2015-09-28

VWグループの失墜は、ユーロや世界経済を巻き込むのか?


消費者に「環境に優しいクリーンな車である」と売り込んでいたVW(フォルクスワーゲン)のディーゼルエンジン車は、クリーンどころか汚染物質をまき散らす公害車であった。

悪質だったのは、VWグループの上層部もその事実を知っていながら、何年も隠していた可能性があることだ。

これによってVWグループは巨額の懲罰金、リコール、刑事訴訟に見舞われ、存続の危機に陥る可能性がある。

さらに、この問題が長引けば長引くほど、VWグループのみならず「ドイツ車」そのものの信頼も崩壊してしまう危険性もあり、自動車大国を自認していたドイツ経済そのものが凋落してしまうかもしれない。

VWグループがこれほど悪質な不正をそのままにしていたのは、言うまでもなくこのグループが品質よりも金儲けの方を優先して突っ走ったからである。

そしてこの企業は「金儲けできるなら何でもする」「金儲けできるなら誰とでも組む」と言わんばかり、中国に傾倒して売上を伸ばし、2015年1月から6月の販売台数はトヨタ自動車を抜いて、世界最大の自動車メーカーとなった。

今回の事件は、まさに頂点に駆け上がったその瞬間に暴露されたわけであり、「最大限まで持ち上げられて、叩き落とされる」という最もダメージの大きなスキャンダルになった。


世界の頂点に立ってから起きたスキャンダル


低い坂から転がり落ちるより、高い坂のてっぺんから転がり落ちた方がダメージが大きい。

まだほどほどの売れ行きのときに起きたスキャンダルより、売れに売れて世界の頂点に立ってから起きたスキャンダルの方がダメージが大きい。

世界ナンバーワンになるまで売りまくり、その時点で責任を取れと言われた場合、今まで売った分をすべてリコールして回収しなければならない。

今回、VWグループは約1100万台という史上空前のリコールを行う可能性があることを報じているが、売って売って売り尽くした後に、それらをすべて回収して修繕しなければならないわけであり、それにかかる費用もまた史上空前の規模になる。

さらにここから損害賠償、懲罰金、信用失墜による売上の減少に見舞われる。

このVWグループの不正が報じられたのが2015年9月18日金曜日のことだった。土日をはさんで翌21日の月曜日には株価は一気に20%近く暴落、さらに22日も同じく20%近く暴落した。

たった2日間で、VWグループのスキャンダルは時価総額の4割を吹き飛ばす惨事と化した。

これを受けて、2015年9月25日には、息つく間もなくアメリカの法律事務所がVWグループに「不正によって損失をこうむった」として集団訴訟の準備に入ることが報じられた。

今後、欧米ではVWグループに対する集団訴訟が山のように引き起こされることになり、VWグループはそのすべてに敗訴する可能性がある。

その上、アメリカの司法省がVWグループの経営者に対して刑事訴訟を前提とした調査に入っている。

もし、司法省がVWグループの経営幹部が意図的・組織的な不正をしていると断じた場合、VWグループは空中分解の危機に直面する。

まさにブラックコメディさながらの皮肉が起きた


VWグループの経営幹部は、排ガス不正プログラムの存在を知っていた可能性が高いことが、その後の調査で徐々に明らかになりつつある。

しかし、経営幹部がそんなことを認めたら自らが刑事訴訟に巻き込まれるだけでなく、会社そのものの存続すらも危うくすることになるので、絶対に何があっても「知らなかった」で押し通すことになる。

知っていても、もはや経営幹部は素直に知っていたと言えない立場にある。しかし、この部分が訴訟で揉めれば揉めるほど、VWグループの信頼は地に堕ちていくのも事実である。

認めても地獄、認めなくても地獄。VWグループの地獄はこれからである。

信頼を失ったVWグループが巻き返せるのか、それとも崩壊してしまうのかは今のところ誰にも分からない。

自動車産業はドイツの基幹産業であり、このグループの崩壊はドイツ政府にとっても放置できない問題だ。ドイツ政府は必死になって自動車産業を守ろうとするだろう。

ドイツ政府の必死の巻き返しが功を奏すると、やがて回復の道も見えてくるかもしれない。しかし、「失った信頼」まで劇的に回復させることができるのかどうかは、今のところ未知数であると言ってもいい。

ヨーロッパは環境保護に熱心であり、ドイツ国民も環境意識は非常に高い。

そんな環境保護の本家本元が「クリーン・ディーゼル」と謳いながら環境破壊をしていた。環境意識が強かった分だけ失望も大きかったはずだ。

環境意識が高い人間が環境のためにクリーン・ディーゼルを選択したら、それが最悪の環境破壊をしていたわけで、まさにブラックコメディさながらの皮肉である。

これでVWグループの信頼がすぐに回復するとしたら、ヨーロッパ人の環境意識というのは逆にその程度だったということになってしまう。

ユーロの失速は、ユーロの崩壊をも示唆する


この問題の対処を間違うと、ドイツ経済は完全に失速する。

ドイツ経済が失速すると、そのままユーロ経済も一緒に失速する。ドイツはユーロ最大の経済圏であり、ドイツの失速はユーロの失速なのである。そして、ユーロの失速は、ユーロの崩壊をも示唆する。

現在、ユーロは難民地獄に見舞われていて、もはや収拾がつかない状態になっている。このような状態になったのも、そもそもドイツが労働力を得るために難民を利用しようとしたことから端を発している。

ドイツは必要な分だけの移民を国内に入れると、あとはさっさと国境を封鎖して、難民を受け入れない他国を非難する側に回った。

こうしたやり方は他国に激しい恨みを買っているが、それでもドイツがこうした唯我独尊の態度でいられたのも、ドイツ経済が他国を圧倒していたからでもある。

しかし、ドイツ経済が突如として不振に見舞われて坂道を転がり落ちていくのであれば、ユーロ各国に対する求心力は急激に失われていく。

ユーロ圏では各国で移民・難民の排斥の気運が爆発的に膨れ上がる危険な空気になっているが、これはユーロ圏の経済停滞と無関係ではない。

仕事がない。わずかな仕事も移民が低賃金で奪う。さらに不景気が襲いかかって失職者も増えていく。そんな中で、ただでさえ混迷の度を深めているユーロは、混乱状態になってもおかしくない。

VWグループの問題は、対応をひとつ間違うと、すぐにユーロ全体の問題になる。ユーロは、ギリシャ・ショックとはまた違う、大きな波乱をユーロは抱えることになった。

中国が経済失速して世界経済を停滞させている中で、今度はユーロも経済失速して世界経済を停滞させる可能性がある。

一歩一歩、世界経済が危険なことになりつつある。



VWグループの問題は、対応をひとつ間違うと、すぐにユーロ全体の問題になるのだ。ギリシャ・ショックとはまた違う、大きな波乱をユーロは抱えることになった。

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