2015-02-23

「ピラミッド観光収入はアップル年間売上の30分の1」の意味


ギリシャが相変わらず国情不安でユーロ圏のみならず、世界経済を動揺させている。

このギリシャという国は、20世紀最大の海運王と呼ばれたアリストテレス・オナシスを見ても分かる通り、海運業が盛んな国である。

そして、この国の命運を握っているもうひとつの大きな柱が、「観光」である。美しいエーゲ海に、古代遺跡の数々。ギリシャの見所は多い。

世界中から多くの観光客がギリシャに訪れ、多額の金を落としているのだが、それでギリシャ人は豊かになっていったのかと言われれば、それほどでもない。

古代の石ころはギリシャの名を高めるのに役立っているが、ギリシャ人はグローバル社会で富裕層にはなれなかった。

世界有数の「観光明地」として知られている国としては、エジプトもまた有名だ。エジプトが世界地図のどの辺にあるのか知らない人でさえ、「ピラミッド」の存在だけは知っている。


観光業にぶら下がっても、あまり意味がない


エジプトもまた観光立国であると言ってもいい。しかし、だからと言ってエジプト人がみんな富裕層と化して、世界に君臨しているという話にはなっていない。

もちろん、このピラミッド観光で生計を立てて何不自由なく暮らしている人たちはエジプトにたくさんいる。ピラミッドに対する人類の知的好奇心は止まらないだろう。

それでも、ピラミッドが生み出す観光収入は約60億ドル相当であると言われている。60億ドルと言えば、大した金額のように見えるかもしれないが、グローバルな経済社会の中から見ると存在していないも同然だ。

最近、アップル社の時価総額が7000億ドルを超えたと話題になったが、アメリカの1企業でしかないこの企業は2014年通期売上は約1800億ドルだった。

この企業はピラミッドの30倍も金を稼ぎ出しているのである。逆の言い方をすれば、ピラミッドが稼ぎ出す収入はアップル1社の30分の1しかない。

アップルは素晴らしい企業だが、それでもアメリカの「一企業」である。アメリカには、こういった多国籍企業が山ほどある。エジプトには、ピラミッドしかない。

世界有数の観光地があって、その観光地にぶら下がるようにして国が生きていたとしても、それは大したことにならないというのは、そういうことだ。

東南アジアでは、荘厳なるアンコール・ワットが有名だ。では、カンボジアは押し寄せる観光客の落とす金で富裕国家になったのだろうか。いや、カンボジアは今もまだ貧困国として喘いでいる。

日本では京都や奈良の大仏が国外で知られていて、大勢の観光客が来ているが、京都や奈良の住民は日本を代表する富裕層なのだろうか。

富裕層はそこにはいるのだろうが、日本を代表しているのかどうかと言われれば、「それはない」と誰もが思うに違いない。

美しい観光地よりも、醜悪な工場の方が重要だ


東南アジアのタイは世界有数の観光立国だ。南米のブラジルも世界有数の観光立国だ。しかし、この両国が新興国として経済成長の緒に就いたのは、「工業国」となったからである。

タイのアユタヤ遺跡や、ブラジルの有名なリオのカーニバルが経済成長を促したわけではない。

投資家は古代の石ころやブラジル女性の弾ける肉体に可能性を見出していない。新しい「工業国」として可能性を見出したから、そこに金を投じたのである。

中国の経済発展もまた同様だ。中国は万里の長城や山水画の世界で有名な桂林のような観光地があるが、世界はそれを評価して中国が経済成長すると思ったわけではない。

黒煙を吐き上げ、非人間的な工場で働く大量の工員の姿を見て、そこに経済発展の可能性を感じたから金を出していた。中国の経済発展は、観光業が成し遂げたのではなく工業化が成し遂げたのである。

観光地は美しくて派手で国のアピールには最適だが、本当に重要なのは観光客がひとりも寄りつかない工場の方だ。

そう考えると、国を発展させるには、「観光国になることではない」というのが分かるはずだ。それを目指すのは無駄ではないが、それを国の基幹産業にしたところでたかが知れている。

分かりやすく言えば「おもてなし」など、国家の優先事項から見ると、まったくどうでもいい話なのである。同じく、カジノのようなバクチ会場を作ることも、どうでもいい。

それよりも世界に通用する強大な日本国籍の多国籍企業を日本にキラ星のごとく存在させる方が、もっと重要であることが分かる。

日本が経済発展して世界に通用する国になったのも、世界に通用する企業があったからである。金閣寺や奈良の大仏は、あまり役に立っていない。

資本主義の本質的な仕組みを利用して生きる


19世紀、イギリスは「7つの海を制覇した」と言われるほど強大な国家となったが、それはなぜなのか。女王陛下が素晴らしかったわけでも、当時の政治が巧みだったからではない。

イギリスは産業革命を成し遂げ、世界で最初の「工業国家」となったからだ。そして、イギリス企業がグローバル化し、世界に君臨していったのである。

ドイツもまた「工業国家」と化してイギリスを追いかけていった。第二次世界大戦を経て、世界有数の工業国はアメリカとなったが、その結果としてアメリカは世界を支配する「帝国」となっていった。

グローバル社会を制しているのは「国家」ではない。グローバルにモノを売っている多国籍企業だ。この本質的な仕組みは今後も変わることは決してない。資本主義が終わらない限り、多国籍企業の時代も終わらない。

それであれば、この狂気に満ちたグローバル社会で生き抜くには、利益を稼ぎ続けている多国籍企業に関わることであるというのが分かるはずだ。

遺跡や、国家は、今の時代には役に立たない。そんなものに関わるよりも、もっと重要な存在である「多国籍企業」を意識しておかなければならない。

多国籍企業に関わるというのは、そこで働くか、もしくはその企業の株式を所有するかのいずれかで成し遂げることができる。一番確実なのは、株式を所有することである。

昔の石ころや、政治家は、私たちの人生の面倒を見てくれない。うまく多国籍企業に関われる人が、グローバル化した弱肉強食の資本主義でうまく生き残れる可能性が高い。


エジプト人はピラミッド観光にぶら下がって生きているが、エジプトの観光収入はアップル社の年間売上の30分の1しかない。

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