2015-08-12

中国が通貨切り下げを行い、世界経済が激動の時代に入った


中国が人民元を切り下げに動いているが、その理由は明らかだ。経済の減速が隠せなくなり、不動産の価格が低迷した後に人為的に作った株式バブルも2015年6月に崩壊したからだ。

中国はそれでもGDP7%の数字を出してきたが、いまや中国の出す統計数字など信じている人間は誰ひとりとしておらず、実際には3.5%かそれ以下ではないかとも言われている。

中国はもう成長が止まってしまったのだ。

しかし、ここで経済成長が止まってしまうと、中国は膨大な貧困層を取り残したままとなる。それが社会不安を膨れあがらせ、中国政府に向かっていく。

だから中国政府は100兆円以上もの資金を投じて上海株式市場の暴落を人為的に抑え、さらに国際社会の協調はまるっきり無視して人民元の切り下げに動いてきた。

この中国政府の身勝手な生き残り策は、世界中に影響を与えるのは必至である。(中国の暴落は世界の行方を左右する超弩級の変化になるか?


通貨切り下げには、デメリットも存在する


中国が通貨切り下げを行ったのは、輸出がうまくいっていないからだ。中国は2015年8月8日に7月の貿易統計を発表しているが、それによると輸出は前年比で8.3%の大幅減少に見舞われている。

これは世界の景気そのものが減速しているということもあるが、中国の製品が人民元高となって価格競争力を失ったことも原因のひとつとして存在する。

だから、中国は「より安く売るため」に人民元の切り下げを行ってきたのである。

早い話が、中国企業の輸出する多くの製品は「価格が高くなったら見捨てられる」程度の価値でしかないということを示唆している。

本来であれば、ここで革新的な技術や製品、創造的な商品を生み出す必要があるのだが、パクリとダンピングでやってきた会社が、いきなり付加価値の創造などできるわけがない。

だから、人民元が高くなるとすぐにやっていけなくなる。そして、足元が崩れていくことに恐れをなした中国政府が、いきなり通貨切り下げを行ったという流れになっている。

2015年8月11日に行った人民元の切り下げは1.9%だが、果たしてそれで止まるのかどうかは分からない。貿易統計の結果、輸出の減速が止まらないのであれば、さらに切り下げが進んでいく可能性がある。

この通貨切り下げによって、中国企業の価格競争力は回復する。中国政府の狙いはそこにある。しかし、通貨切り下げにはデメリットも存在する。

そのデメリットとは何か。

中国政府の目論見通りに動くかどうかは分からない


中国人の投資家、資産家、個人から見ると、人民元が切り下がるというのは何を意味しているのか。それは、資産の減少である。

2014年には不動産価格が頭打ちになってズルズル下がって資産が減少し、2015年6月からは上海総合指数が吹き飛んで資産が減少し、さらに今度は通貨切り下げで資産が減少しようとしている。

このまま人民元で資産を持っていると、もっとひどいことになるかもしれない。そうすると、人々は人民元を捨てて他の安心できる通貨に乗り換えようと動き出す。

世界で最も安心できる通貨とは、ドルを指す。そのために中国から資産がどんどんアメリカに流出していく可能性がある。中国の株式を売って資金を逃がす動きも出てくるので、株式市場も常識的に考えると下落の方向に向かう。

ただ、人民元安で企業の業績が回復する可能性があるので、中国の輸出企業の株価は逆に上がるものもある。中国政府が狙っているのはその方向だ。

しかし、中国政府の目論見通りに動くかどうかは分からない。大きな落とし穴がある。

なぜなら、通貨の価値を下げるということは輸入価格が上がるという意味であり、これによってインフレが発生する可能性があるからだ。

つまり、中国人民にとっては資産が2%も減少する上に、2%のインフレが起きる可能性もあるわけで、往復ビンタで悪影響を受けることになるのである。

仮にインフレが鮮明になると、人々はモノを買わなくなる傾向が強まるのだから、企業業績は悪化する。すなわち株価は下がっていく。

「通貨切り下げ、競争力向上、経済成長」という好ましい流れになるのか、それとも「通貨切り下げ、インフレ、経済停滞」という流れになるのか、誰にも分からない。

ただ、中国経済はすでに減速が鮮明になっているので、何もしないわけにはいかなかった。だから中国政府は、必死でもがきながら、後先考えずに手を打っているのである。

通貨切り下げが東南アジアに悪影響を与える理由


通貨切り下げによる混乱は、中国の外にも広がっていく。中国が通貨切り下げをしたのであれば、今度はどこか他の国がそれに追随するかもしれない。

たとえば、東南アジアのどこかの国がそれをするかもしれない。「なぜ中国だけ、そんな都合の良いことが許されるのか。中国が通貨切り下げをするのなら我が国もやる」という国が出てきてもおかしくない。

これが、「通貨戦争」と呼ばれるものである。実は、中国が通貨切り下げをすると、それに合わせて東南アジアやインド・ブラジルのような新興国からも資金が逃げていく動きになる。

なぜ中国が通貨切り下げをしたら東南アジアから資金が逃げるのか。通貨切り下げによって中国企業の価格競争力を回復するのだが、それは東南アジアの企業がワリを食うという意味でもあるからだ。東南アジアの景気が悪くなる。

景気が悪くなると企業の業績が落ちて、東南アジアの企業の株価も下がることになる。グローバル・マネーはそれを見越して東南アジアから出ていく。

そのため、価格競争力を失いたくない東南アジア諸国のどこかは、中国に対抗するために通貨切り下げを行うかもしれない。ところが、力のない国が通貨切り下げを行うと、輸入品の価格が上がるためにインフレを招く恐れが高い。

通貨安によるインフレは新興国の経済を破壊する大きな要因となり得る。

つまり、中国の通貨切り下げが東南アジアに波及すると、最も悪いシナリオとして、「第二のアジア通貨危機」が起きる可能性すらもある。

2015年6月から、世界経済を取り巻く環境は激しく変わっている。まだ、はっきりとした動きではないが、場合によってはアジアから次の世界経済の大混乱がやってくるかもしれない。

中国が、その引き金を引いた。



2015年8月11日に行った人民元の切り下げは1.9%だが、果たしてそれで止まるのかどうかは分からない。貿易統計の結果、輸出の減速が止まらないのであれば、さらに切り下げが進んでいく可能性がある。

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