2013-02-20

儲かればいい企業と安ければいい消費者が作り出す悪夢の世界


ヨーロッパで牛肉と謳っていた肉をDNA検査してみると、馬肉だったという「偽装スキャンダル」が拡大している。

アイルランドの食品基準監督当局が、イギリスのテスコ社が販売していた製品に馬肉が混入していると発表したのが発端だ。

しかし、そこからイギリス、フランス、スウェーデン、ルーマニア、そしてドイツと、馬肉混入の事実が次々と明らかにされていき、これがEU諸国で常態化していたことが判明した。

2013年2月1日には英バーガーキングから、100%ビーフと宣伝していた肉も馬肉が混入されていることが発覚した。

そして、2月19日にはスイスのネスレも、自社製品のパスタ製品に馬肉が混入していたとして、自主回収騒ぎをする騒ぎとなった。

馬肉がどこで混入されていたのかというのは諸説があるのだが、分かっているのは、どこか一箇所の工場が混入させていたのではないことだ。

ヨーロッパ全域の食肉加工業者が裏で混入させていた状況になってきている。


あってはならないことが起きている


日本人は犬や猫を食べない。だから、仮にスーパーで買った豚肉が、実は犬や猫の肉だったとしたら、衝撃的なショックを覚えるはずだ。

ほとんどの人がおぞましいと思い、それを食べてしまったことに吐き気を覚えるのではないだろうか。

イギリス人にとって馬を食べるというのは、それと同じ感覚があるようで、だからこそこの偽装は犯罪的行為であると激怒している。

あってはならないことが起きているのだ。

ところが、いったいどこでどのように馬肉が混入したのかという調査になると、それがはっきりしない。

イギリスでは国内の食肉処理場を強制捜査を行って、すべての肉を押収しているのだが、問題は国外から入ってきた肉の方にある。

食肉加工業者から消費者に届くまでの間に、多くの業者が複雑に入り組み、商品も国境を越えて売られていくから、一国の捜査権では限界があるのである。

さらに、それぞれの国でも、屠殺する業者と、加工する業者が分かれていることもあって、一概に食肉処理業者が悪いという決めつけもできないようだ。

加工業者が牛肉だと思って仕入れた肉が、実は馬肉だったとしても、すでにそれが解体された肉のブロックになっていたら、判別することができない。

2013年1月13日には、EU諸国が緊急会議を開いて、さらに深い調査を約束しているが、互いの国が相手国に責任転嫁している。

おまけに、EUにまたがる犯罪組織が、この問題の裏に暗躍しているとも言われており、食品偽装が非常に根の深い問題である可能性が出てきた。



牛肉100%だったのか? いや、馬肉だった。

コスト削減を追求するグローバル企業


ここに、現代のグローバル経済が抱える深刻な問題が隠されている。

実は食品偽造は馬肉だけの問題ではない。世界中の至る所で、ラベルとは違うものが混入されて売られることが、今や「常態化」してしまっているのである。

日本でも、激安の回転寿司ではネタが偽造のオンパレードであると言われており、それを告発するジャーナリストも多い。

ヒラメは実はアブラガレイ、アナゴはウミヘビ、カツオはアロツナス、サーモンはニジマス、タイはアメリカナマズ……。

これらは悪質なのだが、店側はまったく逮捕されることもなく、告発されてもまだ堂々と偽装が続いているということだ。

偽装すればコストを下げられるので、他店よりも安く提供できる。安く提供できれば、消費者も喜んで文句は言わない。

どのみち、食べて分かるものではないから、そういったところから少しずつ偽装されて、常態化されていく。

中国はまさにこの偽装食品作りの元凶になっている国で、フカヒレも、卵も、米も、肉も、牛乳も、ありとあらゆるものが偽装されて販売され、日本にも輸出されている。

偽造がビジネスになっているのである。

それがビジネスとして成立するのは、グローバル経済が「コスト削減」を追求するからだ。

競争に勝つために、企業はありとあらゆるコスト削減を試みるようになっている。

それが人間に向くと極端な「賃金下げ」「リストラ」「派遣」「アウトソーシング」となって行き、それが商品に向かうと、「品質劣化」「素材偽装」になっていく。



ビーフだったのか? いや、これも馬肉が混じっていた。

コスト削減のためにそれは行われた


製造地と消費地が違うのがグローバル経済の特徴だ。

流通が極限まで効率化されて発達していったので、流通業者は世界中を駆け回って、徹底的に安い商品を買い上げる。

自国で生産されたものを重視するのではなく、1円でも安いものを重視するのだ。逆に言えば、製造業者は中身や品質がどうであれ、とにかく1円でも安く提供できれば儲かる。

だから、中には偽装に走る製造業者が出て来るのだが、バレなければ、それが堂々と「世界中」に売れていく。

世界中の人々が安いものしか買わなくなるので、よけいに安いものが出回っていく。

日本でもグローバル経済の浸透と共に100円ショップのような店が爆発的に増えたが、100円ショップが結局は自分の首を絞めることになるとは誰も思っていない。

しかし、100円ショップにはワナがある。これについては、以前に書いた。(100円ショップでの安物買いが、人生を破綻させる5つの理由

なぜ、牛肉100%と謳われているのに、そこに馬肉が混入されたのか。もちろん、牛肉よりも馬肉の方が安かったから、コスト削減のためにそれは行われたのだ。

そこで混ぜられた馬肉は、病気で死んだ馬の肉だったかもしれないとも言われている。なおさら、コストは安かっただろう。

儲かれば何でもいいと言う企業と、安ければ何でもいいと言う消費者が出会うと、何が起きるのかという良い見本が、このヨーロッパの馬肉スキャンダルである。

もちろん、これは対岸の火事ではない。食品偽装は日本では流通の闇の中で無数に行われているからである。

あなたが、食べているものは大丈夫だろうか?

それは偽物の材料が使われた偽装食品かもしれない。そうだったとしても、あなたは分からない……。




コスト削減のためなら何でもするという姿勢で破綻した老舗の船場吉兆。もはや老舗ですら信用できない時代になったことを窺わせる事件だった。

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