2013-06-21

ブラジル100万人超デモの裏側には、貧困層の激しい怒りがある


ブラジルは次の新興国であると日本のマスコミは煽って煽って煽り続け、日本人の多くがブラジルに投資してきた。

しかし、そのブラジルは非常に格差が激しい国家であり、また暴力・犯罪都市のひとつである。

ブラジルの蔓延する暴力の根底には激しい格差や、貧困層の群れや、麻薬の蔓延がある。麻薬の蔓延と言えば今は誰もがメキシコの惨状を思い起こす。

しかし、メキシコのみならず中南米はその全土がほぼ深刻な麻薬禍に覆われて、それぞれが世界で最も危険な犯罪都市となっているのである。

貧困層が厚い層を形成していて、そこに麻薬が浸透している国というのは、それ自体がひとつの爆弾を抱えているようなものである。

その爆弾は火が付かなければ無視できる存在なのだが、いったん火が付くと国もろとも吹き飛ばす危険性がある。ほとんどの場合、爆弾の導火線を発火させるのは「インフレ」という現象だ。


貧困層が多い国ではインフレが致命傷になる


貧困層がインフレに弱いのは、貧困層がぎりぎりの生活を余儀なくされており、少しでも物価が上がると生活できなくなってしまうからである。

だから、どこの新興国もインフレには非常に過敏に対処する。万一、インフレ対策に失敗すると、暴動やデモが起きて政権が激震するのでなおさらだ。

2010年は、アメリカが巨大な金融緩和をしたせいでコモディティ(商品)市場に怒濤の如く投機マネーが押し寄せて、石油も小麦も根こそぎ値を上げて新興国にインフレが押し寄せた。

それによって中東アラブ諸国でもインドでも激しい暴動やデモが誘発されて、それが2011年のチュニジア・エジプト・リビアの政権崩壊にまで結びついたのは記憶に新しい。

中東で起きた一連の独裁政権崩壊の一番最初のきっかけというのは、チュニジアで物価高に食べて行けなくなった貧しい学生が自分に火を付けて自殺したことから始まっている。

政府がインフレを放置していると、貧困層全員が生活苦のために激しい不満を持つようになり、怒りがマグマのように充満していく。そして、本当に些細な事件がきっかけになって大爆発していく。

2013年6月2日から、ブラジルで過去最大級の激しい反政府デモが吹き荒れている。きっかけは何だったのか。

それは「バス運賃の値上げ」だ。

たかが、バスの運賃を値上げするという些細な出来事が、瞬く間に抗議デモとなり、数十万人が呼応し、反政府運動になり、やがて全国各地に抗議デモが飛び火し、ルセフ政権を激震させている。



もともとブラジルは投資に値する国だったのか?


この抗議デモはすでに3週間目に入っているのだが、収束するどころか、逆に拡散していっている。

デモ活動はブラジル各地の100都市で行われており、総勢100万人がデモに参加する巨大な規模になっている。

問題となったバス料金の値上げはすでに撤回されているが、それでも事態が沈静化しないのは、バス料金だけが問題になっているわけではないからだ。

多くの国民は、物価全般を覆うインフレや、政府の貧困対策や、汚職に対して非常に激しい不満を持っている。

このような国内問題を放置していながら、コンフェデレーションズカップやワールドカップのような「くだらない」ものに金をかけていることに怒りを感じているのである。

確かにブラジルにとってサッカーは重要なスポーツであるのは間違いないのだが、それよりも生活をどうするのかという問題の方がはるかに切実だ。

ブラジルでは食料品がインフレで高騰している。ブラジルでは2010年からインフレ率は5%を超えており、2013年は6%となっている。

ブラジル政府は景気が低迷していることから利上げは避けたいという意向があったが、インフレ圧力に抗しきれず2013年5月29日には0.5%利上げしたばかりだった。政策金利はこれで年8.0%になった。

不景気の中の利上げだから、ブラジル経済は問題を抱えているのは外部から見ても明白だった。これを受けてボベスパ指数は下落に入っている。

もともとブラジルは投資に値する国だったのか疑問に思う人も多かったが、その疑念はさらに深まっている。



ブラジルは綱渡りの中で国家運営を迫られている国


ブラジルが、いかに暴力にまみれているのかというのは、こちらで書いた。(貧困という母は、暴力という息子と、売春という娘を生み出す

ブラジルには見渡す限りの貧困が広がっており、麻薬戦争も起きていることはこちらでも取り上げた。(ブラジルは何としてでも麻薬戦争に勝利しなければならない

ブラジルの暴力について描かれた非常に秀抜な映画も作られており、それを見ただけでもブラジルの抱えている問題が分かる。(エリート・スクワッド。ブラジルの暴力・腐敗を映した傑作

ブラジルの底辺がいかに荒れているのか、そしてその暴力がどれほど凄惨なものなのかは、ブラックアジア(会員制)でも多く取り上げている。

22歳の売春女性が路上でめった切りにされた事件もあった。(22歳の売春女性、路上でめった切りにされ、血まみれで死ぬ - 会員制 - )

ボーイフレンドを奪った相手を拷問して焼き殺すような事件も起きていた。(ライバルをパーティーに呼んで拷問、焼き殺した売春女性 - 会員制 - )

拉致監禁され、レイプや暴力を受け続けて何とか助かったが、髪の毛は切り落とされて顔面が変形してしまった女性までいた。(生き残った彼女の凄惨な姿を、あなたは見ることができるか - 会員制 - )

レイプされて殺され、ゴミ袋に包まれてゴミのように捨てられた女性もいた。このような事件が日常茶飯事なのがブラジルなのである。(レイプされて殺され、ゴミ袋に包まれて捨てられた女性の姿 - 会員制 - )

多くの日本人はブラジルを、これから発展する国で「投資の対象」として見つめているが、「暴力国家である」という視点を持たないと足元をすくわれる。

ブラジルを投資適合国家として見るのは、もちろんブラジルの「陽」の部分に焦点を当てている。しかし、ブラジルの持つ「陰」は、投資家が無視できるほど小さなものではないのだ。

ブラジルは、投資対策のためには金利を下げて株価を上昇させたい。しかし、それをするとインフレが起きる。インフレが起きて暴動が発生するのであれば、金利を上げるしかない。

しかし、インフレを抑えるために金利をどんどん上げていくと、景気は悪くなってまた貧困層を追い詰める。

ブラジルは綱渡りの中で国家運営を迫られている国だ。

今回の暴動を何とか抑えられたとしても、圧倒的なまでの貧困層と治安の悪化と麻薬と汚職が放置されるのであれば、今後も何度もブラジルは危機を迎える。

ルセフ大統領が巧みな舵取りができるのかどうかは、まだまだ未知数であることが今回の暴動で露呈した。





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