2013-10-14

あなたは「競争原理」によってワナを仕掛けられたも同然だ


オリンピックでは、すべての選手が国を背負って大会に臨むので、選手たちは猛烈なプレッシャーを背負うことになる。国民の期待を一身に背負い、まわりから期待され、絶対に勝てとはっぱをかけられる。

自分が負ければ、国が負けたことになる。自分が負ければ、自分を代表する民族が負けたことになる。

だから、選手の多くは、どうしても負けられない、絶対に負けられないという悲壮な決意を背負って、大会に出なければならない。これほど究極的な「競争原理」はあまりない。

そして、どうなったのか。

現在、オリンピックで最大の問題になっているのはドーピングだ。選手は、勝つために「何でも」する。薬物を使って、身体能力を極限まで高めようとする。

たとえ、あとで後遺症が出たとしても、オリンピックの一瞬に賭ける。あらゆる栄養素・興奮剤・ホルモン・ステロイドが極限ギリギリまで注入されていく。

相手がそうするから、勝つためには誰もがそうする。これが、「競争原理」のもたらす未来である。


社会のすべてに「競争原理」が取り入れられた


現在、社会のすべてに「競争原理」が取り入れられている。

教育、文化、経済、金融、政治、軍事……。すべてが、グローバル化によって、オリンピックのように仁義なき競争となっていったのだ。

グローバル経済というのは、国を超えた極度の「競争」を生み出す。世界中が「敵」になるのだ。そのために、多くの弊害が明らかになりつつある。

たとえば、先進国のリストラ・失業問題も、言ってみれば熾烈な「競争原理」が生み出した現象だ。

企業は競合相手に勝つために、商品を安く作りたい。そして、安く作るためにコストを削減したい。コストを削減するために低賃金の人間を雇いたい。

だから、先進国の人間は大部分がリストラされるか、給料の引き下げになる。これは先進国の人間には不幸なことだ。では新興国が幸せなのか。

いや、彼らの給料が上がったらどうなるのか考えればいい。同じく捨てられる。つまり、遅かれ早かれ先進国の人間と同じ目に遭う。

企業は果てしなく低コスト・低賃金の国を探し求めて移動していき、その過程で労働者はいつでも捨てられる。

そうしないと企業は生きていけないので、まるで駆り立てられるように動き回っているのである。

市場経済の競争に打ち勝つために低コスト・低賃金の人間を雇うしかない。これは、言ってみれば、熾烈な「競争原理」のために、人が犠牲になるということでもある。

日本人の賃金はこれからも徹底的に引き下げられる


グローバル経済になるというのは、すなわち競合が世界になる、ということである。自由貿易である限り、安いものが大量に海外から流れ込んでくる。

だから、国内製品といえども、価格の高いものは支持されなくなる。これは日本も例外ではない。

日本企業の生き残りのために必死になって、日本人を捨ててアジアの低賃金国の人を雇った。

企業が自国を捨てて、賃金の安い国を求めて出て行くのだから、国内は空洞化する。グローバル経済は、どこの国でも必ず空洞化を引き起こす。

その結果、先進国の人間の給料は完膚なきまでに引き下げることになる。それがグローバル経済の作用だ。

アジアでもっとも高賃金なのは日本だから、日本人の賃金はこれからも徹底的に引き下げられるのは既定路線になっているのである。

これは、TPP(環太平洋経済連携協定)によって、もっと加速する。TPPは24分野をグローバル経済の「競争原理」にさらす。

この24分野というのは、医療、福祉、教育、法律、金融、通信すべてを含んでいる。

激しい「競争原理」が取り入れられると、24分野すべてで、「高賃金の人間を捨てる」「低賃金の人間に入れ替える」という現象が起きるということだ。

必然的に起きるのは、誰かに雇用されている人間の給料は劇的に暴落していくということだ。

あなたが誰かに雇われているのであれば、激甚化する競争原理の影響から免れることは絶対にできない。

「競争原理」では、勝者だけしか幸せになれない


「競争原理」とは、勝者しか幸せになれないシステムになっている。オリンピックでは、必然的に金メダリストだけしか評価されないのと同様だ。

「1%の金持ちと99%の貧困層」という社会は、まさにそれを表した言葉である。

アメリカは自由競争を徹底的に推し進めたが、これは極限的な「競争原理」に邁進したということだ。

その結果、「勝者総取り」の社会になって、中流階級が崩壊し、2013年10月12日のウォール・ストリート・ジャーナルにもある通り、国民の15%が極貧に堕ちるという悲惨な傾向になってしまった。

