期間限定・数量限定キャンペーン

2013-03-26

キプロスで起きている預金封鎖や預金消失は、他人事ではない


キプロスが2013年3月16日から預金封鎖をしている。同国第二位のライキ銀行は消失、さらに10万ユーロを超える大口預金の保護も対象外になった。

これにより、同国の経済活動が事実上停止してパニックに陥っており、26日には再開させるはずだった銀行業務も再延期された。

大口預金者の多くはロシア人の金持ちであることから、問題はユーロ圏のみならず、ロシアにまで波及している。これがこじれると、さらに別の国に問題が拡大していく可能性がある。

たとえば、このキプロスの惨状を見たユーロ各国の国民は、自分の国を振り返って不安に駆られる可能性が高い。たとえば、ギリシャ、イタリア、スペインの国民たちは、すでにユーロや政府そのものに強い不信感を抱いている。

キプロスで起きた「預金封鎖」や「貯金取り上げ」を見て、「やはり銀行などまったく信用ができない」と気がついたらどうなるのか。

取り付け騒ぎの拡大だ。


ユーロ圏の弱い部分が次々と問題に


問題のある組織やシステムは、必ず弱いところから問題を引き起こしていく。

ユーロというシステムも、ギリシャやキプロスと言った政治力や経済力の弱いところから問題を引き起こし、それが全体を不安定化させていることが見てとれる。

ドイツやECB(欧州中央銀行)がユーロを安定化させようとすればするほど、その強権に影響を受けるギリシャやスペインやイタリアで反発が生まれる。

ドイツのメルケル首相は、今やヨーロッパを征服しようとする「新しいナチスだ」と揶揄され、他国の国民から激しく嫌われるようになっているほどだ。

ユーロというヨーロッパを覆う経済統合は、グローバル経済がうまくいっているときはうまく行くシステムに見えた。

しかし、いったんグローバル経済が不調に陥ると、政治的な不協和音がどんどん目立つようになって、ユーロというシステムが機能しなくなりつつある。

ユーロについては2010年からずっと「崩壊」が語られてきた。毎年のように崩壊寸前にまで追い込まれては「問題先送り」をしてしのいでいる。

狙いは「問題を先送りしているうちに、また好景気が巡って来て、それが自ずと問題を解決する」というシナリオだ。

グローバル経済が「巨大な市場」と「成長エンジン」を世界のどこかで見つけることに成功すれば、好景気の波は再びやってくる。

しかし、それが「見つからない」のでグローバル経済は停滞しており、その結果ユーロ圏の弱い部分が次々と問題を引き起こしているのである。

キプロスで起きている事象を風刺している画。

新興国の台頭が先進国の労働者を追い詰めた


かつては「新興国の成長」が長らく世界経済を牽引するのではないかと思われていた時代があった。

これらはBRICSと呼ばれ、ブラジル・ロシア・インド・中国などに莫大な投資金が流入していった。

これらの国が成長することによって巨大市場がそこに生み出され、世界中の多国籍企業が物を売りまくることによって、世界中が潤うというストーリーだった。

それはかなりの部分まで成功し、実際にこれによって中国のような新興国は「巨大市場」となった。

ところが、多国籍企業間に強烈な競争が巻き起こることになって、商品の価格はどんどん下げられるようになり、先進国の企業はコスト削減を迫られるようになった。

もっとも高いコストとは人件費だ。だから、賃金の高い先進国の労働者はどんどんリストラされていくようになった。

そういった人たちが増えていくと、ますます安物しか売れない時代になる。そうすると、さらに企業はコスト削減に走り、先進国の企業はリストラを加速させていく。

その結果、先進国のあちこちで失業者が増え始める。それは不景気を呼び、社会を不安定化させ、政治を不安定化させ、市場を減退させていく。

先進国市場が減退すれば、当然、そこに物を売っている新興国も、物が売れなくなって不景気になる。

各国政府は、この不景気を何とか打開しようとして金融緩和に走るのだが、この金融緩和がまた新たな問題を引き起こす。

