2012-08-23

新興国の時代が来ると甘く見るな。本当は危険な新興国の実情


シリアの動乱がヨルダンに飛び火している。恐らくこれで終わりとはならず、これからもアラブ各国のさまざまな国で暴力が起きてくるだろう。

エジプトは2011年にムバラク政権が崩壊してから国が麻痺状態になっていて、この状態があと数ヶ月続くと、国家破綻する可能性まで出てきている。

エジプト政府はIMFに救済を求めているが、IMFはすでにユーロ問題で足を取られて、他を助ける余裕がない。

2011年にはじまったアラブ民主化デモ・暴動は、もともとの問題がインフレから来ているのだが、その元凶となる穀物・石油は2012年から再び上昇している。


暴動の余波は世界中に拡散していく


今後インフレが沈静化できないのであれば、この暴動の余波は世界中に拡散していくことになる。

2010年のインフレは、リーマン・ショックから不況に陥った先進国、日米欧が揃って量的緩和に踏み出して、紙幣が市場に溢れ出したことに端を発している。

この過剰流動性が資源やコモディティに流れ込み、ゴールド、シルバーの高騰、とうもろこし、小麦、大豆等の値段を嵩上げした。

さらに、2010年から2011年の2年間で、ロシアの山火事やオーストラリアの洪水など自然現象の災害が重なった。

現代文明のエネルギーである化石燃料、すなわち石油が徐々に値を上げていくと新興国は追い込まれる。

電気自動車が今後の趨勢となるにしても、それで石油の時代が終わるわけではない。現代文明はこれからも石油を必要としていくのだ。

この石油が経済的な投機や需給の関係で値を上げていくと、当然インフレが起きる。

インフレを沈静化させるには過剰流動性を抑えなければならないが、景気を腰折れさせたくない先進国はまだそれができない。

アメリカは2012年に入った今も、住宅価格の下落が続き、いまだに経済が回復したと言える場面ではない(株価だけは回復しているが人為的に見える)。

これは、ちょうど1970年代のベトナム戦争で疲弊したアメリカとよく似た状況にある。

1970年代もインフレが加速し、財政赤字が膨らみ、ゴールドが暴騰し、石油ショックが起きていた。

追い込まれているインド


エジプト、リビアが崩壊してシリアも断末魔の状態になっているが、これがアラブ圏全体を覆う騒乱になっていけば何が起きるだろうか。これらの国は産油国である。

産油国が政情不安になれば当然石油価格も上がる。

まだ石油ショックのような石油大暴騰は起きていないが、放っておけば時間の問題のようにも見える。

今後は「石油」が再び世界経済のキーワードになるかもしれない。その兆候はある。

アラブ民主化の波は、そのような時代背景の中で起きた事件である。

食料価格や政府の不満がやがて暴動を引き起こすのだとすれば、アジア諸国が対岸の火事と見なすことは不可能だ。

現在、新興国でまたもやインフレが問題になっており、政府はその対応に苦慮している。

中でもインドは大きな混乱を起こすかも知れない国の筆頭にある。

この国は元々、国民の意見がまとまらないカオスとマサラの民主主義国家だが、それと同時に汚職大国でもある。

マンモハン・シン政権も数々の汚職疑惑に巻き込まれて政権が弱体化しており、インド経済そのものが窮地に立たされている。

その兆候は2010年からあった。まずは、第2世代携帯電話サービス用の周波数割り当てをめぐる不正疑惑があった。

そして、開催前から建設の遅れ、児童労働、完成した設備の出来の悪さに大問題になったコモンウェルズゲーム(英連邦競技大会)での不正疑惑があった。

それから、戦死者の遺族向けマンションをめぐる州知事の便宜供与疑惑もあった。

これらすべてに国民会議派が関連していることが明らかにされて、首相の管理責任が問われた。

これにインフレや労働争議等の国内事情が重なり、ルピーは対ドルで史上最安値を更新している。投資資金がインドから逃げ、インドの通貨そのものが信用を失っているのである。

これがさらにインドのインフレを加速させる。先は見えている。これが放置されると、インド全土を揺るがす大暴動が起きてくるだろう。

インドでインフレが加速すると、国家を揺るがす暴動が起きる

下手するとインド経済は阿鼻叫喚の様相に


インドは人口の半分が貧困層である。この貧困層を激怒させるのは食料品価格の高騰である。特によく使う食材が高騰すると、すぐに家計に直結する。

ルピー安はインフレを招くから、この悪影響は6億人の貧困層をじわじわと痛めつける。

まずいことに、インドでは2012年は世界中で穀物が不作であり、7月から目立って供給が減った。そのせいでトウモロコシも大豆も小麦も何もかもが値を上げている。

食用油も豆類も牛乳も卵も肉も魚もすべて値上がりして、おまけにガソリンまで値上がりしていく。

こんな中でインド政府はガソリンの値上げで暴動が起きるのを避けるためにガソリンそのものに助成金を出していたが、財政がパンク状態になりつつある。

ルピー安が解消されない限り、遅かれ早かれガソリンの価格は上げられる。食糧と石油が上がれば、野火のように暴動が広がって行く。

さらに2012年後半に向けて、売り惜しみも出てくるはずだ。

インフレ時は、在庫を出し惜しみすれば高く売れる。売り惜しみすればするほど後で高く売りつけることができるからだ。

そういった貧困層の生活に直結する問題が長引けば長引くほど、その不満は野火のように広がって反政府デモに結びついていく。

すでに2011年初頭からマンモハン・シン政権は窮地に立っている。

これから追い打ちをかけるように石油価格が高騰したとき、国民の大暴動が起きるのは想像に難くない。

そこで治安部隊との衝突で死者が出た場合、インド全土が騒乱に巻き込まれる。

汚職事件と、インフレと、利上げと、石油高騰。

この四重苦が揃ったら、インドに居残る投資家はいない。恐らくこれからも何度も株価大暴落に見舞われる。

そうなると、ますますインドの混乱には拍車がかかる。インドは相当追い込まれると見ていいのではないだろうか。



世界中が暴力に包まれていく


ほとんどの日本人は新興国がどうなろうと大して関心を持っていない。

たとえば、ベトナム経済が現在、絶体絶命に追い込まれていることや、中国・ブラジルの成長が停止したことに何も関心を持たない。

せいぜい、「グローバル・ソブリンだ、新興国の時代だ」と囃されて新興国投資をした投資家が大損を抱えて顔面蒼白になっているくらいだろう。

しかし、新興国が崩壊していくというのは、世界中が暴力に包まれていくというのと同義である。

現在、日米欧の低迷と没落は目を覆わんばかりの惨状になっているが、先進国という市場が低迷することによって、自動的に新興国の成長もストップした。

先進国も不況、新興国も不況。世界中が出口のない不況に包まれていくと、一国がいくら何か景気振興策を出しても効き目がなく、政府も為す術がない。

国民はデモや暴動で政府を突き上げるので、治安は劇的に悪化していくことになる。そして、国民の目をそらすために国家は外国を悪者にして、国民の目を外部にそらしていく。

国の内部も治安悪化でめちゃくちゃに、そして国と国の関係も悪化してめちゃくちゃになっていく。

新興国が崩壊していくというのは、世界中が暴力に包まれる前触れなのである。日本も、もちろん例外ではない。




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