2015-06-20

3年雇い止めは序の口。今後も労働環境が悪くなる4つの理由


2015年6月19日、労働者派遣法改正案が衆院を通過した。

これによって、派遣労働は抜本的に変わる。専門26業務と言われる職種でも、製造業の派遣と合わせ、同じ職場で働く場合は3年が上限となる。

分かりやすく単純化して言うと、今後は3年経つと「派遣先が雇用する」「派遣元が雇用する」「新たな派遣先を派遣元が紹介する」という3点が行われなければならないことになる。

一般的に正社員は「長く働き続けたい」と思うなら、会社が傾いていない限り、それはある程度可能だ。

それに対して派遣労働者は、同じことを思っても3年で上限がくる。法律が「3年まで」と決めたからである。派遣労働者は3年ごとに人生の見直しを迫られるのだ。

この改正案が良かったのか悪かったのかは、人によって見方が違う。

たとえば、「優秀な人であれば3年経ったら正社員化の道が拓かれる」と前向きに考えることも可能だ。逆に「企業の都合で3年で雇い止めにされる」と考えることも可能だ。


この改正案は、もちろん企業側に有利なものである


この法律を企業側から見れば、どのような変化になるのだろうか。実は利用価値の高い変更になる。

たとえば、3年働かせて、個人が優秀であれば正社員にして囲い込める。逆に要らない人間だと思えば最長でも3年で「堂々と」切り捨てることができるようになる。

企業は私たちが考えている以上にドライなので、本当に要らない人材だと思えば3年も待たずに契約を切る。

今までは「雇い続けて下さい」と懇願する派遣労働者を無理に切ると揉めることも多かった。雇い止めを強行すると、企業が悪者にされた。

しかし今後は、3年経てば法律を楯に契約を切れる。

「そんな法律になった」と言えば、企業に法律違反をさせてまで雇ってくれとは誰も言えない。だから、3年で自動的に契約が解消されるこの改正案を企業は歓迎するだろう。

企業側に有利であるということは、働く側には不利であるということである。そのため、この法律改正案については、多くの派遣労働者が強い危機感を持っている。

3年で正社員の道が拓かれるどころか、むしろ3年で雇い止めされる可能性が高いのだから、不安になるのは当然のことだ。

最も大きな影響を受けるのは、年齢が高くなった派遣労働者である。

20代ならばまだ働き先はいくらでもあるが、これが30代、40代と年齢が高くなればなるほど「次」が見つけにくくなる。50代を過ぎると、正社員になるどころか次の仕事を見つけること自体が切実な問題となる。

どんなにその業界に熟練していても、50代を超えると仕事が見つからないことの方が多い。

労働環境はさらに悪化していく4つの動きとは


現在、労働環境が悪化しているのは日本だけではない。もともと終身雇用がなかった海外でも、労働環境は悪化していく一方である。

特に先進国の労働環境は、それが顕著になる。大きな理由として4つある。

1つめは、格差の問題だ。現代社会は良い仕事を見つけるには、高いスキルと高い学歴が必要になっている。

ところが、スキルを付けるにも、学歴を得るにも、自分の家庭にある程度の資産がなければならず、貧困層の家庭ではそこからして難しい。

そのため貧困家庭の子供たちは、経済的理由からスキルも学歴も得られず、不安定な身分で、不安定な職に就くしかない。

2つめは、グローバル化の問題だ。現代は企業がグローバル化している。企業は賃金の安い国、安い場所を目がけて仕事を移動させており、それがコスト削減の基本となった。

そのために、先進国の労働者よりも途上国の労働者の方に仕事が回る。途上国の方が圧倒的に賃金が安いからだ。

多くの大企業がいっせいに同じ動きをした結果、先進国の労働者はどこも仕事が以前よりも見つかりにくくなった。

3つめは、インターネットの技術革新である。インターネットが社会のインフラになると同時に起きたのは、多くの仕事がアウトソーシングされていったということだ。

会計も、コールセンターも、システム開発も、サーバー管理も、ありとあらゆるものがアウトソーシングされていった。さらに、情報がサーバーで一元管理されることになり、中間管理職の仕事まで不必要になった。

企業はかつてよりも少ない人員で回るようになったのだ。

労働に対する価値は今後もどんどん減少していく


この3つの流れが同時並行で起きた結果、先進国の労働者はどんどん要らなくなったのだ。

そこに4つめの波もやってきている。それは「移民」だ。途上国の人間がグローバル化の波に乗って「豊かな国」である先進国になだれ込む。

そうすると、先進国の労働者が考えもしないほどの低賃金で移民が働くようになり、やがて企業は安く雇える移民の方を先に雇うようになっていく。

日本は移民を認めていない。しかしその日本でも「留学生」や「研修生」という名目でやってきた途上国の人間を、労働者と見なしている。そして、彼らをひたすら安くこき使って、利益を上げている。

さらに今後は、インターネットで制御された「ロボット」が単純労働の仕事をどんどん奪っていく。仕事が消えていく中で、苦境に落ちた人たちが労働単価を安売りしていく流れは食い止められない。

こうした状況が絡み合って労働環境を悪化させている。3年雇い止めは序の口だ。これからもっと悪くなる。労働に対する価値は今後もどんどん減少していくからである。

言うまでもないが、正社員であっても勝ち組ではない。終身雇用はすでに否定されている。正社員であっても、いつリストラされるか分からない時代だ。

いったんリストラされると、次はよほど優秀でもない限り、正社員での仕事は見つからなくなる。

40代以上で正社員の立場を失うと、その多くが派遣労働者になるはずだ。

そして派遣労働者になると、今回の労働者派遣法改正案を見ても分かる通り、3年で雇い止めになる確率が高い。3年で振り出しに戻り、気が付けば歳を取っている。仕事はますます見つけにくくなる。

そうやって格差は広がり、貧困層が裾野を拡大していく。



仕事はどんどん減っている中で、苦境に落ちた人たちが労働単価を安売りしている。この流れは序の口だ。状況はもっと悪くなる。

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