預金封鎖されたキプロス。1日100ユーロしか引き出せない。

各国政府が債務を抱えすぎて危機に


景気が悪いと、カネが実体経済で回らない。しかし、政府が金融緩和するのでカネが余る。その余ったカネが、全世界に「投機機会」を探し求めてさまようようになった。

2000年代に起きていたのは、そういった動きだった。

巨大なカネが不動産や、サブプライムローンのようなリスクの不明確な債権をも買い上げるようになり、それが破綻したのが2008年9月15日だった。

リーマン・ショックと呼ばれているこの市場大崩壊劇は、資本主義をも崩壊させかねないほどのスケールと規模で全世界を覆い尽くしていった。

世界中の投資銀行、証券会社、保険会社等はことごとく破綻寸前になっていった。これを放置していたら間違いなく資本主義は崩壊していた。

そこで各国政府はこういった金融企業を「大きすぎてつぶせない」と言って、国債を大量発行して救済していったのだった。

これはすなわち金融機関のバクチのツケ(不良債権)を政府が引き受けたということに他ならない。

当然のことながら、今度は各国政府が債務を抱えすぎて危機に瀕するようになっていった。

アメリカやユーロ圏で繰り返し起きている政府の負債を巡る問題は、そのほとんどがリーマン・ショックが起因になっているものである。

リーマン・ショック以降、ユーロ市場は縮小し、それが新興国の成長をも縮小させた。新興国の成長が鈍化すると、それをアテにしていた先進国の成長も鈍化する。

先進国の成長が鈍化すると、新興国に資金が流れなくなり、それがよけいに新興国を停滞させる。不況を深化させる危険な「負のスパイラル」がずっと続いている。



資本主義が続く限り、この傾向は続く


グローバル経済には成長が必要だ。その成長が失われた場合、世界中がつながっているのだから、「世界同時不況」となって先進国も新興国も合わせて不調になっていく。

2008年9月15日以降、世界は絶不調に陥ってグローバル経済の雄であるアメリカですらも停滞を余儀なくされている。

政府は金融機関を助けるため、無尽蔵に量的緩和をしてきたが、その金はやはり景気の悪い実体経済には回らなかった。

その代わり、これらの余った資金は株式市場や国債市場に流れ込んだのだ。

だから、「金融市場だけ」は、実体経済の不調とは裏腹に、リーマン・ショック以前の水準に戻っている。

分かりやすい言い方をすると、金融市場に資金を投入していた人間だけが、現在の状況の中で「うまく立ち回った」ということになる。

ところで、金融市場に資金を投じている人間のほとんどは、言うまでもなく資産家である。

巨大で代表的な金融市場と言えば、何と言っても株式市場だが、一般層はほとんど株式を持っていない。また、株式に対して懐疑的であるか、興味も持っていない。

これは日本人だけではなく、世界中で言える傾向である。

一般層は現金しか持たない。しかし、その現金は、常にインフレの中で消えて行き、貯金をしても国家が崩壊寸前になると、預金封鎖や増税で奪われて行く。

グローバル経済の根幹にあるのは、株式なのだ。だから、株式と密接な関係のある資産家は、持っている株式にもよるが、ますます資産家になる傾向が高い。

逆に株式と疎遠な一般層は、ますます貧困に落ちていく。資本主義が続く限り、この傾向は続く。

日本でも、すでにアベノミクスで、株式を持っている人間と持っていない人間では30%も40%も差が付いた。ほんの数ヶ月、たった数ヶ月でそうなった。

安部首相は「インフレを起こす」ことを明言している首相なのだから、未だ現金しか持っていない人や様子見をしている人は、とても困難な時代になるはずだ。

現金しか持っていなければ、今後のグローバル社会の中でどうなるのか。

それは、今のキプロスの国民に聞いてみるといい。

キプロスで起きている預金封鎖や預金消失を、他人事のように見つめていてはいけない。

日本は世界最悪の累積債務国家なのだから……。




お願い

ダークネスの本文を他サイト(キュレーションメディア、まとめサイト、個人サイトすべて)へ転載する行為は、いかなる理由があっても固くお断りします。