2015-04-28

黒人差別から見えるアメリカの「解消できない3つの事実」


2015年4月12日、メリーランド州のボルチモアでフレディ・グレイという名前の25歳の黒人青年が警官の尋問中に死亡するという事件が起きた。

フレディ・グレイは警官の尋問中に抵抗し、6人の警官に取り押さえられて逮捕された。そして、護送される途中で意識を失い、死亡した。死因は「脊髄の損傷」だった。フレディ・グレイは激しい暴行を受けて死んだのは明白だった。

その前に、2015年4月4日に、サウスカロライナ州でも、やはり黒人男性が尋問中に白人警官から背後から撃たれて死亡している。

白人警官が黒人男性を必要以上の暴力で殺してしまう事件はアメリカで立て続けに起きて、アメリカの黒人たちが「これは紛れもない人種差別である」といきり立っている。

アメリカでは1991年に白人警官が黒人のロドニー・キングを集団で袋叩きにするという事件が起きてアメリカ全土を揺るがす暴動が発生したが、あれから24年経ってもまだアメリカは変わっていなかった。


黒人に対する偏見と差別を増長させるもの


黒人が射殺されて撃った人間が無罪になるという事件は2012年2月にフロリダ州で射殺された黒人少年トレイボン・マーティンのケースが記憶に新しい。

自警団のひとりが怪しいと思った「フードをかぶった黒人少年」を追い回して、彼が抵抗したらそのまま射殺したというのがこの事件のすべてだった。

そこで、「フードをかぶった黒人はみんな犯罪者」という偏見と差別が問題になったのだが、実は「実際そうではないか」という声も多く、問題の複雑さが浮き彫りになっている。

黒人の貧困は相変わらず解消されておらず、それが犯罪や治安の悪化や暴力を生み出していると社会学者は分析している。実際、アメリカで黒人の犯罪率は高く、それがこの偏見と差別を増長させることになっている。

2015年4月12日に警官の過剰暴力で死んだフレディ・グレイも、実を言えば麻薬取引で逮捕された前科を持っていた。

とは言っても、単に怪しいというだけで警官に殺されるのも黒人からしてみれば、たまったものではない。

このフレディ・グレイの死に抗議して、2015年4月25日に1000人ほどの黒人が集まったのだが、現在、その一部が暴徒と化して、今も破壊・略奪・放火が発生している。パトカーも破壊され、ドラッグストアも襲われて商品が略奪された。

フレディ・グレイは低所得層の黒人だったが、彼が逮捕された場所もまた低所得層が集まる区域であったと言われている。そして、暴動を起こしている黒人たちもまた低所得層の黒人たちでもある。

そういったことから、この事件の背景もまた「貧困」が解消できないアメリカの社会が生み出したものであると分析する識者も多い。

良い仕事を得るには教育がいる。教育を得るには?


貧困に落ちているのは多くが黒人やヒスパニック等の有色人種で、特に黒人の貧困率は高い。黒人の貧困率は27.4%、ヒスパニックの貧困率は26.6%。4人に1人は貧困状態である。

黒人は黒人だけが住む場所に集まっていて、それが自然のゲットーになっていく。貧困層が流入するので、そこがますます荒れていく。

また、その区域の犯罪率も高く、ドラッグ犯罪もカージャックもこういった地区で発生する。

現在、アメリカでは空前の株高で、資産家や富裕層はますます資産を増やしている。しかし、低所得層は株式に関心を持つこともなければ、株式を買うこともない。

株式を買うというのは、その前に基礎的な教育が必要であり、さらに余剰資金も必要なのだが、貧困層はその二点が不足しているか、あるいは完全に欠如している。

良い仕事を得るには教育がいる。教育を得るには金がいる。つまり、貧困層に生まれた子供たちは、それがゆえに教育を得る機会を奪われ、そのために最初から良い仕事が得られない。

良い仕事が得られないので余剰資金を生み出すこともままならず、株式を買うどころではなくなって貧困から逃れるきっかけがつかめない。

そんな中で、白人警官が自分たちを「生まれながらにして犯罪者」のように扱い、逆らった者は容赦なく撃ち殺して無罪になる。低所得層の黒人が激しい不満と社会に対する怒りを覚えても無理はない面もある。

彼らは、常に社会から見捨てられたままになっている。そして、フレディ・グレイ事件のようなきっかけがあると、一気に爆発し、暴動・略奪・放火のような事態となっていく。

誰も言わない「解消できない3つの事実」とは


アメリカの現状を見ていると、誰も言わない「解消できない3つの事実」が浮き彫りにされているように見える。

(1)差別は解消できない。
(2)貧困は解消できない。
(3)格差は解消できない。

リンカーンが奴隷解放宣言をしたのは1862年だった。その瞬間、黒人たちは差別から逃れられたのだろうか。いや、黒人たちは延々と隔離され、トイレも、バスも、教育も、別々にされていた。依然と差別の中にあったのである。

こうした現状に抗議して公民権運動が盛り上がったのが1950年代であり、人種差別撤廃を求める20万人以上の人々がワシントン記念塔広場を埋めつくしたのが1963年8月だった。

このとき、キング牧師は「私には夢がある」という有名な演説を行った。「いつの日にかこの国が、私の4人の子どもたちが、肌の色でではなく、その人となりで評価されるようになるという夢が……」

この演説から52年経った今も差別は完全に解消できておらず、黒人の貧困も目立った改善はない。一部は成功しているが、多くは失敗している。

さらに、教育の欠如、仕事の欠如が続いて格差は広がっていくばかりとなっており、それは解消に向かっているのではなく拡大に向かっている。

アメリカは自由の国であり、さらには民主主義の国であり、世界で最も人権に敏感な国であり、イノベーションを起こす国でもある。そのアメリカでさえも、差別も、貧困も、格差も解消できないばかりか、悪化させている。

この現実は「アメリカの限界」というよりは、むしろ「人間の限界」を示しているのかもしれない。



フレディ・グレイの死に抗議して、2015年4月25日に1000人ほどの黒人が集まったのだが、現在、その一部が暴徒と化して、今も破壊・略奪・放火が発生している。

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