2014-12-12

現代文明は、石油という「ドラッグ」が必要な重度依存者だ


石油価格が下がっている。これによって、アメリカのシェールガス企業が苦境に落ちている。

すでにシェールガスの開発は採算割れになっているので、体力のないところは持たない。

この石油価格の急激な下落は2014年10月から始まっているのだが、9月までは1バレル90ドルを何とか維持していたWTI原油先物も、それ以降は一度も反発する気配を見せず、今もまだ急落し続けている。

2014年12月11日、WTI原油先物は1バレル59.95ドルとなり、ついに大台を割り込んで終了した。

石油価格急落の理由は、いくつもの要因が絡んでいる。

まず、第一に中国経済の成長が急停止したことだ。次にアメリカのシェールガス開発によって供給が過剰になったことだ。さらに、サウジアラビアがアメリカのシェールガス企業をつぶすために、わざと石油価格の値下げを演出していることだ。

この3点だけでも、石油価格急落を招くのに十分な理由だが、それだけではなく、もっと政治的な意図もある。


原油安で追い込まれているのは、ロシアの方だ


アメリカは現在ウクライナ問題によってロシアと対立しており、ロシアに対して経済制裁を行っている。アメリカはロシアを弱体化させる方向で動いている。

ロシアは1日あたり1000万バレルを算出する巨大なエネルギー大国だが、このロシアを追い詰めるにはエネルギー価格は下落させればいい。

これによってロシア経済は追い詰められ、場合によってはプーチン政権を崩壊させることも、ロシア国家そのものを国家破綻に追い込むことも可能になる。

アメリカのシェールガス会社が倒産するのと、ロシア国家が崩壊するのとでは、どちらがダメージが大きいのか。

それを考えれば、どちらが原油安を仕掛けているのかくらいはおおよそ検討が付くはずだ。原油安によって追い込まれているのはアメリカではなく、ロシアの方なのだ。

ロシアは原油価格の値下がりを受けて、株式市場もルーブルも崩壊寸前だ。ロシア中央銀行はルーブル防衛のために2014年12月11日、政策金利を10.5%に引き上げたが、それでもルーブル安は止まらない。

さらに、政策金利を引き上げたことによって株式市場もまた下落を余儀なくされている。

ロシアが原油安を仕掛けてアメリカが崩壊寸前になっているとしたら、アメリカのドルは価値を失ってボロボロになっているはずだがドルは盤石だ。ドル安どころかドル高になっている。

致命傷に追い込まれているのはロシアである。アメリカではない。原油安はロシアの首を締め上げ、ロシアは急激に国家存続の危機に陥っている。アメリカは、原油安でロシアを追い込めることを「喜んでいる」状態だ。

原油安で追い込まれていくのはアメリカより新興国


原油安は、「成長鈍化」と「供給過多」と「政治問題」によって意図的に誘導されていると言ってもいい状況である。そのいずれも現在進行形の問題だ。まだまだこれからも続いていくのは間違いない。

ということは、原油価格が60ドル割れをしたのも単なる通過地点であり、石油はもっと安くなる可能性がある。

どこまで安くなるのか誰にも分からない。60ドルで頭打ちだと考える人もいれば、40ドルまで落ちるという人もいれば、30ドルまでいくと考える専門家もいる。

意見が割れているというのは、要するに誰も何も分かっていないということであり、状況次第ではどちらにも転がるということでもある。

仮に1バレル50ドルを割ると、採算割れした石油企業や産油国の破綻が表面化していき、それによって世界経済は激震することになる。石油会社の問題だけではなく、世界経済の問題となっていく。

まず、国家崩壊する可能性があるのはベネズエラだ。ベネズエラは産油国であるにも関わらず、今や国家崩壊一歩手前まで追い込まれており、これ以上の原油価格崩壊には耐えられない。

次にブラジルも追い込まれる。ブラジルを代表するペトロブラスは現在、汚職事件で幹部20人が一斉逮捕されて、決算報告すらできない異常事態に追い込まれている。

2014年12月11日には、元幹部や取引先含め35名が起訴されるという最悪の事態となった。

中国も成長鈍化して不動産バブルも崩壊寸前になっているが、新興国が持てはやされる時代は、もうとっくの昔に終わっており、新興国共倒れの時代に入っているのである。

原油安は新興国の苦境をさらに加速させていくわけで、この大きな流れの中では中国がどんなにもがいても無駄だ。中国の時代は来ない。このまま行くと、アメリカ衰退どころか、むしろアメリカのひとり勝ちの時代になりそうな勢いである。

現代文明は、石油という「ドラッグ」が必要だ


石油価格は、どう転ぶのか分からない状況になっているが、原油安が40%近くも下落している以上、石油企業が追い込まれるのは必至だ。

すでにエクソン、シェブロン、コノコ・フィリップス、BPといった名だたる石油企業の多くが石油価格の急落と合わせるように株価下落に見舞われている。

つまり、多くの投資家が石油企業を見捨てている。

無理もない。石油企業はどんなにコスト削減をしても、石油価格の下落をカバーできない。石油価格の下落がそのまま業績の悪化につながっていく。

このまま原油価格の下落が長期化すると、さらに財務上の痛手は大きくなる。石油企業に投資している投資家は今後数年、ひどい目に遭わされることになる。

しかし、こうした原油価格の下落は一生続くわけではない。

現代文明はいくら石油の代替エネルギーを捜したところで、根本的には石油から脱することができないからだ。つまり、人類は石油から逃れることができない運命なのだ。

喩えれば、現代文明は、石油という「ドラッグ」が必要で、それなしには生きていけない重度の依存症になっている。石油が切れると禁断症状に苦しみ、もだえる。それが現代文明のリアルな姿だ。

それが分かっていれば、現在の状況は永遠に続かないという結論になるはずだ。

石油企業は現代文明の根幹を握っている。下落した石油企業の株式は、ハゲタカ投資家が時間をかけてきれいに食べてしまうだろう。


石油は現代文明のドラッグだ。現代文明はそれなしに生きていけない。

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