それでもまだ、この「競争原理」は非常に強く強調され、推進されているのが現状だ。

エンターテイメントの世界でもそうだ。音楽も、映画も、ありとあらゆるコンテンツは、有意義かどうかではなく、「どれだけ数字が取れたか」によって評価されることになる。

すべて、「激しい競争原理」の中にある。そして、すべてにひずみを生み出してきた。とにかく、勝者しか幸せになることができない社会を私たちは生きているのである。

競争原理が限度を超えて進むと、やがて競争に勝つことだけがすべてになってしまう。そして、勝つためには手段を選ばなくなる。

ドーピングをしても、ずるをしても、相手をワナにかねても、騙しても、とにかく勝つことだけが重要になる。そして、勝てば「勝者総取り」となり、敗者は完全に叩きつぶされる。

このような極端な競争原理の行き着く先は、自壊しかない。

勝者も、この競争原理の中で、無理に無理を重ねて来ている。だから、最後には自壊する。勝者が崩壊するとき、その競争原理を支えてきた分野が一緒に崩壊する。



競争原理で発展した世の中だが、それが暴走した


競争原理を支えてきた考え方はこうだ。

(1)競争によってお互いが切磋琢磨される。
(2)すぐれた物(人)が生き残る。
(3)すぐれた物(人)で社会は発展してゆく。

これは、環境に合わせて生き残ってきたダーウィンの進化論の考え方にも似ていて、非常に心地よい。いわゆる「適者生存」という思想だ。

また、20世紀はまさにこの競争原理によって社会がうまく機能してきた。

工業は、この競争原理によって品質を高め、生産性を高め、競争力を高め、社会を発展させてきた。より優れた技術・より優れた科学が、競争原理によって登場した。

だから、競争原理を受け入れるのは現代人としてはまったく当然のことで、疑う人はどこにもいない。

しかし、これがさらに加速していき、暴走していけばどうなるのか。競争に勝つために、いろいろなものを犠牲にしていくことになるのである。

オリンピックのドーピングと同じだ。企業は勝つために何でもするようになる。

ライバルを敵対買収したり、低コストの人材を求めて正社員を切り捨てたり、低賃金国へ移転したりする。

また、人々を徹底管理して、奴隷的に働かせたり、子供労働を黙認したり、コストがかかるので産業廃棄物を垂れ流したり、公害を放置したりする。勝つために、嘘も言う。相手を騙す。相手を叩きつぶす。

そんな過剰で容赦ない競争で、もはや社会そのものが瓦解しそうなまでになっている。

グローバル経済は、暴力的なまでに競争原理を加速させていったので、ありとあらゆる社会矛盾が吹き出してしまった。

競争原理で動いてきた現在の文明が、いよいよ末期症状を見せ始めたと解釈していい。

必ずしも優れた企業が生き残るとは限らない


もう一度、競争原理を支えてきた考え方を見てほしい。

・競争によってお互いが切磋琢磨される。
・すぐれた物(人)が生き残る。
・すぐれた物(人)で社会は発展してゆく。

人々は、競争原理がこれを繰り返すと思ったのである。今でもそう思っている人たちがいる。しかし、現実はそうではなかった。

・競争によってお互いを潰しあう。
・強い物(人)がすぐれた物(人)を叩きつぶす。
・強い物(人)だけが独占して社会が停滞する。

暴走した競争原理が、策略・ワナ・裁判・特許・中傷・買収によって、互いに相手を叩き、潰し合い、必ずしも優れた企業・技術・人が生き残るとは限らなくなった。

暴力と策略と弱肉強食思想を徹底した「非人道的・非人間的」な存在が、優れたものを破壊して回り、独占し、社会が停滞する元凶になっていった。

競争とは、お互いに相手とフェアプレイで戦って、互いに成長するためのものだった。

今の社会は、もうそうではない。競争によって、相手をつぶすだけに奔走するようになったのだ。

そして、競争原理そのものが、多くの脱落者や経済破綻を生じさせている。

そして、持つ者と持たざる者の差が極端なまでに広がったとき、もはや競争そのものが成り立たなくなっていく。

競争を仕掛けるのは、常に最初から勝てると思っている側であることは覚えておいたほうがいい。

19世紀は産業革命に成功したイギリスが世界に競争原理を仕掛けた。20世紀はオートメーション化に成功したアメリカが世界に競争原理を仕掛けた。

なぜ勝てる相手が競争を仕掛けるのか。さらに収奪できる場を広げるためである。

圧倒的な力を持つ者が競争を仕掛けるというのは、ワナでしかない。

今、あなたが肝に命じなければならないのは、「もう競争社会が社会の発展するためのものでなくなった」ということだ。それなのに、競争は正しいと人々は完膚なきまでに信じ込まされている。

もはや、「競争によってお互いが切磋琢磨」ではなく、「競争によってお互いを潰しあう」という社会に気がついて欲しい。今の社会の競争原理は、あなたからすべてを取り上げるワナになった。



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