスワーゲンは白状すべきだ」

これに対してVWグループ側は必死で否定しているのだが、こうしたアメリカの容赦ない追求にドイツ国内では反米感情が生まれており、米独との関係は悪化しつつある。

VWグループの排ガス不正が問題になったのは2015年9月中旬からだったが、7月から9月期の決算では純損益が約2300億円の赤字となっている。

この赤字は「始まったばかり」だ。これからVWグループは数兆円を吐き出すのは確実であり、泥沼のような赤字地獄に陥っていく。

そのドイツが傾斜しているのが中国である。しかし、中国も経済成長が止まって今までの無理に無理を重ねてきたツケが回り始めている。それでも、そんな中国にすがりつくしかないのがドイツである。


アメリカがドイツを叩きのめし、日本が実利を得た


中国がVWグループを歓迎しているのは、中国自身も日米と険悪な関係となって窮地に陥っているからである。互いにその相手としか組む相手がいなくなったから組んだのであって、他に選択肢はなかったのだ。

VWグループとしては、中国人に車を売りつけて助かればいいわけで損な取引ではない。大気汚染にまみれている中国は、今さら排ガス不正など気にしない。

逆に中国側としてはVWグループから技術を盗み、このグループが天文学的な訴訟で倒れれば、安く買収してブランドを自分たちのものにできるという目論見もある。

こうしてドイツのメルケル首相は、まるでプールにでも飛び込むように中国に飛び込み、2015年10月30日も「中国を市場経済国に認定することにドイツは基本的に前向きである」と、ことさら中国を持ち上げて媚びを売ってみせた。

そうでもしないとVWグループは完全に倒壊する。そしてVWグループが死ねばドイツ国家も窮地に堕ちる。何しろ、自動車産業はドイツGDPの10%、輸出の18%を占めている重大な産業なのである。

中国の犬になったと言われようが何だろうが、ドイツ国家の基幹産業となっている自動車産業が死ぬよりマシだ。ドイツが生き残るには、何が何でも中国に傾斜するしかない。

ドイツでは「自分たちを追い詰めたのはアメリカだ」という意識が蔓延して、この排ガス不正からどんどん国民感情が反米に傾いていた。

さらにVWグループの失速で販売好調のトヨタとその日本にも苦々しく見ていると言われている。

つまり、アメリカがドイツを叩きのめし、日本が実利を得たという認識になっていて、ドイツは自分たちは日米の犠牲にされたと怒りを感じるようになっているのである。

今後、ドイツの中国傾斜と反米・反日感情は、よりひどくなっていくことになる。

ドイツ銀行そのものも壊滅的ダメージを受ける


ドイツのVWグループの苦境は、実はドイツのもうひとつの重大な「基幹」にダメージを与えると言われている。それはドイツ銀行だ。

ドイツ銀行はVWグループやダイムラー・グループの株式を大量に保有しており、その顧問団もVWグループの幹部を含め、自動車産業の重鎮が関わっている。

ドイツ産業界の黒幕は「ドイツ銀行」だったのだ。

したがって、VWグループが壊滅的なダメージを受けるということは、ドイツの中核となっているドイツ銀行そのものも壊滅的ダメージを受けるということになる。

問題は、VWグループの排ガス不正問題が取り沙汰される前から、このドイツ銀行はすでに経営の屋台骨が揺さぶられる事態になっているということだ。すでにドイツ銀行は一足先に経営難に陥っていたのである。

その理由は乱脈融資と乱脈経営だ。「誰も責任を取らない体質」で国際的に乱脈融資を繰り返した結果、ドイツ銀行では多額の回収不能金が発生していた。

ドイツ銀行は、ブラジルやイタリアを舞台にした不透明な融資を行ったり、ロシアとの裏取引をしていたり、破綻寸前のギリシャ国債を買い込んだり、無謀なトレードで巨額損失を出したり、ありとあらゆる不透明でリスキーな取引を繰り返した。

そんな中で脱税問題や、顧客との巨額訴訟にも巻き込まれ、もうその杜撰な経営のツケが払えなくなりつつある。

2015年6月にはS&Pによって「BBB+」に引き下げられ、共同最高経営責任者2名が同日に辞任「させられる」という最悪の事態に追い込まれていた。

そこに今度はVWグループの排ガス不正が重なっており、いよいよ追い込まれている。ドイツ銀行は10月29日、2年間で3万5000人を削減すると発表したが、そんなものではとてもドイツ銀行を建て直すことはできない。

ドイツ銀行は遅かれ計れ破綻すると予測する関係者もいる。

メルケル政権は、ここ半年で制御不能になった


さらにこのドイツの窮状を深めているのが、シリア・イラクから大量に押し寄せる難民問題だ。

メルケル首相はドイツ産業界に「安い人手」を供給することを目的にして、当初は「難民を受け入れる」としていた。

ところが、それが聞いた100万単位の難民たちがドイツに向けて殺到する事態となり、周辺国をも巻き込んで巨大難民問題を引き起こすことになった。

ドイツ国民はいっせいにメルケル首相を批判、さらに受け入れた難民の施設には相次いで放火騒ぎが起きるなど、「反難民・反移民」がドイツ国内で吹き荒れ始めている。

ドイツの東部ではドイツ人の集団がバットを持って、シリアから来た難民を集団リンチするという事件や、路面電車の停留所で袋叩きにされるという事件も起きている。

こうした過激な難民排除とは別に、穏健派の反移民・反難民・反イスラム団体である「ペギーダ」は、大規模集会を行って「難民を国外追放せよ」「メルケルは辞めろ」と抗議デモを活発化させている。

「どんな人間も自分の国を持つべきだ。そしてどんな人間もドイツにいるべきではない」というのが彼らの主張だ。「ペギーダ(PEGIDA)」は2015年に入ってからその勢力が大きく膨れ上がっている団体である。

こうした団体が大きな力を持つようになっており、難民問題はドイツでも激しい憎悪と排除と暴力を生み出そうとしている。

何が起きているのかは一目瞭然だ。メルケル首相はもう状況をコントロールできなくなっている。今まで、絶大な信頼と安定感のあったメルケル政権がここ半年で制御不能になってしまったのだ。

このままメルケル政権が事態の収拾ができないで混乱を増長させていけば、ドイツの崩壊とユーロの崩壊が見えてくる。

果たしてドイツには未来があるのだろうか。



急激に支持率を落とし、ドイツと共に窮地に追いやられていこうとしているメルケル首相。メルケル首相はもう状況をコントロールできなくなっている。

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