2013-01-28

揺れ動いている中東。産油国サウジアラビアを巡る不穏な空気


2013年1月11日、サウジアラビア東部で数万人の人々が反政府デモを行っている。

サウジアラビアではサウード一族が絶大な権力を保持してから、すでに80年近くになる。サウジアラビアの「サウジ」もサウード家の名前から来ている。

すなわち、サウジアラビアという国は、サウード一族という権力者の独裁で国ができているのである。この80年でサウード一族も増えて、国民の2700人に1人が王族になっている。

そんな国だから、政治は安定していると言えば安定しているのだが、2011年の「アラブの春」が中東・北アフリカに拡散していくと、いよいよサウジアラビアも雲行きが怪しい状況になりつつある。

2012年7月、サウジアラビアの中枢であるサウード政権に反対するシーア派の聖職者であるナムル師が逮捕された。

これによりサウジアラビア東部で抗議運動が勃発し、これがずっと続いているのである。


いよいよ反政府運動が活発化


サウジアラビア国内は、イスラム国家とは言えども宗派で分断されている。具体的に言えば、サウード家はワッハーブ派、貧困層はシーア派である。

このシーア派が東部の油田地帯に多く住み、しかも王族スンニ派に対して大きな不満を持っている。

これが国内問題として存在していたのだが、これまではサウード家の絶対的権力の前で、ほとんど問題になっていなかった。

しかし、2011年1月からチュニジアで反政府デモが起きて、これが瞬く間にエジプトやイエメン等に拡散していくと、一気にサウジアラビアも不安定化していった。

呼応するようにサウジアラビアのシーア派貧困層が、シーア派への差別、不公正の終結、言論の自由を求めて反政府のデモを繰り広げるようになったのである。

「法を犯し、社会の秩序を乱そうとする者がいる。治安部隊は、あらゆる手段を用いてそれを阻止する」

2011年3月5日、サウジアラビアの内務省は声明を発表し、国営サウジ通信がそれを伝え、この反政府デモは徹底鎮圧された。

鎮圧できなければ、激しい騒乱に巻き込まれていく可能性もあった。サウジアラビアは世界最大の石油輸出国だ。この国がエジプトやリビアのような無法地帯になると、その影響は計り知れないものがある。

2012年9月26日にもサウジアラビア東部の町アワミーヤで反政府デモが起きているが、このとき治安部隊が3名を殺害した。

逮捕者はこの時点で700名を出しており、これらの逮捕者が裁判もなく不当に拘束されたままだ。この他にも3万人にものぼる人たちが「政治犯」として収監されている。

そして、2013年1月24日でもサウジアラビア東部で、シーア派の人々が反政府のスローガンを叫んでおり、いよいよ反政府運動が活発化してきていることを窺わせた。

反政府デモに湧き上がるサウジアラビア

サウジアラビアの過剰防衛


状況は芳しくない。すでにサウジアラビアの周辺国は流血沙汰が続いていて、デモの規模が日に日に膨らんで収拾がつかない事態となっている。

悪い方向へ、悪い方向へと転がり落ちようとしている。

2013年1月27日、エジプトではムルシ大統領が非常事態宣言を宣言しているが、これらのデモがまるで伝染病のように中東各地で拡散している。

サウジアラビア国家は防戦に必死になっており、反政府デモについてはこのような見解を出している。

「イスラム法や同国の社会の価値観、習慣に反する」「サウジは他の国とは違う。そんなものは認められない」「社会の混乱を招くデモや集会や座り込みは全面的に禁止する」

しかし、押さえ込んでも押さえ込んでも、デモが自然発生的に起きている状態だ。

今のところ、これらのデモは、シーア派による待遇改善のものだったり、失業者の抗議デモであったり、あるいは逮捕されたシーア派の宗教指導者の解放だったりして、必ずしも王政打倒や民主化要求ではない。

しかし、中東と北アフリカが揺れ動いているこの時期は、要求やきっかけが何であれ、当局にとっては危険なものだという認識がある。

どこかのタイミングでそれらが王政打倒へと結びついたとき、サウジアラビアは根幹から崩れて事態の流動化を招くことになる。

すでにサウジアラビアでは女性たちもデモに加わって、「女性の権利向上」「民主化」を求めるようになって、これが共感を得ている。

民主化の要求とは、すなわち絶対的な王政に対する挑戦になる。

サウジアラビアの治安部隊。

石油ショック(オイル・クライシス)の再来


万一サウジアラビアに、もしものことがあると、中東・北アフリカは、もはや全崩壊する可能性さえ見えてくる。もはや、アラブ諸国は、どこの国も無傷ではあり得ない。

何としてでもシーア派を押さえ込まなければ、サウジアラビアの王政そのものが吹き飛んでいるかもしれない。ある意味では瀬戸際に立っているという言い方もできるだろう。

問題は首都リヤドでも民主化を求める人々が叫び声を上げていることだ。こういった「抗議の芽」が次々と湧いて出ている。

どこかのタイミングで不測の事態が起きる可能性は十分にある。

現在、互いに神経戦を繰り返しているところだから、今後どうなるのかは誰も分からない。

分かっているのはこれらの一連の反政府デモが流血の惨事になったとき、サウジアラビアもまた騒乱の波に飲まれていくことになるということだ。

そのとき、石油価格はどうなるのか。

もちろん、サウジの騒乱が激しいものになればなるほど、より高騰していくことになるだろう。

そのサウジそのものが騒乱に巻き込まれていくと、世界の石油供給は劇的にストップする可能性がある。

そのときは現在高騰している石油はさらに上を向いて、暴騰するところにまで行き着く。つまり、石油ショック(オイル・クライシス)の再来だ。



サウジアラビアにも暗雲が漂い始めている


もう1973年の石油ショックを覚えている人は50代以上の人間だけになった。

しかし、サウジが騒乱に巻き込まれれば、誰もが1973年の石油ショックを再経験することになるだろう。

石油ショックが再来すると、ガゾリンの高騰はガソリンだけではなく、あらゆる物資の激しいインフレを引き起こす。

折しも現在は世界的に金融緩和が行われている途上であり、日本もいよいよ2013年から明確なるインフレ政策に舵を切っている。

金融緩和はさらなる円安を生み出すが、これはエネルギーを輸入に頼っている日本には急速なインフレを生み出すことにもなる。当然、日本の貧困層の生活を直撃するだろう。

ここにサウジアラビアの大混乱がだぶっていくと、相当な混乱が日本でも起きる可能性がある。

日本だけではない。サウジアラビアが混乱すると、世界中が「爆発」したかのようにデモと暴動に覆われていく。

つまり、サウジアラビアが民主化要求デモの押さえ込みに失敗すると、世界の混乱は「未知の領域」に入るということだ。サウジアラビアの崩壊は世界の崩壊と同じだ。

今のところ、サウジアラビアは反政府デモを徹底弾圧することに成功している。また、世界の目も、シリアの内戦の方に向いている。

しかし、サウジアラビアにも暗雲が漂い始めているのだ。

2013年中にシリアのアサド政権が崩壊したとき、次がサウジアラビアの混乱にならないとは誰も保証できない。

石油は、今も昔も現代文明に必要不可欠なエネルギーだ。エネルギーを供給する中東がまとめて大混乱に陥るのであれば、グローバル経済もまた大混乱に陥る。




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